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〝座間9人殺害〟白石被告に死刑判決 地下に潜った自殺志願者たち

白石被告から謝罪の言葉はなかった…

 “自殺願望者”が集まるサイトは消滅したが…。神奈川県座間市のアパートで2017年、男女9人の切断遺体が見つかった事件の裁判員裁判で、東京地裁立川支部は15日、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職・白石隆浩被告(30)に求刑通り死刑判決を下した。自殺志願者をインターネット上のサイトで集め、性欲と金銭欲のはけ口にした凶悪極まりない事件。これをきっかけに、自殺願望者が集まるサイトは消え去ったが、代わりに新たな問題点が――。

自殺を志願していた被害者が殺害を承諾していたかどうかが最大の焦点だった裁判。矢野直邦裁判長は判決理由で、9人全員について殺害の承諾がなかったと認定。被告の刑事責任能力も認めた。

 証言台の前に立って死刑判決を聞いた白石被告は「聞こえましたか?」と問われ「はい。聞こえました」と淡々と答えた。

 被告人席から証言台へ移動する際は気だるそうにスリッパを引きずり、開廷や裁判員の入退廷の際のあいさつでも一切、頭を下げなかった。拘置所が寒いとの理由で伸ばしっぱなしの髪は背中までかかって“世捨て人”のようだった。

 弁護側は控訴の意向だが、これまでの公判で同被告は「自分は極刑になると思うが、どんな判決が出ても控訴しない」と話しており、白石被告は死刑判決を覚悟していたようだ。

 ネット上で主に「首吊り士」を名乗り、“自殺サイト”の利用者を言葉巧みにおびき出し、金銭を奪い、女性には性的暴行を加え、殺害した凶悪事件だった。

 風呂場でバラバラにした被害者の頭部は、クーラーボックスに入れられ、ネコのトイレ用の砂がかけられていた。一方、頭部から下の部位は、きれいにそぎ落とした肉はごみとして捨て、骨はクーラーボックスに無造作に入れられていた。残忍極まる犯行に、死刑判決には「当然だ」と思った人がほとんどだろう。

 白石被告は起訴後、メディア側と積極的に接見。拘置所内での空腹を満たすため、金銭の要求を繰り返した。公判でも自らの欲望を満たすために被害者に手をかけたことをあっさりと認めた。

 どこまでも身勝手な態度や「どんな判決が出ても控訴しない」という言葉は、刑務所に入るよりも死刑判決で拘置所に収容された方が楽だと言わんばかりだ。

 こうした態度は承諾殺人罪の成立を主張する弁護団との対立を生み出した。検察側の質問には明確に答えるのに、弁護人の質問には黙秘を繰り返すという異常な法廷でもあった。

 3年前、この事件が発覚すると、自殺志願者をめぐるインターネット上の状況も一変した。

 ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「この事件後、自殺願望のある人たちが集まるサイトは消滅しました。自殺志願者の思いに便乗して、白石被告のように性欲や金銭欲などのはけ口にするやからが表面上いなくなったのは、事件がもたらした功の部分だったといえる」とみる。

 ただ、SNSの普及と技術の進歩もあり、自殺志願者やそれを悪用するやからは地下に潜っているとも。

「以前は自殺しようとしている人がツイッターで公に予告し、それを自殺防止の団体などが見つけて止めることがありましたが、今は自殺志願者たちはLINEやツイッターの“鍵付きの部屋(非公開のアカウント)”で少人数で集まるようになり、それを悪用する犯罪者もそこに入っていく。より発見しづらくなっているのは、白石被告の事件を境に変わった一長一短の短所の部分でしょう」(井上氏)

 白石被告の事件後、潜伏化する自殺志願者のコミュニティーに対し、警察はネット捜査専従班を拡充し、おとり捜査なども積極的に行うなど、進化しているという。

 折しも、コロナ禍で自殺者は昨年に比べ急増し、中でも女性の増加が著しい。それに伴い、自殺願望を持つ若い女性を狙った犯罪は今もどこかで起きている。9人が犠牲となった事件がどんな教訓をもたらすか。

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