合成ダイヤモンドを常圧で作り出す技術が開発される

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天然のダイヤモンドは、地球の奥深くで炭素原子の集合体が極度の高温・高圧にさらされることで形成されており、人工的に合成ダイヤモンドを作り出す高温高圧法(HPHT法)は地球内部の生成プロセスを再現したものです。新たに、韓国の基礎科学研究院や蔚山科学技術院の研究チームが、常圧でダイヤモンドを作りだす技術を開発したと科学誌のNatureに発表した論文で報告しました。
Growth of diamond in liquid metal at 1 atm pressure | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07339-7

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Making diamonds at ambient pressure | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1042017
Forget Billions of Years: Scientists Have Grown Diamonds in Just 150 Minutes : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/forget-billions-of-years-scientists-have-grown-diamonds-in-just-150-minutes
99%の合成ダイヤモンドの製造に用いられているHPHT法では、一般にセ氏1300~1600度の温度範囲内で5GPa~6GPaの圧力をかけ、液体金属を触媒としてダイヤモンドを成長させます。すでに合成ダイヤモンドは宝飾品や精密加工用工具など幅広い分野で利用されていますが、より低圧かつ短時間で合成ダイヤモンドを作る方法を発見できれば、合成ダイヤモンドの製造に革命がもたらされる可能性があるとのこと。
そこで韓国の研究チームは、合成ダイヤモンドの新しい製造方法を探るプロセスを短縮するため、「RSR-S」という自作の真空システムを開発。これにより、液体金属の比率や温度などのパラメーターを調整する研究が大幅に加速し、ついに常圧の環境下で合成ダイヤモンドを作り出すパラメーターを発見しました。
研究チームが発見した合成ダイヤモンドの製造方法は、1気圧(約1013hPa)・セ氏1025度の条件下で、ガリウム・ニッケル・鉄・ケイ素を「77.75:11.00:11.00:0.25」の比率で混合した液体金属に、純粋なメタンと水素を暴露するというもの。メタンに含まれる炭素原子が液体金属の表面下に広がり、わずか15分程度で小さなダイヤモンドの核が形成され、最終的に液体金属の表面にダイヤモンド膜が作られたと研究チームは報告しています。
蔚山科学技術院の大学院生で論文の筆頭著者を務めたYan GONG氏は、「ある日、RSR-Sシステムを使って実験を行い、グラファイトのるつぼを冷却して液体金属を凝固させ、固化した液体金属片を取り除いたところ、破片の底面数mmにわたって『虹のような模様』が広がっていることに気づきました。この虹色がダイヤモンドによるものだと判明したのです!これにより、ダイヤモンドの再現性がある成長に有利なパラメーターを特定することができました」とコメントしました。

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今回の研究では、合成ダイヤモンドと接する液体金属の表面下領域に厚さ30~40mmのアモルファス(非晶質)領域が存在し、この領域上部に存在する原子の約27%が炭素原子であることも判明。炭素はガリウムに溶解しないと考えられているため、ガリウムの豊富な液体金属にこれほど高濃度の炭素が溶け込んでいることは予想外だったとのこと。
また、液体金属にわずかに含まれるケイ素が、合成ダイヤモンドの成長に重要な役割も果たしていることがわかりました。ケイ素が最適値よりも増えるとダイヤモンドのサイズは小さく、密度は高くなったそうで、ケイ素がないとダイヤモンドはまったく成長できなかったとのこと。これは、合成ダイヤモンドの初期形成にケイ素が関与している可能性を示唆しています。
今回の研究ではガリウム・ニッケル・鉄・ケイ素からなる液体金属が用いられましたが、ニッケルをコバルトに置き換えたり、ガリウムをガリウムとインジウムの混合物に置き換えたりしても、高品質のダイヤモンドを成長させることができたそうです。
基礎科学研究所の多次元炭素材料センターで所長を務めるロドニー・ルオフ氏は、「液体金属中でのダイヤモンドの核の生成と成長に関する私たちの発見は魅力的で、基礎科学に多くのエキサイティングな機会を与えてくれます。私たちは現在、核の生成とそれに続くダイヤモンドの急速な成長がいつ起きるのかを探っています」と述べました。

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