《“おひとりさま”終活》後見人や住まい、葬式などシビアすぎる問題への対処法

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 夫も子どももいない“おひとりさま女性”が増加中。元気なうちは良いけれど、住まいの確保、死後に関する準備、孤独死対策など、ひとりではできないこともたくさん! 老後の自分のために、今から準備しておこう。

【住まいの確保】

 老後の住まいの確保は、おひとりさまの大きな懸案事項のひとつ。おひとりさま事情に詳しい弁護士・木谷倫之さんに、わかりやすく解説してもらった。

 まず、実家を相続していたり、自分で購入したりして、マイホームのある人は、“ローン返済が終わっていれば安心”と思いがちだが、実は意外に出費が多い。

 マンションなら管理費や修繕積立費が毎月かかり続ける車を所有していれば駐車場代もそして一戸建てでも、リフォーム代が10年~20年おきにかかることも忘れてはならない。その備えも必要だ。

「もし、自宅の維持そのものが負担になっているのなら、『リバースモーゲージ』の利用も検討してみてください。自分の死後は物件を引き渡すことを条件に、お金を借りるという方法です。おひとりさまの場合、“家を残す”ことにこだわる必要がないと思うので、柔軟に考えましょう」(木谷さん・以下同)

 賃貸物件に住んでいる人は、“家賃を払い続けられるか”“老後も貸してもらえるのか”という心配が。家賃の心配については、より安い物件を探すしかない。

「特に公営住宅なら格安で借りられます。競争率は高めですが、高齢者や低所得者を優先的に入居させる枠を設けている場合も多いです」

 役所や公営住宅を扱っている住宅供給公社などに問い合わせを。

「ある程度のお金があれば、高齢になっても住まいは借りられるでしょう。ただ、貯蓄がなく、年金も月額10万円に届かない……という単身高齢者の場合、新たな住まいを借りるのは、ハードルが高いかもしれません。

 困ったときには、思い切って自治体の福祉課に相談してみてください。不足分を生活保護で補うなど、さまざまな制度の活用法を教えてもらえるはずです

住まいの確保をもっと知りたい! Q&A

Q.リバースモーゲージって何?

A.持ち家のあるおひとりさまに、木谷さんがオススメするのがリバースモーゲージ。

自宅(持ち家)を担保にしてお金を借りる、高齢者向けの融資制度です最大のメリットは、生きている間は自宅に住み続けられること。死亡後には自宅が売却され、その代金を融資の一括返済に充てられます」

 リバースモーゲージは毎月お金を借り続け、最後(死後)にまとめて返済する“逆住宅ローン”のようなイメージ。1度にまとまった資金の借り入れもできる。

「もちろん融資を受けるので、利息を支払う必要が。毎月返済していく方法、もしくは死亡後にまとめて支払う方法があります」

 申し込みは、銀行などの金融機関、都道府県の社会福祉協議会で。

「借りられる金額や資金使途、契約できる年齢などはさまざまです。対象は基本的に一戸建てが多く、マンションは対象外だったり、地域によっては対象外となる場合も」 

 また、金利上昇時や不動産価額が下落したとき、どうなるかも要確認。

Q.賃貸住宅で、高齢を理由に追い出されることは?

A.現在借りている物件、高齢を理由に更新を断られたら困る!

定期借家契約でない一般的な賃貸借契約であれば、更新を断られる心配はほとんどありません

 契約者の立場は意外と強いのだ。ただし、家賃を長期間滞納したりすると、契約解除の理由となるので注意。一方、新たな物件を借りたい場合は? 残念ながら、年をとるほどに難しく。

「保証人が用意できないおひとりさまでも、保証会社を利用すれば借りられる可能性は高まります」

Q.まだ元気だけど、施設で暮らしたい場合は?

A.突然倒れたらどうしよう……。ゆえに、元気なうちから施設で暮らしたい人も。まず思い浮かぶのは、有料老人ホーム。

介護が必要になったら、自分で介護サービスを手配する“住宅型”と、もともと24時間体制で施設職員の介護が受けられる “介護付き”があります。料金はさまざまですが、施設やサービスが充実しているところほど高額」

 費用の目安は入居一時金0~1億円、月額利用料は10万~40万円+介護料くらい。有料老人ホームよりもお手ごろ傾向なのが、“サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)”。介護の専門職員が日中常駐し、安否確認と生活相談サービスがあるので、要介護度が低い時期の住まいに適している。

【入院と介護】

 多くの自治体では、高齢のおひとりさまが孤立することのないよう、さまざまな“見守りサービス”を実施している。まずは自分の住む自治体に問い合わせよう。

 また自治体では、高齢者向けに栄養指導や運動機能をアップするトレーニングなども無料(または格安)で実施している。

 そして、年齢とともに日常生活におぼつかなさを感じるようになってきたら、介護保険の利用を考えよう。

「介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み。高齢のおひとりさまには心強い味方です」

 まず、介護が必要な状態がどの程度なのかという『要介護認定』を受ける。認定の申し込みは、地域包括支援センターや役所の介護保険制度相談窓口で行っている。

「認定レベルは、要支援1から要介護5まで。認定を受けると、そのレベルに応じて、使えるサービスの回数や費用が決まります」 

 自己負担割合は、所得に応じて1~3割。そして、ケアマネジャーが作成した“ケアプラン”にそって、介護サービスを受け始める。

「認定の際は、“1人で大丈夫!”と頑張らず、自分の状態を正直に伝えましょう。公的サービスを上手に利用することが、おひとりさま自身のその後の生活を助けます」

 また将来的には、生活に伴うさまざまな支払い作業、財産管理などを自分自身で行うことが難しくなるかもしれない。一緒に暮らす家族がいれば、家族の誰かにやってもらえることも、おひとりさまとなると……。

身元引受人、任意後見人などを、元気で判断能力が高いうちに決めておくといいと思います

入院と介護をもっと知りたい! Q&A

Q.入院することに。頼れる家族がいない私はどうしたら?

A.病院や施設によっては入院・入所する際に、料金の精算を責任もって保証し、利用者が万一死亡したときには身柄や遺品を引き取る“身元引受人”の署名を求める場合も。親戚や友人に頼めるならそれがベストだ

 身元引受人になってくれる人がいない場合は、地元自治体や社会福祉協議会が担ってくれる場合もあるので、まずは地域包括支援センターに相談しよう。

身元保証を含めた、高齢者向けのサポートサービスを提供する事業者もあります。ただ、契約内容や料金などがよくわからず、不安になる人もいるようです。困ったときは消費生活センターや弁護士などに相談するといいですね」

Q.自分の介護の相談をしたいときは?

A.健康面に不安を感じるようになってきたら、『地域包括支援センター』へ。介護保険法に基づく公的な相談窓口で、65歳以上の高齢者なら誰でも利用できます

 地域包括支援センターには保健師や社会福祉士、ケアマネジャーがいて、介護についてはもちろん、高齢者のさまざまな相談に乗ってもらえる。

 そして、介護保険を利用するための“要介護認定”の申し込みができるほか、自治体が提供している高齢者向けのサービスや介護予防プログラムなども案内してもらえる。全国に約4300か所以上あり、相談は無料なので、どんどん活用を!

Q.孤独死だけはしたくないんですが……?

A.親戚や友人が近くにいない。近所付き合いもしていない。もし倒れたら、何日も発見されないのでは……。そんなおひとりさまには、見守りサービス

 定期的に安否確認の訪問をしてくれたり、緊急事態にボタン操作で駆けつけてくれる緊急通報システムもある。

「民間の警備会社でもやっているサービスですが、実は多くの自治体でも行っています。高齢おひとりさまを対象に、安否確認訪問や見守りを兼ねた弁当宅配などを実施しています。自分が利用できるサービスがあるか、市区町村役場や地域包括支援センターに問い合わせてみましょう」

Q.自宅で介護を受けられる?

A.介護保険制度では、住み慣れた自宅で過ごしたい人のためのサービスがたくさん用意されています。ただし、利用にはケアマネジャーによる“ケアプラン”の作成が必要です

 訪問介護は、ヘルパーが自宅を訪れ、手助けをしてくれる。買い物や料理、洗濯などの“生活援助”、自宅での入浴や排せつなどの“身体介護”がある。医療スタッフが来てくれるのが訪問看護。理学療法士や作業療法士が自宅に来てくれるのが訪問リハビリ。起き上がり、歩行などの基本動作や作業を通じたリハビリで、自分でできることを増やしていく。さらには訪問入浴介護、自宅に手すりを設置するなどの住宅改修も!

Q.年金だけで入れる施設はありますか?

A.スタッフが常駐する介護施設で暮らすほうが安心。そう考える人の心配事は、やっぱり費用……。

「収入は年金のみ。貯蓄もほとんどない。そんな人でも入所できるのは『特別養護老人ホーム(特養)』です。特養は、常に介護が必要で、自宅で過ごすことが困難な高齢者のための施設です自治体や社会福祉法人が運営する公的な施設なので、所得に応じて料金が軽減され、有料老人ホームよりも安く利用することができます」 ゆえに希望者が多く、要介護度が高い人でも入居待ちをしているのが実情だ。

特養の特徴
・介護保険を利用して入居でき、比較的低コスト
・利用できるのは原則として要介護3以上
・認知症にも対応
・個室、相部屋がある
・全国どこでも申し込めるが、地元民が優先されることが多い
・申し込みは直接施設へ

Q.特養以外には、どんな施設が?

A.特養以外で、介護保険で安く入所でき、要介護度が高くても受け入れてもらえる施設としては、『介護老人保健施設(老健)』などがあります

 ただ、3~6か月で退所しなくてはならず、特養に入るまでのつなぎのような使い方がされている。

 このほか、ひとり暮らしに不安があるおひとりさまが比較的低価格で利用できる施設はとしては、老人福祉法で定められた施設『軽費老人ホーム』や、介護は外部サービスを利用する『ケアハウス』などが。施設によって、受け入れ可能な要介護度が異なるのでしっかりリサーチを。

コラム:任意後見人を決めておこう

 認知症などで判断能力が衰えたら、自分の財産の管理も困難に……。

「悪い人にだまし取られる危険性もあります。そうした事態に備えるのが『成年後見制度』。自分が生きている間の財産管理を、第三者に任せるという制度です」

 成年後見制度は2種類ある。ひとつは『任意後見制度』。いずれ判断能力が低下することを見越し、前もって自分自身で信頼できる人を選び、後見人を引き受けてもらう。

「任意後見人は身内はもちろん、友人でもOK。将来の財産管理だけでなく、身の回りのことなどその人に何を支援してもらうか、そして報酬も自由に決められます」

 任意後見契約は公正証書でかわす。地域包括支援センターや法律のプロに相談しながら進めたい。

 そして、もうひとつは『法定後見制度』。認知症などになり、自分の判断能力がなくなった後に、裁判所が後見人を選定。その人が財産の管理をしていく。

法定後見人は、自分の見知らぬ弁護士が選ばれることが多いです。きょうだいや甥姪がいても、選ばれるとは限りません

 基本報酬は月額約2万円。管理財産額が多い場合、さらにアップする。

【葬式とお墓】

 葬儀社の手配、関係各所への連絡、通夜・告別式、火葬や納骨、役所への届け出、各種費用の清算、遺品の整理……。おひとりさまである自分が死んだ後のことを誰がやってくれるのかは当然、気になる。

 兄弟や甥姪など、自分の財産を相続する人がいればその人にやってもらうのが一般的。では、身寄りのないおひとりさまが亡くなったら?

「死後に関する準備をまったくしていなかった場合は、住んでいた家の家主や民生委員、地方自治体の長が“最低限の”葬儀や埋葬を行ってくれます。しかし、葬儀は僧侶による読経はなく、通夜も告別式もない“直葬”です。つまり火葬されるだけ。埋葬も無縁仏として合祀されるだけです」

 自分の人生を、納得のいく形で締めくくりたいと望むなら、事前に自分で準備しておく必要が

「生前に葬儀社と契約する人が増えています。死はいつ訪れるかわからないので、3~5年ごとに契約を更新する形をとっている葬儀社が多いようです

 では、お墓は?

「おひとりさまの場合、海や山に散骨してほしいと望む人が多いです。もちろん、先祖代々の墓や、自分で用意した墓に入る人もいます」

 おひとりさまの場合、たとえ葬儀やお墓の準備をしていても、それを実行してくれる人が必要。

「そういった死後のもろもろを第三者に託す“死後事務委任契約”が普及しつつあります。ペットや各種費用の清算など、自分が死んだ後に気がかりなことがあるなら、信頼できる人と死後事務委任契約を結んでおくのもひとつの手です

葬式とお墓をもっと知りたい! Q&A

Q.死後事務委任契約って何?

A.自分の死後について希望がある場合は、その内容を指定し、実行を託す『死後事務委任契約』を結んでおくと安心。

「死後事務委任契約で託せるのは、死亡届の手続き、葬儀や納骨の手続き、供養、遺品整理、各種費用の清算などです」

 死後事務委任契約は友人・知人とも結べるが、法律上の手続きが多いので、法律のプロと交わすのが一般的。

「司法書士や行政書士も引き受けてくれますが、140万円を超える法律行為を代行できるのは弁護士のみ。基本的には弁護士に頼みましょう」

死後事務委任契約で委任できること
◆医療費の支払いに関する事務
◆家賃、地代、管理費などの支払いと敷金、保証金などの精算に関する事務
◆老人ホームなどの施設利用料の支払いと入居一時金などの受領に関する事務
◆通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
◆永代供養に関する事務
◆行政官庁などへの諸届け事務

Q.生きている間に葬儀の準備をすべき?

A.“自分の葬儀には親しい友達を呼んで、好きな花と音楽で見送られたい”といったプランがある場合、生前にしておく準備は主に2パターンある。

 ひとつは葬儀社と生前契約しておく方法。ただし、死亡時に葬儀社が倒産しているリスクも。また、周囲の人に伝えておかないと、意図しない葬儀をあげられてしまうので注意。もうひとつは、死後事務委任契約で希望する葬儀内容を決めておき、その実行を人に託す方法だ。

Q.散骨してほしい場合は?

A.最近は、海や山に散骨されることを望む人も多い。

散骨は、どこにまいてもいいわけではありません当然、他人の私有地はNGです国有地ないし海である必要があります。また散骨の際には、遺骨を骨だとわからない形状に砕く必要があります。

 遺骨をそのままの状態で埋めたり、まいたりすると死体遺棄罪に該当する可能性もあります。安易に知人に散骨を依頼すると、その人に思わぬ迷惑をかける可能性も」

 散骨にかかる費用は30万~50万円くらい。希望する人は、散骨を行っている業者に頼もう。

(取材・文/鷺島鈴香)


教えてくれたのは… 木谷倫之さん
弁護士法人ガーディアン法律事務所代表弁護士。東京弁護士会所属。おひとりさま案件はもちろん、相続対策、離婚問題、不動産問題などで活躍

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