図書館が「電子書籍の予約上限数を減らす」と発表した理由とは?

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電子書籍をはじめとするデジタルコンテンツは世間に広く普及しており、公共の図書館でも電子書籍や電子オーディオブックを貸し出すことが一般的になっています。ところが、アメリカのワシントン州シアトルで公共図書館システムを運営するシアトル公共図書館は「デジタルコンテンツの予約上限数を減らす」と発表し、その理由についてブログで説明しています。
The Seattle Public Library Is Reducing Our Maximum Digital Holds. Here’s Why. – Shelf Talk
https://shelftalkblog.wordpress.com/2024/03/13/the-seattle-public-library-is-reducing-our-maximum-digital-holds-heres-why/

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シアトル市内に中央図書館を含む27の図書館を展開するシアトル公共図書館は、2024年3月19日から電子書籍および電子オーディオブックの予約上限数を従来の25件から10件に削減しました。3月19日の時点で予約数が10件以上ある場合、すでに予約済みの電子書籍や電子オーディオブックに影響はありませんが、予約数が10件を下回るまで新たに予約することはできません。なお、デジタルコンテンツの貸出件数は従来と同じ25件のままとなっています。
シアトル公共図書館はブログで、「大多数の利用者はこの変更の影響を受けませんが、図書館がデジタルブックへの関心に高まりに対応しつつ支出を管理するため、予約件数を削減する必要があった理由について説明したいと思います」と述べ、変更の理由をQ&A形式で説明しています。

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Q:なぜ図書館は予約件数の上限を減らす必要があったのですか?
A:近年の図書館の歴史において、デジタルコンテンツの貸し出し開始は最大の変化のひとつです。以前から電子書籍の人気は高まりつつありましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってその傾向が加速。シアトル公共図書館では2015年~2022年にかけてデジタルコンテンツの年間貸し出し数が3倍になり、利用者のニーズに合わせるためデジタルコンテンツへの支出を増やしてきましたが、電子書籍は高額なためコストの増加が持続不可能な領域に達しています。
Q:なぜ電子書籍はそんなに高いのですか?
A:消費者が電子書籍や電子オーディオブックを購入する場合、大抵は物理的な書籍と同額かちょっと安く購入できます。しかし、出版社は図書館に対する電子書籍販売で「ライセンス形式」を採用しており、複数の電子書籍を貸し出す場合はコピーごとにライセンスが必要なほか、ライセンスは毎年購入する必要があります。その結果、デジタルコンテンツは物理版コンテンツと比較して3倍以上のコストがかかるというわけです。
Q:なぜ予約件数の上限を減らすことがコストの削減につながるのですか?
A:意外に思うかもしれませんが、利用者の予約はデジタルコンテンツのコストが増加する最大の要因です。予約件数が多すぎる場合、図書館は待ち時間を増やしすぎないためにデジタルコンテンツのライセンスを追加購入します。つまり、数百人の利用者がベストセラーを1冊予約した場合、予約に対応するためのコストがあっという間に膨大な金額になってしまうというわけです。
実際、2023年にはデジタルコンテンツへの支出の約62%が、人気のあるタイトルの予約を処理するための追加ライセンス購入に費やされました。以下のグラフは、2015年~2023年にかけてシアトル公共図書館が電子書籍の購入に費やした金額をグラフで示したもの。黒色が古いコンテンツの買い替えに、青色が新しい電子書籍の購入に、オレンジ色が予約に対応するための追加ライセンス購入に費やされた金額を表しており、新規の電子書籍購入より追加ライセンス購入にかかる金額の方が高いことがわかります。

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Q:この変更は市の予算上の問題によるものですか?
A:いいえ。この変更は予算と人員のリソースに合わせて図書館が実施する、定期的なサービス調整の一部です。図書館は数年前から電子書籍のコスト上昇を監視しており、この問題を管理するための最善の方法について行動方針を評価してきました。

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