犬を飼うことは飼い主の健康にメリットをもたらすのか?

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「犬を飼うことは健康にいい」という説は広く知られており、実際に犬を飼うようになって散歩をする時間が増えたり、気持ちが明るくなったりしたという人もいるはず。オーストラリアのセントラルクイーンズランド大学の健康・医学・応用心理学部教授のタニア・シグナル氏が、犬を飼うことのメリットやデメリットについて解説しました。
Is owning a dog good for your health?
https://theconversation.com/is-owning-a-dog-good-for-your-health-238888

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◆身体的なメリット
2019年に発表された体系的レビューでは、複数の研究で収集された約380万人分の医療データを分析した結果、「犬を飼っている人は飼っていない人に比べて、何らかの原因で死亡するリスクが24%低い」ということがわかりました。犬を飼うことは身体活動の増加と関連しており、これによって血圧が下がって脳卒中や心臓病のリスクが軽減されたとのこと。
また、以前に心臓関連の医学的問題を抱えていた人を対象に分析した場合、犬を飼うことでその後の死亡リスクが35%減少することもわかりました。
「犬を飼っていると心臓発作や脳卒中による死亡リスクが下がる」という研究結果 - GIGAZINE

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別の研究では、成犬を飼っている人はそうでない人に比べ、1日の身体活動目標を達成する確率が約4倍であることがわかりました。さらに、犬を飼っている家庭の子どもはそうでない子どもより活発で、構造化されていない遊びに従事する可能性も高かったとのことです。他にも、犬が屋外から持ち込んだ汚れや微生物にさらされることで、子どもの免疫システムが強化されるというメリットもあります。
◆身体的なデメリット
犬を飼うことにはさまざまな身体的メリットがある一方で、健康にリスクをもたらす可能性もあります。その1つがアレルギーであり、犬のだ液や尿、フケなどがアレルギー反応を引き起こし、目のかゆみや鼻水、呼吸困難といった症状を引き起こすことがあるとシグナル氏は指摘しています。また、白癬(はくせん)という皮膚病やカンピロバクターなどの人獣感染症を持ち込むリスクもあるとのこと。
約200万人の子どもを対象にした2022年のメタアナリシスでは、小さな頃から犬と触れ合っていた子どもはぜん息を発症するリスクが高いことが示唆されていますが、このリスク増加は猫を飼っていた場合よりも低かったと報告されています。他にも、犬と遊んでいると滑ったり転倒したりするリスクが高まるほか、かまれたり引っかかれたりして病原体が侵入する場合もあります。
特に飼い犬と同じベッドで寝る人では、アレルギーや感染症のリスクが高いほか、ペットが夜中に動くことで睡眠不足になるかもしれません。しかし、飼い主の中には犬と添い寝することで安心感が増し、精神的なメリットが大きいという人もいるため、リスクを抑えるために適切な獣医のケアと衛生管理をすることが重要です。

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◆精神的なメリット
犬を飼うことのメリットは身体的なものだけではありません。犬は不安やうつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を緩和するのに役立つほか、課題に直面した飼い主のメンタルヘルスに好影響を及ぼすことが示されています。
また、重大な公衆衛生上の問題である「孤独」に対しても、犬を飼うことが解決策になる可能性があります。犬を連れて散歩したり、犬をドッグランに連れて行ったりすると、近所の人々や他の飼い主と話す機会が生まれ、新しい友人を作るのが容易になります。このような社会的相互作用はコミュニティへの帰属意識を築き、孤独感を軽減するのに役立つとのこと。
もちろん、散歩中に人と話すことに苦手意識を持っている人もいるはずですが、2019年の研究では犬を飼うだけで孤独感が減少することがわかりました。シグナル氏は、「人々は気分が良くなったと報告していますが、これはおそらく愛犬との絆が深まったことによるものだと考えられます」と延べました。

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◆人々は犬を飼うべきなのか?
犬を飼うことはそれ自体が喜びを与えてくれる上に、心身にさまざまなメリットをもたらしてくれます。その一方で、犬を飼うことにはしっかり世話としつけをする責任が伴うものであり、特に犬が健康上の問題を抱えている場合、感情的な疲労や経済的な負担も大きくなります。さらに、犬の寿命は一般的に人間よりも短いため、愛犬を失うことでメンタルヘルスの状態が悪化するペットロスを経験する可能性もあるとのこと。
シグナル氏は、「いわゆるペット効果と呼ばれるものは、ペット(多くの場合は犬)があらゆる状況の人々に対し、肉体的・精神的健康を向上させることを示唆しています。しかし、現実はもっと微妙であり、ペットを飼うことがかえってストレスになる人もいます。重要なのは、家庭を共にする動物は人間の健康のための単なる『道具』ではないということです。飼い主と犬、双方の福祉と健康が維持されることで、相互に利益を得ることができるのです」と延べました。
なお、以下の記事ではペットと飼い主が一緒に健康で、そして幸福になるためのポイントをまとめています。
ペットと飼い主が一緒に健康で幸福になるための「5つのポイント」とは? - GIGAZINE

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