睡眠導入剤殺人:13日初公判 遺族「真相聞きたい」

 睡眠導入剤入りの飲み物を飲んだ千葉県印西市の老人ホーム職員ら4人を含む男女6人が昨年、交通事故などで死傷した事件で、殺人罪などに問われた元職員で准看護師の波田野愛子被告(72)の裁判員裁判が13日から千葉地裁で始まる。事故を起こして死亡するかもしれないという殺意の有無が争点で、動機について被告が何を語るのかも注目される。一方、遺族や被害に遭った職員は今も癒えることのない心の傷を抱えている。【秋丸生帆】

 交通事故で昨年2月に亡くなった山岡恵子さん(当時60歳)の次男(37)は当時、山岡さんとともに、この老人ホームで働いていた。「トラブルを抱えているようには見えなかった」と振り返り、「母が死んで被告だけが生きていることが納得できない」と怒りをあらわにした。

 他にも交通事故で重傷を負った女性(70)ら職員数人が睡眠導入剤を飲まされた。今は全員が体調を取り戻し、昨年は開催が見送られた老人ホームの祭りも今年は開催できた。女性は「同僚がばたばたと倒れてみんな困惑していた」と当時の状況を思い起こし、「自分も死んでいたかもしれない。(被告には)罪の大きさに向き合ってほしい」と声を震わせた。

 捜査関係者によると、捜査段階で波田野被告は睡眠導入剤を飲み物に入れたことについて認める一方、「殺すつもりはなかった」などと山岡さんらへの殺意を否定していた。

 だが、起訴状によると、山岡さんが死亡するかもしれないことを認識しながら、あえて運転を制止しないことにより死亡させたとされる。山岡さんは死亡事故の約2時間前にホーム駐車場から約100メートルの道路で柵に衝突する物損事故を起こしたが、検察側は波田野被告がその後も山岡さんに運転を続けさせたとみている。

 女性はこの時の波田野被告の言動を鮮明に覚えている。山岡さんは物損事故後にホームに戻ってきたが、波田野被告は車で帰宅させたといい、この点を波田野被告に問い詰めると、「だって本人が帰りたいって言うから」と答えたという。

 波田野被告は逮捕後、職員らへの不満を漏らしたが、はっきりとした動機は分かっていない。山岡さんの次男はできる限り法廷に足を運ぶつもりで、「本人の口から事件の真相を聞きたい」と話している。

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