オリーブに含まれる天然化合物が肥満や2型糖尿病の治療薬になる可能性、承認済みの治療薬と同等以上の効果を発揮

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オリーブオイルやオリーブの葉から抽出できる化合物であるエレノール酸が、肥満や2型糖尿病の予防に有望だとの研究が、2024年6月に開催されたアメリカ栄養学会の年次総会「NUTRITION 2024」で発表されました。
(OR02-02-24) Identification of a Novel Multi-target Bioactive Compound With Anti-obesity and Anti-diabetic Activities
https://nutrition2024.eventscribe.net/index.asp?presTarget=2742404
Compound from olives shows promise for treati | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1048893
Natural Compound in Olives May Help Fight Obesity And Type 2 Diabetes : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/natural-compound-in-olives-may-help-fight-obesity-and-type-2-diabetes
「生活習慣の改善や公衆衛生的な対策は、2型糖尿病の最大のリスク因子の1つである肥満の増加に対して限られた効果しか発揮していません。また、市販されている現行の肥満治療薬は減量の継続には効果がない割に高価で、長期的な安全性リスクを伴う可能性もあります」と指摘するのは、アメリカ・バージニア工科大学の栄養学教授であるドンミン・リュー氏です。
より安全かつ安価で便利な薬を開発するため、リュー氏らの研究チームはまず、食事に関するホルモンの分泌を担っている腸管内分泌細胞の「L細胞」に作用する天然化合物を探すことから始めました。
調査の際には、L細胞が分泌する「腸管GLP-1」と「ペプチドYY(PYY)」というホルモンが手がかりとして注目されました。これらのホルモンは、満腹感を刺激して食べ過ぎを防ぎ、血糖値や代謝を制御する機能を持っていることがわかっています。

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研究チームが、満腹ホルモンに作用する天然物質を探すスクリーニングを実施したところ、腸内でGLP-1とPYYの分泌を促す天然化合物として、成熟したオリーブの実やエクストラバージンオイルに含まれるエレノール酸が特定されました。
エレノール酸には、GLP-1とPYYを増やすだけでなく、過剰になると摂食量や体重の増加を招く「アグーチ関連ペプチド」の産生を調節する働きもあり、これが体重のコントロールに役立っているのではないかと研究チームは考えています。
実際に、研究チームが糖尿病の肥満マウスにエレノール酸を経口投与する実験を行った結果、エレノール酸を摂取したマウスは対照群の肥満マウスに比べて代謝の健康状態が著しく改善し、わずか1週間の投与で体重が減少して血糖値の値も良好になったとのこと。そして、治療開始から4~5週間後には、血糖値とインスリン感受性がやせた健康的なマウスと同等になるまで改善しました。

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エレノール酸が血糖値を改善させる効果は、GLP-1受容体作動薬として肥満症の治療に用いられているリラグルチドと同等で、2型糖尿病の第一選択薬である血糖降下剤のメトホルミンよりも優れていたと、研究チームは報告しています。
これらの結果について、リュー氏は「オリーブ由来のエレノール酸は、特に肥満や糖尿病の状態における、ホルモン分泌や代謝の改善に有望な結果をもたらすことが示されました。この化合物は、食事によって起きる生理学的条件を再現し、腸の代謝ホルモンの分泌を直接促すことで、エネルギーバランスと代謝の健康のコントロールに貢献しているのではないでしょうか」と述べました。
残念ながら、天然のオリーブやオリーブオイルに含まれるエレノール酸の濃度は非常に低いため、オリーブ製品を食べても今回の研究で判明した効果を得ることは難しいとのこと。

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研究チームは、実験の際にオレウロペインというポリフェノールの一種を分解してエレノール酸を調達しており、この方法を使うとオリーブから直接エレノール酸を抽出するより安価にエレノール酸を得ることが可能でした。
今回の研究結果は、アメリカ栄養学会の専門委員会による評価と選考を受けたものですが、学術誌に掲載されるのに必要な査読を受けたものではないため、それまでは暫定的な研究結果と位置づけられています。
リュー氏らの研究チーム今後、エレノール酸が体内でどのように働くのかを分析して、肥満や糖尿病を改善するメカニズムを解明し、将来的な臨床試験に向けた安全性の確認を行っていく予定です。

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