なぜ人は誰もいないのに「誰かに見られている」と感じてしまうのか?

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街中や乗り物の中でふと視線を感じたり、自分しかいないはずの自室や風呂場で誰かに見られていると感じたりした経験がある人は多いはず。なぜ人は誰もいないのに「誰かに見られている」と感じてしまうのかについて、科学系ニュースメディアのLive Scienceが解説しています。
Why do people feel like they're being watched, even when no one is there? | Live Science
https://www.livescience.com/human-behavior/why-do-people-feel-like-theyre-being-watched-even-when-no-one-is-there

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臨床心理学者で法医学者でもあるレスリー・ドブソン氏によると、人が「誰かに見られている」と感じる理由はいくつかあるとのこと。その原因となるのはホラー映画や小説、恐ろしいニュース、ストレスの多いトラウマ的な出来事、深刻な精神状態など多岐にわたります。ドブソン氏は、「さらに極端なケースでは、パラノイアや過敏症を経験することもあります。これは多くの場合、根本的な精神疾患や脳の物理的な病気に関連しています」と述べています。
もちろん、中には気のせいではなく「本当に誰かに見られている」というケースもあり得ます。2016年の論文では、人間は他人の視線に敏感になるように進化を遂げた可能性が高く、脳には視線の処理専用のニューラルネットワークがあることが示唆されています。
他人の視線を感じ取ること自体はそれほど難しいことではなく、人間は他人の瞳孔を見てどこに視線を向けているのかがわかるほか、周辺視野で見たボディランゲージといった手がかりも使うことができます。このような誰かの視線を察知する能力は、社会活動を営む人間が協力的な相互作用を行う上で役立つ可能性があるとのこと。
また、人は視線を「物理的特性を持ったビーム」のようなものと暗黙のうちに考えていることも、近年の研究で明らかになっています。
人は「視線」を物理的特性を持ったビームのようなものだと暗黙のうちに考えている - GIGAZINE

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しかし、中には夜中に自分の部屋に1人でいる時など、誰も見ているはずがない状況で視線を感じることもあります。これは、ホラー映画を見た後などの一時的な恐怖心で起きることもありますが、過去にトラウマになるような出来事を経験した人にも現れることがあります。
2023年の研究では、こうした過剰な警戒心が危険を回避して将来のストレスを防ぐ防衛機制になることが示されました。ドブソン氏は、「扁桃体はストレスや不安などの感情を処理します。身体的な損傷や継続的なトラウマといったストレス要因により、扁桃体が過剰に活動したり傷ついたりすると、脅威を知覚するなどの感情的な反応が高まる可能性があります」と述べています。
カリフォルニア州を拠点とする臨床精神科医のアリス・フェラー博士は、誰かに見られていると感じること自体は珍しいものではないと指摘。しかし、「時間や場所を問わず常に誰かに監視されている」「ずっと監視されている状態が何週間も続いている」など、感覚が妄想的な領域に入ってしまうと日常生活にも支障が出てしまいます。
フェラー氏は、「精神疾患になると『これは単にそう感じているだけだ』と考える能力を失い、自分自身の身体的・精神的なプロセスに対する洞察力が失われます。現実の状態を確認することはできますが、それが定着するとは限りません」と述べています。
実際に統合失調症の症状には過剰な警戒心や被害妄想などがあり、その中には「誰かに見られていると感じる」ことも含まれます。過去の研究では、統合失調症の人は扁桃体を含む大脳辺縁系に異常な活動がみられることがわかっているほか、統合失調症患者のパラノイアは扁桃体の血流増加と関連しているという研究結果も報告されています。他にも、扁桃体と視覚野や海馬などの領域との異常な接続性が、パラノイアと関連していることも示唆されているとのこと。

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ドブソン氏とフェラー氏は、原因が何であれ被害妄想が続いており、特に他に誰もいないはずの状況で見られていると感じてしまう場合は、メンタルヘルスのサポートを受ける必要があるとアドバイスしています。ドブソン氏は、「自分が苦しんでいることに気づいたら、精神的・医学的介入を求めるように人々に勧めています。早期介入が鍵です。週に何日も苦しんでいる人や、仕事や勉強、人間関係がうまくいかなくなっている場合は、専門家を探すことが重要です」と述べました。

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