大人になってわかった 粉末ジュース「正しい飲み方・楽しみ方」

「フレッシュソーダ」の粉末を水に溶かすと、色鮮やかなジュースができあがる=大阪市北区で2023年9月11日、川平愛撮影

「フレッシュソーダ」の粉末を水に溶かすと、色鮮やかなジュースができあがる=大阪市北区で2023年9月11日、川平愛撮影

 水に溶かして飲む「粉末ジュース」は、駄菓子屋さんの定番。でも、粉のまま食べてしまったり、適当に水を入れて味が薄かったりして、ジュースとしてきちんと向き合った記憶がない。大人の今なら「正解」にたどりつけるかも? 残暑にも背中を押され、調べてみた。

 駄菓子屋さんで探してみると、イチゴ、オレンジ、グレープ、メロン、パインのフルーツ味5種類と「アメリカンコーラ」「フレッシュソーダ」を見つけた。昔よく買ったのは「フレッシュソーダ」。封を開けると、メロンソーダのような香りがする。懐かしい。粉をスプーンですくってペロリ。ちょっと酸っぱいラムネのような味で、口の中がシュワシュワして面白い。

レシピ通りなら「120ccの水」

 あらためてパッケージを確認すると「120㏄の冷水に溶かしてお召し上がりください」と書かれている。今までちゃんと読んでいませんでした……。作ってみると炭酸飲料のような泡が出て、見た目もメロンソーダそっくり。味はメロンソーダとは少し違うが、甘みと酸味のバランスが良く、思いのほか飲みやすい。レシピ通り作ると、安定のおいしさだ。

 製造・販売しているのは、松山製菓(岐阜県関市)。矢田隆さん(54)と斎木祐菜さん(22)にお話を聞いた。

 同社が粉末ジュースの販売を始めたのは1961年。子どもたちが安価にジュースを飲めるように開発された。当時は、同社も含め家庭向きの大容量タイプが主流で、多くの会社が参入していた。「(創業地の)名古屋だけでも5、6社あったと聞いています」と矢田さんは話す。

「昔はストロー付きだった」

 1回飲みきりのパックにしたのは、昭和50年代のこと。冷蔵庫の普及などで液体ジュースが手に入りやすくなり、家庭向けの粉末ジュースが徐々に下火になってきた。生き残りのために個包装にし、駄菓子屋さんに販路を見いだした。ちなみにタブレットタイプの「パンチコーラ」「シャンペンサイダー」もあるが、こちらは71(昭和46)年発売。駄菓子屋さんデビューでは「先輩」だ。

 でも駄菓子屋さんで味わうならなおのこと、水の量を正しく量るのは至難の業。子どもたちはどうしていたんですか? 「私もそうですが、袋に直接水道水を入れて飲んでいました。1杯目を飲んだ後、溶け残りの粉で2杯目も。昔はストローも付けて売っていたんです」と矢田さんが教えてくれた。私の同僚にも聞いてみると「粉だけで食べた」「袋に水を入れて飲んだ」「先に粉、あとで水を飲んで、口の中で混ぜた」など、それぞれフリースタイルで楽しんでいたようだ。

酒で炭酸で…割って楽しく

 袋のレシピ通りに作らないのは、子どもだけではない。粉末ジュースを使ったアレンジは大人にも人気だ。炭酸や他のジュースで割ったり、お酒に入れたりして、楽しむ人が多い。色も鮮やかだし、SNS(ネット交流サービス)映えしそうだ。矢田さんのオススメは、オレンジ味とパイン味のミックス。「粉末ならではの、混ぜて楽しい、味変が楽しめる商品も考え中です」と斎木さんは話す。

 松山製菓は50年創業。先々代社長の松山武弘さんが、名古屋市内であめ菓子を作ったのが、始まりだという。進取の気性に富んでいた松山さんは、キャラメルやラムネ、スナックなど、さまざまなお菓子を製造・販売した。

 2020年に西原商会(鹿児島市)の子会社になった後も、駄菓子だけでなく、企業からのOEM(委託製造)も多く扱う。味やパッケージ違いも含めると、1000種類程度の商品を製造している。「小回りがきくので、できる限り対応しています」と矢田さん。柔軟な社風なんですね。

 粉末ジュースの楽しみ方について「個人の自由です」とニコニコ笑う斎木さん。「大人にとっては懐かしい、子どもにとってはワクワクする商品を、これからも守り続けていきたい」とも。レシピ通りも良いけれど、濃いも薄いも味のうち。自由におおらかに、楽しむことこそ「正解」なのかもしれない。【水津聡子】

テキサスコーン、はじまりの味は…

 人気商品の「テキサスコーン」は、1981年発売のサクサク軽いコーンスナック。「フライドチキン」「ピザ味」「お好み焼」など定番だけで8種類もある。名前の由来は、発売当時に使っていた原料のコーングリッツが、アメリカ・テキサス産だったことに由来する。

 最初に発売された味は「たこやき」。意外な気もするが、「取引先に関西のメーカーさんが多かったんです」(矢田さん)と聞くと納得。味を決めるために、工場長らが大阪でたこ焼きを食べ歩いたという、こだわりの味だ。

 でも同じソース味の「お好み焼」と、どうすみ分けているんですか? 「味も違うんですけど、アレルギーに配慮しているんです」と斎木さんが教えてくれた。パッケージを確認すると「お好み焼」には卵や小麦などが使われていない。食べ比べてみると、「たこやき」はソース風味が香ばしく、のりもついている。「お好み焼」はあっさりやさしい味。どちらもおいしい。

 ちなみに「たこやき」のキャラクターの名前は「たっくん」。せっかちで汗っかき、昔テキサスに留学したことがあるとか。知られざる過去、ツボにはまります。

ジャンルで探す