メアドに「mama」を使う41歳主婦、夫との離婚を決意した先で陥った哀れな袋小路(下)

メールアドレスに「mama」を入れる女性は離婚しやすい?

メールアドレスに「mama」を入れる女性は離婚しやすい?

 メールアドレスに「mama」の4文字を使用している、41歳専業主婦のストーリー。娘の教育資金を作るために、夫から外で働くように言われた妻は取り乱し、「離婚」の2文字を口にしましたが…。後編の今回は、離婚した場合の養育費の相場を聞かされた妻の反応、夫への逆ギレの要因を描きます。

16万円もの養育費を求める世間知らず

 夫の一存で専業主婦でいられなくなる可能性があるのに、「mama」のアドレスのせいで「永遠に続く」ことを一ミリも疑わなかったのでしょう。だから、いざ離婚の2文字が頭をちらつくと目の前の現実を直視できず、絵空事のように非現実的な希望を挙げ続けたのですが、外の世界から目を背けてきたのだから視野が狭く、世間知らずなのも無理はありません。

 ところで、家庭裁判所が公表している養育費算定表によると、夫の年収が700万円、恵梨香さんが無収入、娘さんが14歳の小崎家の場合、養育費は毎月8万円が妥当な金額です。離婚して子どもを引き取り、母子家庭になるのに「働きたくない」という言い分を夫は受け入れがたいでしょうし、離婚を切り出したのは恵梨香さんなのでなおさらです。

 参考までに、恵梨香さんがパートタイマーとして年100万円を稼いだ場合、養育費は毎月7万円、契約社員として年250万円を稼いだ場合は、毎月6万円です。無収入の場合との差額(1万~2万円)は子ではなく元妻の生活費です。夫は子どもの養育費ならともかく、元妻の生活費なんか払いたくないに決まっています。

「8万円で生活できるわけないじゃないですか。せめて2倍(16万円)を渡してくれないと無理です!」

 恵梨香さんは自信満々に豪語しますが、結婚中・同居中に渡されている生活費(毎月18万円)とほぼ同額です。しかし、離婚したら夫はワンルームを借りなければならず、別居先の家賃や自分の生活費が発生するだけでなく、妻子を扶養から外すので給料の手取り額が減る可能性があるので無理でしょう。

 恵梨香さんは自分のことしか心配しておらず、「離婚したら夫がどうなるのか」を全く考えていなかったようですが、さらに畳みかけます。「娘の環境を変えたくないので旦那を追い出して、娘と2人で暮らせたらいいなって。家賃はこのまま旦那に払ってほしいし、娘の送り迎えに使うので車も置いてってくれれば!!」と。

「娘を鍵っ子にしたくないんです! ずっと家にいてあげたいし、うちの母もそうでしたから」

 恵梨香さんは「働きたくない」のではなく、「働けるけれど働きたくない」という点を強調していましたが、娘さんに寂しい思いをさせたくないという一心でした。恵梨香さんは専業主婦の母親に憧れていた影響で、メールアドレスに「mama」を入れたのかもしれません。母親のように、一家の大蔵大臣として権威を振るのは当たり前なのだと知らず知らずのうちに洗脳されていたようです。

のしかかる「mama」のプレッシャー

 もし、恵梨香さんが離婚するのなら母親と同じというわけにはいきません。恵梨香さんの母親は離婚していないからこそ、父親の収入に依存して財布を管理し、専業主婦の椅子に座り続けることが可能でしたが、恵梨香さん夫婦は違います。夫の給料の8割を握り、家賃の10割を払わせ、車は使い放題。恵梨香さんの言葉の節々から「離婚しても専業主婦で」というニュアンスが伝わってきましたが、今の恵まれた環境が「当然だわ」と思っているのなら甘すぎと言わざるを得ないでしょう。

「働いたら負けだと思っているから」

 そんなふうに強がっている、引きこもりニートのやからを散見しますが、「働くくらいなら、離婚した方がマシだわ」と言い放つ恵梨香さんと似た者同士ではないでしょうか。恵梨香さんの相談を聞いて首をかしげるしかありませんでした。結局、恵梨香さんは大口をたたくだけたたいたものの、本気で離婚を切り出す勇気はなく、だからといって働きに出ることもなく、不満たらたらで現状維持に甘んじるしかなかったのです。

 ここまで、メールアドレスに「mama」を入れた女性の苦悩を紹介してきましたが、毎日のように目に飛び込んでくる「mama」の4文字のせいで、必要以上のプレッシャーがかかっているのではないでしょうか。「理想的なママを演じないといけない」「とにかく娘のことを最優先に考えないと」「ママ以外の顔を見せるなんてもっての外」と。

 だからこそ、夫から「外で働いてほしい」と頼まれても娘さんを盾に断ったり、娘さんの世話がおざなりにならないように、娘さんにかけるお金が減らないように夫の小遣いを精査して「無駄使いリスト」を作ったり、揚げ句の果てに、娘さんにとって「夫はいない方がいい存在なのでは」と疑心悪鬼になり、離婚計画を企てたりしたのでしょう。

 娘さんのためなら、夫はもちろん、自分にも犠牲を強いるのが「当たり前」という感じですが、娘さんのためとはいえ、夫婦にとって息苦しいのは間違いありません。だから、恵梨香さんは知らず知らずのうちにストレスをため込み、イライラが頂点に達した結果、夫に対して逆ギレしたのでしょう。

 娘さんへの責任感が強すぎるせいで一人で抱え込み、「mama」以外の居場所…高校や大学の旧友、独身時代の同僚、ママ友以外の友達との付き合いを減らした結果、ストレスのはけ口を失った結果だといえます。

 学校の先生、同級生の親御さん、そして、実家の母親…狭い交友関係の中で特定の人間に囲まれて精神的、時間的、そして金銭的に依存するのは「何かあった場合」危険です。恵梨香さんのように、離婚の2文字が頭をよぎっても「捨ててしまいたい夫の助けがないと離婚できない」という矛盾に陥り、にっちもさっちもいかずに袋小路に閉じ込められるようでは困ります。

「mama」という存在に固執せず、複数の顔を持っておき、臨機応変に使い分けるのが路頭に迷わないための策なのだから、巡り巡っては娘さんのためになる、と発想を切り替えてほしいものです。

露木行政書士事務所代表 露木幸彦

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