クマが札幌市南区の住宅地に連日出没 猟銃駆除に法律の壁

 札幌市は14日、同市南区の住宅地に今月から連日出没していたヒグマを駆除したと発表した。地元メディアなどが報じた。このクマが民家の庭をうろついたり果物を食べたりする被害が相次ぎ、住民たちは恐れと疲れをにじませていた。クマの出没は北海道に限らない。日本各地に生息するツキノワグマも、人里にエサを求めてやって来る。地域住民を不安に陥れるクマを巡っては、駆除に際して法律の問題が立ちふさがっている。

 各メディアの速報によると、南区藤野の山林にいたクマを北海道猟友会札幌支部のハンターが猟銃で駆除。連日出没していたクマと同一の個体だと確認された。時刻は午前6時5分ごろ。3発の発射で死んだという。

 南区では簾舞(みすまい)地区や藤野地区の住宅地で、今月上旬から夜間や早朝にかけて体長約1・5メートルのヒグマ1頭が住宅の敷地をうろつく様子が目撃されていた。

 札幌市は10日に、トウモロコシやナシで誘う箱わなを設置したが効果なし。夜間だけだった出没は、12日から日中もうろつくようになった。市は地元の猟友会に出動を依頼し、駆除に成功した。

 市によると、南区では人口減少と住民の高齢化が進んでおり、栽培を放棄した果樹園もある。ヒグマが果物を食べて味を覚え、さらに餌を求めて住宅地に入り込むようになったとみられる。人への攻撃性はないようだったが、野生のクマだけに、いつ本能のスイッチが入り、人を襲うかと警戒されていた。

 6月には岐阜県、7月には岩手県、福島県などの住宅地近くで人がクマに襲われる被害が出ている。

 住宅地におけるクマ出没について、多くの自治体が苦労している。環境省のアンケートに、ある自治体は「市街地での発砲は鳥獣保護法で禁止されているが、刑法第37条で緊急避難による場合は違法性が阻却される。ただし、危機が極めて切迫していること、他に方法がないこと、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えないこと等の条件がなければ、緊急避難による猟銃等の発射はできないとされている」とし、法制度の改正を要望しているという。

 つまり、クマに襲われるギリギリ状態でない限り、住宅地での発砲は不可能だということだ。今回の駆除はまだ詳細が不明だが、住宅街でなく山林にいたから銃を使えたとみられる。

 その鳥獣保護法第38条には「住居が集合している地域又は広場、駅その他の多数の者の集合する場所においては、銃猟をしてはならない」とある。ただ、都道府県知事の許可を得た上で「麻酔銃を使用した鳥獣の捕獲等をする場合は、この限りではない」としている。

 現状では住宅地では麻酔銃しか使えないらしい。ところが、だ。環境省によるとこれも「住居集合地域等に出没したクマ類等の大型の獣類に対して麻酔銃猟を実施する場合、麻酔薬の効力が現れるまでに時間を要し、麻酔銃で撃たれたことにより対象個体が興奮し、従事者が反撃を受けたり、周辺の住民、住宅等に重大な危害または損害を及ぼす可能性が高まる恐れがあるため、原則として許可しないこととされています」という。

 がんじがらめな状況だが、今年6月、ヒグマ駆除に協力した北海道砂川市の猟友会の男性が鳥獣保護法違反の疑いで書類送検され、不起訴にはなったが、銃の所持許可が取り消されるという事件が発覚した。市の依頼で警察官立ち会いのもと、猟銃でヒグマを駆除したところ、住宅地だったため、違法と判断されたようだ。

 関係者は「子グマがうろついていただけで、緊急避難とは言えないという理屈です。しかも、有害駆除を許可する文書が公安委員会から出ていなかったというわけです。住宅地といっても、広い田畑と森の端に家がポツンとあるだけの場所だったのに。猟友会の高齢化が進み、出動するのも大変なのに、『これじゃあ、駆除に協力できないな』と全国の猟友会で騒ぎになりました」と指摘。

 住宅街に現れた場合、箱わなにかかるか、去ってくれるのを待つしかないようだ。

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