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「47歳恋愛経験ゼロ」男が最後に射止めた相手

37歳までまったく女性経験がなかった章雄。決して女性に興味がないわけではなく、さらに婚活も長年続けてきましたが、なぜか断られてばかり。その理由とは?(写真:KY / PIXTA)

「どうしてその年になるまで、恋愛をまったくしてこなかったの?」

斎藤章雄(仮名・当時47歳)に初めて面談したときのこと。私の問いかけに、穏やかな口調でこう答えた。

「僕には、勇気がなかった。恋愛に興味がなかったわけではなく、女性に話しかける勇気がなかったんです」

章雄は2015年2月に入会をし、7カ月半のお見合い活動をして現在の妻、弥生(当時38歳)に出会い、2カ月半の交際を経て、11月に成婚退会していった会員だ。女性とキスをしたのも、男女の関係になったのも、弥生が初めて。

恋愛経験ゼロのまま中年になる男性は多い

章雄のように、まったく女性と交際をした経験がないままに30代、40代、50代になってしまった男性たちは、意外と多い。彼らは“草食男子”という言葉でくくられ、まるで“恋愛に興味がない”ように語られがちなのだが、本当にそうなのだろうか?

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もちろん恋愛に興味がない人もいるかもしれない。だが、それよりも章雄のように恋愛したくとも、“女性に話しかける勇気がない”“女性とかかわって傷つくのが怖い”と思って動くことができないでいる男性がいることもまた事実だ。

彼らは草食というよりは、むしろシャイなのだ。

この連載の取材をするため、1年ぶりに章雄に連絡を入れて会うことになった。待ち合わせのティールームに向かうと、章雄はすでに席を取って私を待っていてくれた。

「久しぶり。元気そうね」

私がこういうと、目元にクシャッとシワを寄せ、人懐っこそうな笑顔を向けてきた。

「はい、おかげさまで」

「顔が前よりも優しくなったみたい」

「そうですか? 結婚前よりもずいぶん人間らしい生活になりましたから。独身のときは、ほとんどがコンビニ飯で、夜は会社帰りにラーメンか定食を食べて帰宅して寝る。それが今は、ふたりでたわいもない話をしながら、ご飯を食べる。帰りが遅いと弥生は先に夕食を済ませていますけど、僕の分は温めれば食べられるようにしておいてくれるんです」

この話を聞いて、平凡だが温かな食卓の光景が思い浮かんだ。

現在の妻、弥生に出会うまで、章雄は20人くらいとお見合いしただろうか。身長は 162センチメートルだが、スマートな体型で見た目も悪くない。上場企業の部長をしており、年収は900万円近くあったので、入会したての頃は、お見合いのお申し込みをかければ、かなりいい確率で受諾をされた。

ただ、お見合いはできても、お断りをされてしまう。交際に入っても1度か2度食事をすると、お断りが来る。そこにはやはり、女性慣れをしていないので、出会えてもうまく女性の気持ちがつかめない章雄の不器用さがあった。

「いい人なんだけどね」で終わる人のある共通点

一度、私の相談所の会員女性とお見合いを組んだことがあった。「まじめだし誠実だし、とにかくいい人だからお会いしてみない?」。こう言って引き合わせたのだが、お見合いを終えた彼女は私に言った。

「いい人なのは、よくわかりました。友人としては好きになれるかもしれないけれど、男性としては好きになれないと思います」

結局、彼女からは、“お断り”が来た。つまり章雄は、「いい人なんだけどね~」で終わってしまう、典型的なタイプなのだ。このタイプに共通していえるのは、恋愛経験が少ないままに年を重ねてきていること。

一方、モテる男性というのは、とにかく恋愛の場数を踏んでいて、成功体験と失敗体験を積み上げながら、どうしたら女性の心を手に入れることができるようになるかを感覚的に身に付けている。人間には性差があるが、その性差をより濃く、強くアピールできる人のほうが、男も女もモテるのだ。それは机上の学習では習得できない。モテ本を100冊読むのなら、ひとつの濃い恋愛をしたほうが異性の心をつかめるようになる、と私は思っている。

章雄の場合、あまりにもお断りが続くので、当時、章雄の恋愛経験を改めてヒアリングし直したことがあった。

「学生時代は、女の子とほとんど口を聞いたことがありませんでした。高校は男子校だったし、大学には女性がいたけれど、ふたりだけで出掛けたり、食事に行ったりしたことがありません」

「好きになった人はいなかったの?」

「大学時代弓道部に入っていて、そこに好きな女性はいました。でも、気持ちを伝えられないまま卒業しました」

就職をしてからは、とにかく仕事が忙しく、恋愛どころではなくなった。そして、29歳のときにタイに海外赴任することになった。

「その前に誰か女性とお付き合いをして、できれば結婚して赴任したいと思いました。だけど、そんなに都合よく相手が見つかるはずもなくて。僕は海外の女性と結婚する気はなかったので、赴任していた6年間は恋愛からさらに遠ざかっていきました」

国際結婚を考えられなかったのは、異文化で育ったタイの女性が日本に嫁いでも幸せになれるとは思わなかったからだ。

帰国したときには、35歳になっていた。その後も家と会社を往復する毎日。あるとき、息子の結婚を心配した母親が結婚相談所の資料を取り寄せ、そこへの入会を勧めた。

「それで38歳から41歳くらいまで、生まれて初めての婚活をしました。ただ、そこではなかなかお見合いが組めなかった。毎月年頃が合う決まった数のお相手が送られてきて、会いたい人にお申し込みをかけるという形式だったのですが、申し込める数が少ない。申し込んでも受けてもえる確率が低くて、お会いできるまでのハードルが高かった。やっとお見合いができても、断ったり断られたりで、4年間活動を続けたけれど、まったく結果が見えませんでした」

手応えもないままに、そこは退会した。

食事のあとは何をしたら? 他力本願だった

「ただ、あのときの僕だと、どんな女性と出会ってもうまくいかなかったと思います。恋愛経験がないから、何をどうしていいかわからない。映画やオペラに行って、そのあと食事をする。その次に何をしたらいいのか迷う。進みたいけど自分ではやり方がわからないから、“相手が何かしてくれないかなあ”みたいな、いつも他力本願でした」

相談所を退会したあとは婚活からしばらく遠ざかっていたのだが、あるとき章雄に転機が訪れた。

「そのとき会社の人間関係に悩んでいて、仕事もうまくいっていなかった。そこで上司や部下の人間関係を改善するコミュニケーションセミナーに行ってみることにしたんです」
 
そこの講師がとても面倒見のいい信頼できる女性だった。2年間くらい通ったという。

「そのセミナーで学んだのは、“どんな自分も認めてあげる”ということでした。疲れている自分には、ねぎらいの言葉をかける。どんなに小さなことでもできたら、自分で自分を褒める。つまり自己否定をせずに自己承認力を上げる。あの2年間で、ずいぶんと自分が変わりました」

生きるのが楽になった。自分が変わったら、不思議と職場の人間関係も改善された。ちょうどそんなときに、私のことを知り、相談所に訪ねてきてくれたのだ。

面談後入会を決めたときに、私は章雄に言った。

「どんどんお申し込みをかけて、どんどんお見合いしましょうね。そこで交際に入ったら、メールは毎日入れる。デートは1週間のうちに最低1回、できればウイークデーの夜に軽く食事をして週末にも会って、1週間に2回会うことを目指しましょう。まずは、食事3回の壁を突破してね」

“食事3回の壁”というのは、以前、この連載の「『3回目の食事』前に必ずフラれる男性の特徴」にも書いたのだが、出会った男女の付き合いがうまくいくのは、食事が3回できるかどうかにかかっているというもので、婚活においては暗黙知だ。大抵が1度か2度会うと、関係が終わってしまう。3回の壁が超えられると、その後の交際も続いていくことが多い。

また、章雄のように恋愛経験がない男性は、どんどん出会って女性と対峙し、会話を交わしたり食事をしたりと、場数を踏むことが大切だ。そうした経験が蓄積されていくことで、いつかは女性のハートを射止めることができるようになる。野球初心者がバッターボックスで空振りを繰り返していても、いつかはホームランが打てるようになるのと一緒だ。

38歳・恋愛経験ゼロの女性との出会い

私の相談所に入会してからは、月に20人以上をお申し込みをかけ、平均で3人から5人はお見合いをしていた。最初のうちはお見合いしても断られることが続いていたが、だんだんと通過率もよくなり、活動7カ月目に入ったところで、現在の妻、弥生に出会った。

弥生もまた38歳になるまで恋愛経験がないままに年を重ねてきた女性だった。恋愛初心者同士、交際は順調に進んでいった。

ところが、このまま結婚に向かってまっしぐらに進むだろうと思っていた矢先、デート中に章雄が発した言葉を発端に、大げんかが勃発した。

ある日、弥生の仲人から私に電話がかかってきた。「昨日、斎藤さまとデートをさせていただいたようなんですが、なんだか小川が斎藤さまにものすごく失礼なことを申し上げたようで、今泣きながら、『きっとお断りをされてしまう』と電話をかけてきました。小川は斎藤さまのことを本当に大切に思っているんです。なんとか仲を修復できないでしょうか」。

いったい何が起こったのだろう。私はすぐに章雄に電話をした。「昨日弥生さんとけんかしたでしょう。何があったの?」と聞くと、章雄は少し憤慨したような口調で事の顚末を話し出した。

ドライブデートの帰り道に、彼女を家の近くまで送り、ドキドキする気持ちを抑えながら決死の覚悟で言った。

「キスしてもいいですか?」

これは章雄にとって、ファーストキスなのだ。が、弥生の顔が一瞬こわばった。

「えっ、いや、あの……」

弥生はこう言うと、笑顔を向けながらも車から降りてしまった。

その夜、弥生から怒りのメールが送られてきた。

「まだ結婚の約束もしていないうちから、『キスしていいですか?』とは、どういうことですか? 私のことは遊びですか? 遊びなら、さっさと断ってください。次のお見合いをしてください」

章雄にしてみたら、遊びだなんてとんでもない、本当に勇気を振り絞っていった言葉だったのだ。遊びでキスができるか。しかも、笑顔で降りていったのに、この失礼なメールはなんだ。

「僕も彼女とは、うまくやっていけないと思いました」

電話口で、章雄は明らかに怒っていた。

「ね、これは行き違いなんじゃない? 弥生さんは、『大好きな章雄さんにどんでもないことを言ってしまって、振られてしまう』と今泣いているそうよ。弥生さんも恋愛に不慣れだから、言われた言葉をどう受け止めていいかわからなくて心にもないことを言ってしまったんだと思う。ここは章雄さんが大人になって、今の弥生さんを大きく包んであげましょうよ。彼女のこと、好きなんでしょう?」

「はい、好きです」

「ならば、自分は遊びじゃないし、本気だということを伝えようよ。行き違いのけんかで育んできた関係をここで終わりにしたら、もったいないでしょう?」

私の言葉に、章雄は少し冷静さを取り戻したようだった。

「おっしゃるとおりですね。恋愛偏差値が低くてすいません」

そこで私もほっとし、笑いながらこう切り返した。

「本当だよ。一流大学を出ていて、お勉強の偏差値はものすごく高いのにね」

こうして仲直りをしたふたりは直後に婚約をし、成婚退会していった

結婚したら片目を閉じて相手を見よ

1年目ぶりに会った章雄と私は、この大げんかのことを懐かしく思い出した。すると、章雄が言った。「彼女は、自分が“こうだ”と思ったことは、人にかみつかずにはいられないタイプなんです。だいぶ柔らかくなりましたけど、それが彼女の性格の癖みたいなものだと今はわかっているので、そうなったときには、僕が“はい、はい”と言いながら折れていますよ」。

お互いの性格の癖を知りながら、けんかをしたり、歩み寄ったりして夫婦になっていく。「結婚する前は両目を開けて、結婚したら片目を閉じて相手を見ろ」とは、よく言ったものだ。