あまり知られていないが「アルコール依存症は薬で治せる」と専門家

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アルコールによる脳の損傷は断酒から7.3カ月で回復するとの研究結果がありますが、「断酒しようと思ってできるなら苦労はしない」と思う人も少なくないはず。ほどほどにお酒が楽しめるならともかく、自分の意思で飲酒をコントロールできないアルコール使用障害は難しい問題ですが、改善の助けとなる薬物療法も複数出てきていると、専門家は述べています。
Alcohol use disorder can be treated with an array of medications – but few people have heard of them
https://theconversation.com/alcohol-use-disorder-can-be-treated-with-an-array-of-medications-but-few-people-have-heard-of-them-227289
アルコールには肝臓病、心臓病、がんといった長期的な影響と自動車事故、急性中毒、自殺など短期的な影響があり、アメリカではこれらが20~49歳の死因のうち5分の1を占めているとのこと。これは、同じくアメリカで深刻な問題となっているオピオイド使用障害をはじめ、アルコール以外のあらゆる物質の過剰摂取による死亡を合わせたよりも多くの死因となっています。
しかし、アルコール使用障害は決して治らないものではありません。コロラド大学アンシュッツメディカルキャンパスの精神医学准教授で、15年間にわたりアルコール使用障害の薬物療法を研究してきたジョセフ・P・シャハト氏は、アルコール使用障害には心理療法や自助グループ、そして薬物療法といった効果的な治療法があると指摘しています。
それにもかかわらず、アルコール使用障害の患者のうち治療を受けているのは10%未満で、特に薬物療法を受けている人は3%もいません。これは、オピオイド使用障害の22%に比べてはるかに低い水準です。

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2024年5月時点で、アメリカ食品医薬品局が承認しているアルコール使用障害の治療薬はジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサートの3つです。
このうち最もよく知られているのが、アルコールを摂取すると不快感をもたらす抗酒薬であるジスルフィラムです。この薬はもともとゴムの製造現場で用いられていたもので、工場の作業員らが酒に弱くなることから、アルコール使用障害に使われるようになったという一風変わった歴史があります。
飲酒量を効果的に減らすことができるジスルフィラムですが、毎日服用する必要があるため、患者がこの用法を守らない場合は有用性が制限されます。

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より効果的な治療薬として、オピオイド受容体拮抗薬のナルトレキソンも使われています。この薬は、脳のオピオイド受容体をブロックし、鎮痛薬として飲んだ「外因性オピオイド」や、脳で生成された「内因性オピオイド」の両方の作用を阻止します。
オピオイド使用障害の薬であるナルトレキソンがアルコール使用障害にも効果を発揮するのは、薬物が快感をもたらす作用のほとんどに関与する神経伝達物質であるドパミンの放出を減少させるからです。これにより、アルコールへの渇望を減少させ、大量飲酒を抑える効果を発揮しますが、アルコールを完全に断つのにはあまり役立たないとのこと。
ナルトレキソンのポイントは、服用薬としてだけでなく、月に1回の注射でも使用できるため、毎日薬を飲むことが難しい患者に対してより優れた選択肢となる点です。
3番目の治療薬であるアカンプロセートもアルコールへの渇望を軽減しますが、分子レベルでの効果はあまりよくわかっていません。ヨーロッパで行われた臨床試験では、飲酒量を減らすのに役立つことが示されましたが、アメリカでの臨床試験の結果はそれほど芳しくはなかったとのことです。

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このほか、飲酒をやめた人が経験する幻覚などの離脱症状を軽減する薬として、抗てんかん薬のガバペンチンとトピラマート、筋肉の機能障害である痙縮の治療薬のバクロフェンなども有望視されており、バクロフェンは2018年からフランスでアルコール使用障害の治療薬として承認されています。
残念ながら、これらの治療薬がすべてのアルコール使用障害の患者に目覚ましい効果を示すわけではありません。シャハト氏によると、これらの薬は平均的に、患者が大量飲酒する日を週1~2日減らすとのこと。これよりもっと大きな効果が出る場合もあれば、そうでないケースもあるため、アルコール使用障害の薬物療法は、個々の患者に最適な治療を行う「精密医療」と位置づけられています。
その一方で、有望な新薬の研究も進められています。例えば、食事の後に生成されるホルモンのグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)を模倣する「GLP-1受容体作動薬」を服用していると、アルコールへの関心が減るといわれており、この薬のアルコール使用障害治療の可能性に大きな関心が集まっています。
シャハト氏の研究チームは目下、糖尿病や肥満の治療に用いられるGLP-1受容体作動薬であるオゼンピックとウィーゴビーのアルコール使用障害への使用に関する治験を行っており、記事作成時点から1~2年以内に結果が出る見通しとのことです。

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