できる子の親は「4月の動き方」に特徴がある

範囲よりも先に、少しだけでも触れておくことで、勉強への興味の持ち方が変わる(写真:Yagi-Studio/iStock)

新しい学年が始まりましたが、皆さんは、わが子の新しい教科書に目を通してみましたか? 表紙は見たけど中身は見ていない、という人が多いと思います。もしそうだとしたら、早い段階でぜひ中身に目を通してみてください。

子どもの教科書を親が見ることの効用

なぜなら、教科書には子どもが1年間で勉強する内容がほぼすべて出ているからです。子どもを伸ばしたい、勉強を好きにさせたい、学力をつけさせたいなどの願いを持っている親にとっては第一級の資料なのです。

たとえば、4年生の理科で星座の勉強をするとわかったら、さっそく親子で夜空を見てみましょう。4月頃の夜空で見つけやすいのは、北斗七星を含むおおぐま座や春の大三角です。この2つだけでも親が予習しておいて、夜空を見ながら子どもに教えてあげれば尊敬されること間違いなしです。

星座早見盤を用意しておけば、親子でいろいろな星座を見つけることができます。スマホで調べながらでもできますが、学校では星座早見盤の使い方を勉強するので、慣れておくといいでしょう。星座早見盤は子どもにはけっこう難しくて、使い方が理解できない子も多いので、友だちに教えてあげれば感謝されます。

ほかにも、星座を扱った学習マンガ、図鑑、星座カルタなどもお薦めです。ゴールデンウィークにプラネタリウムに行って星座の動画を見れば、さらに知識が増えます。こうなった状態で学校の授業で星座の勉強をすれば、子どもは大いに張り切って主体的に取り組めます。

5年生の国語でことわざの勉強をするとわかったら、親子の会話で、「料理上手なママも目玉焼きを焦がしちゃうなんて、『猿も木から落ちる』だね」などと意識的にことわざを使ってみましょう。すると、子どもは自然に覚えます。ことわざの学習マンガを用意したり、ことわざカルタで遊んだり、ことわざカレンダーをトイレに貼ったりすれば、さらにたくさん覚えることができます。この状態で、学校の授業でことわざの勉強をすれば、子どもは大いに張り切って主体的に取り組めます。

これらの例のように、授業で勉強する前に、ちょっとでもその内容に親しんでおくことが大事です。なぜなら、授業で新しい勉強が始まったとき、それがまったく未知のものだと子どもは興味を持てないことが多いからです。

事前知識がないと、興味を持てない

たとえば、休み時間に友だちと「世界の果てまでイッテQ!」の話で盛り上がっていたとします。そこへ急にチャイムが鳴って、先生が「さあ、今日の3時間目は星座の勉強だよ」と言ったとします。ほとんどの子は「え? セイザって何だっけ?」とか「え、座り方の勉強?」などという感じになります。

というのも、多くの子は星座についての事前の経験と知識がほとんどなく、したがって急に星座と言われても興味関心が持てないからです。でも、事前に親子で星座を探したことがあるとか、星座の学習マンガを読んだとか、プラネタリウムで星座の動画を見たなどという子は、ちょっとした経験と知識があり、それによって新しい勉強への興味関心が持てるのです。

このような状態を教育学の専門用語で、「レディネスがある状態」といいます。レディネスとは、学習の成立にとって必要な「事前の経験と知識」や、「興味関心が持てる心の準備」のことです。

新しい勉強が始まったとき、レディネスがある子は「わたし、それ知ってる。見たことあるもん。やったことあるもん。え? みんな、知らないの? わたし、なんだかこの勉強、得意みたい!」という感じになって、やる気が大いにアップします。「なまじちょっと知ってると、慢心してしまうのではないか?」と思う人もいるかもしれませんが、小学校で長年教えてきた私の経験ではそんなことはありませんでした。

勉強が好きでよくできる子たちは、いろいろな知的分野でこのレディネスが豊富にあります。親が意識して家庭に知的な環境を整えていれば、生活の中で自然にレディネスができていきます。ですから、6年生で勉強する内容でも1年生ごろからレディネスが蓄えられていくのです。今まであまり意識していなかった方は、ぜひ新しい教科書に目を通して今年分のレディネスを準備するところから始めてみてください。

具体例をもう少し挙げます。6年生の社会で歴史の勉強をするとわかれば、歴史マンガや歴史図鑑を用意してあげましょう。特に歴史マンガはイチオシです。私が教えた子の中には歴史が大好きな子が何人もいましたが、みんな例外なく低・中学年の頃から歴史マンガを読みまくっていました。もちろん、6年生になってからでも、始めるに遅すぎるということはありません。休日に郷土博物館、歴史博物館、史跡、遺跡などを訪れてみるのもいいですね。ちょっと難しいかもしれませんが、テレビの大河ドラマや「歴史秘話ヒストリア」などを親子で見るのもいいと思います。

5年生の理科で天気の勉強をするとわかったら、毎日の天気予報を注意深く見るようにして、気温、気圧、高気圧、低気圧、湿度、風向、前線などの言葉の意味に触れておきましょう。休日に気象庁の気象科学館を見学するのもいいですね。また、リビングなどに気圧・温度・湿度計を置いて、日頃から気圧、気温、湿度などを意識するようにしましょう。

「今日は蒸し暑くてだるい」で終わるのではなく、「蒸し暑いと思ったら、気温が30度で湿度が82パーセントもある。気圧も990ヘクトパスカルしかない。もうすぐ雨が降るかも」と数値化する習慣がつけばすばらしいです。自然現象を数字でとらえるのが、理科や科学の基本的なマインドですから、これで理科的発想が身に付きます。

家族で「今日は湿度が高いから洗濯物は乾きにくいよ」「湿度が低いから空気が乾燥してるんだ。カゼをひかないようにマスクをしよう。加湿器もつけよう」「気圧が低いからおじいちゃんの腰の痛みが出るかも」などの会話が交わされるようになるといいですね。

4年生の社会で環境やゴミ問題を勉強するとわかれば、子どもと一緒にゴミ出ししたり、分別収集の作業をしたりしましょう。5年生の算数で割合の勉強をするとわかれば、スーパーマーケットに一緒に行くようにして、「本日のみ! すべてのパンが表示価格の2割引!」のところで電卓をたたいて計算するようにします。6年生の理科で人体の勉強をするとわかれば、人体の学習マンガや人体図鑑などを用意してあげましょう。

では、ここで千葉県のYさんが実践した例を紹介します。Yさんは長女が2年生になったとき、新しい算数の教科書のある勉強を見て「これは難しい」と思いました。それは、「水のかさ」の勉強です。

そこには、L(リットル)、dL(デシリットル)、mL(ミリリットル)などという単位が出てきて、「1L=10dL」とか「1L=1000mL」などという説明も出てきます。

Yさんは、この水のかさの単位変換の勉強を非常に難しいと思ったのです。皆さんは、100mLは何dLかわかりますか? 確かに、かなり難しいですよね。実際に何度もこの授業をしてきた私の経験でも、子どもたちはこれで大いに苦しみます。

そこで、Yさんは、お風呂で遊びながら単位変換の経験をたっぷりさせることにしました。ありがたいことに、Yさんは私の本を読んで参考にしてくださったそうです。

まず、ジュースのパックをハサミで切って、1L、2L、1dL、500mLの容器(箱)を作りました。そして、パックの切り取った部分を捨てずに、1平方センチメートルの正方形を5つ作り、それを組み合わせて1mL(1立方センチメートル)の箱も作りました。そして、それぞれの箱にマジックで容量(かさ)を書きました。1Lの箱には「1L」と書くだけでなく、その下に「10dL」「1000mL」とも書いておきました。

箱をそろえたら、これを使ってお風呂で遊びました。「1dLの箱のお湯を何杯入れれば、1Lの箱がいっぱいになるかな?」といった具合にクイズを出して考えさせ、実際にやらせて「10杯だ!」と体感させていったのです。子どもは喜んでやってくれたそうで、だんだん手作りした箱だけでは物足りなくなって、いろいろな大きさのジュースパック、ペットボトルなども持ち込んだそうです。

たっぷり体感することで、単位換算を体で覚えることができました。そのおかげで、ほかの子たちが悩む問題でもスイスイ解けるようになり、算数全体についても自信が持てるようになったそうです。さて、皆さんにクイズです。「1mLの箱の何杯分で1dLになるでしょう?」。わかりますか? けっこう難しいですよね。

最初のほんの少しのレディネスの違いが生む効果

以上、いくつか具体例を紹介しました。親が新しい教科書に目を通しておけば、生活や遊びの中で楽しみながら無理なくレディネスをつくっていくことができます。最初のほんの少しのレディネスの違いが、勉強が進むにつれて大きな学習成果の違いになっていきます。この記事を読んだ方には、ぜひ実践していただきたいと思います。実践に結び付けるためには、教科書の目次をコピーして、目につく所に貼っておくのもいいですね。

最後に注意点です。実践に当たっては、無理はしないでください。親が張り切って、「さあ、星座を見つけよう」と言っても、子どもが乗ってこないことは大いにありえます。そういうとき無理強いすると、授業で勉強する前に苦手意識を持たせてしまうことになります。ですから、楽しみながらできる範囲でやることが鉄則です。

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