犬と人間が見つめ合うと脳の活動が同期すると判明


犬は人間と共に生活するようになった最古の動物といわれ、古来からペットとして愛されています。中国科学院遺伝発生生物学研究所の研究チームが人間と犬の脳波を測定し、人間と犬は目を合わせると脳活動を同期することが判明したと報告しました。
Disrupted Human–Dog Interbrain Neural Coupling in Autism‐Associated Shank3 Mutant Dogs - Ren - Advanced Science - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202402493


Dogs' Brains Sync With Ours When We Gaze Into Their Eyes, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/dogs-brains-sync-with-ours-when-we-gaze-into-their-eyes-study-finds
研究チームは、ビーグル犬と人間のペア10組を用意し、5日間にわたって共同生活を行わせました。この時、犬と人間の脳波を測定し、目を合わせたりお互いに触れ合ったりする行為がどのような影響を及ぼすのかを調べました。
次に「目を合わせる」「お互いに触れ合う」という行動の影響を個別に調査。さらに、自閉症スペクトラム障害の原因遺伝子とされるSHANK3遺伝子に変異を持つ13匹の犬を用いて同様の実験を行い、変異を持たない犬との違いを比較しました。加えて、SHANKS3遺伝子に変異を持つ犬にLSDを単回投与してその効果を調べる実験も行われました。


実験の結果、犬と人間が目を合わせたり触れ合ったりした時に、脳活動の同期が観察されたとのこと。目を合わせた時には主に前頭葉領域で、互いに触れ合った時には頭頂葉領域で同期が見られたと研究チームは報告しています。この同期の方向性は「人間から犬」で、5日間の共同生活で同期性は強くなる傾向が見られたそうです。
また、SHANK3遺伝子に変異を持つ犬は、人間の脳活動との同期性が大幅に弱まりました。さらに変異を持つ犬は注意力の低下も見られたそうですが、LSDを単回投与したことで脳活動同期と注意力低下の問題は改善されたとのこと。


研究チームはこの結果から、人間と犬の間に神経学的なレベルで「絆」が存在すること、そしてこの絆が自閉症スペクトラム障害などでは損なわれる可能性があることを示唆しました。また、LSDが犬と人間との相互作用障害を改善する可能性があることも示しています。ただし、研究チームは限界点も指摘しており、より自然な設定での人間と犬の相互作用を調査することの必要性や、脳波データの解釈に関する制限についても言及しました。
研究チームは「今回の研究は種を超えた脳活動の同期を初めて報告したものであり、人間と犬との間にある社会的相互作用の神経メカニズムを理解する上で重要な知見になる」と述べています。また、脳活動の同期が自閉症スペクトラム障害のバイオマーカーとなるかもしれないと論じました。

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