3年連続「値上げラッシュ」直撃…秋の食費は4万円近い増加に

「食品主要195社を対象にした調査では、9月の値上げは全体で1千392品目を数え、5カ月ぶりに単月で1千品目を超えました。今年の平均値上げ率も17%と、“値上げ疲れ”は深刻化しています」

こう語るのは、帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんだ。9月の値上げの主要因は、円安、人件費や原材料の高騰など。なかでも顕著なのが、チョコレートの原料となるカカオ豆、コーヒー豆を代表とした、豆類の高騰・ビーンショックだ。

「カカオ豆は非常に調達が難しくなってきています。原産国はガーナやコートジボワールなど西アフリカが中心ですが、天候不順で記録的な不作となったほか、ガーナの政情不安もあり、流通ルートの確保が難しいことがあります」

明治では10月1日以降発売分の「明治ミルクチョコレート」「きのこの山」「たけのこの里」「アポロ」など、チョコレートやスナック100商品を対象に約6~31%小売価格をアップするなどと発表。一方、コーヒーに関しては、味の素AGFが9月1日納入分のインスタントコーヒー29品目、レギュラーコーヒー25品目などの価格を15~30%引き上げる。

「ブラジルの天候不良で、香りが高いアラビカ種のコーヒー豆の生産量が落ちています。そのためアラビカ種より風味が劣るものの、収穫量が多く安価なことから缶コーヒーなどに使用されるロブスタ種に需要が集中。ところがロブスタ種の原産地も高温や干ばつの影響を受けており、結果的に両種とも高値になっている状況です。

こうした嗜好品の場合『それなら買わなくてもいい』という心理が働きかねないため、大幅な値上げは避けたいのがメーカーの本音でしょう」(飯島さん、以下同)

嗜好品ばかりでなく、おかずを1品足したいときやお弁当づくりに便利な冷凍食品も、9月から値上げが相次いでいる。ニチレイフーズでは「コーンカーネル」や「ミックスベジタブル」など家庭用冷凍食品の価格を約3~7%アップ、マルハニチロでは「五目あんかけ焼そば」「おいしく減塩ひじき煮ごまあえきんぴら」など家庭用冷凍食品を対象に約2~8%の値上げを発表している。

「物流費が重くのしかかっていることが要因です。トラック不足の中、冷凍車の手配も以前のようにはいかなくなっています。さらに、製造から加工まで電気代のコストが大きく、野菜やコロッケを揚げる油など、原材料価格も高騰。加えて大手企業の賃上げによる影響も少なくないとみます」

アイスクリームなどの氷菓も、今月に入って値上げが続いている。

「需要が高まる7月、8月を避けて値上げする傾向がみられます。冷凍食品同様、背景にはエネルギー価格の高騰があります。また、ラクトアイスは牛乳や砂糖を使用しますが、乳価も砂糖価格も上昇しています」

キリンホールディングスやサントリー食品インターナショナルなどが公表している、ペットボトル商品の値上げも目立つ。

「原材料や包装資材費、そして物流コストの高騰を価格に反映せざるをえなくなっています。大手各社が一斉に値上げに踏み切るので、今後は中小企業も追随することが予想されます」

今後も食品値上げが続くなか、飯島さんが注目するのは米だ。スーパーなどで入手するのが困難な状況が広がっているなか、9月5日にJA全農は11月1日出荷分よりパックごはん商品を10~13%値上げすると発表したばかり。

「米の供給不足による原材料価格高騰が、業務用の米にも波及し始めました。プラスチック容器の価格も上がっていますので、パックごはんの値上げは今後定期的に行われる可能性があります。おせんべいやおかきなど米菓でも値上げや内容量減少を大手メーカーがすでに発表しており、追随する中小メーカーも出てくるでしょう。年末にかけては餅類の値上げも考えられます」

’22年、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した“値上げラッシュ”だが、食欲の秋の家計を直撃するのは今年で3度目だ。総務省統計局の「家計調査 消費支出(二人以上の世帯)」をみると、’21年9月の「食料」の支出は7万6千673円だったが、翌年同月には名目5.4%増の8万789円に。さらに’23年9月には8万4千837円(同5.0%増)となっている。今年も昨年と同等の名目増減率となると仮定すると、9月の食費は8万9千78円となる。値上げラッシュ前の’21年と比べ、1万2千405円の増加だ。

同様に、10月、11月の「食料」の支出増加を計算すると、それぞれ1万1千164円、1万3千88円という計算に。9~11月の秋の食費を合算すると、じつに3万6千657円も支出が増えることになるのだ。物価高騰に給料のアップが追いつかないなか、策を講じないままでいると、値上げラッシュによるダメージはより深刻になってしまいそうだ。

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