突如飛来して民家の屋根を突き破った謎の物体が「国際宇宙ステーションが捨てたゴミ」だった可能性

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2024年3月8日、アメリカ・フロリダ州の民家に謎の物体が墜落し、屋根を突き破る事故が発生しました。円筒形で重さ約2ポンド(約900g)だというこの物体は、なんと国際宇宙ステーション(ISS)が廃棄して大気圏に再突入した宇宙ゴミだった可能性が高いと報じられています。
Mysterious object that crashed through Florida home was likely space junk from the International Space Station | Live Science
https://www.livescience.com/space/space-exploration/mysterious-object-that-crashed-through-florida-home-was-likely-space-junk-from-the-international-space-station

突如飛来して民家の屋根を突き破った謎の物体が「国際宇宙ステーションが捨てたゴミ」だった可能性 - 画像


Metal thought to be International Space Station trash rips through Florida home | International Space Station | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2024/apr/02/space-trash-florida-home
Trash from the International Space Station may have hit a house in Florida | Ars Technica
https://arstechnica.com/space/2024/04/trash-from-the-international-space-station-may-have-hit-a-house-in-florida/
現地時間の2024年3月8日14時30分頃、フロリダ州に住むアレハンドロ・オテロ氏の自宅に謎の物体が墜落しました。
Hello. Looks like one of those pieces missed Ft Myers and landed in my house in Naples.
Tore through the roof and went thru 2 floors. Almost his my son.
Can you please assist with getting NASA to connect with me? I’ve left messages and emails without a response. pic.twitter.com/Yi29f3EwyV— Alejandro Otero (@Alejandro0tero) March 15, 2024
オテロ氏の自宅に墜落した物体の写真がこれ。十数cmの円筒形で、重さは約900gとのこと。

突如飛来して民家の屋根を突き破った謎の物体が「国際宇宙ステーションが捨てたゴミ」だった可能性 - 画像


かなりの勢いで落下したようで、物体は自宅の屋根を貫通。

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天井も突き破りました。

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物体は床に空いた穴から取り出されました。幸いにもけが人は出ませんでしたが、2部屋隣にはオテロ氏の息子がいたそうで、運が悪ければ物体が直撃していた可能性もあったとのこと。

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オテロ氏の自宅に墜落したこの物体は、ISSが2021年に廃棄したバッテリーパレットの一部である可能性が高いとみられています。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者であるジョナサン・マクダウェル氏は2024年3月、ISSが2021年に船外廃棄したEP-9バッテリーパレットが、協定世界時(UTC)の2024年3月8日12時30分~9日8時30分に地球へ再突入し、そのうち約0.5トンの残骸が大気圏で燃え尽きずに落下する可能性が高いと報告しました。
Reentry of the EP-9 battery pallet jettisoned from ISS in 2021 is currently predicted (by Space Force) between 1230 UTC Mar 8 and 0830 UTC Mar 9. It will not totally burn up on reentry - about half a tonne of fragments will likely hit the Earth's surface.— Jonathan McDowell (@planet4589) March 7, 2024
このバッテリーパレットは、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2020年に打ち上げた宇宙ステーション補給機(HTV:こうのとり)に積載されていたもの。HTVは新しいバッテリーをISSに運び、古いバッテリーを貨物パレットに積み替えて大気圏に再突入する作業を繰り返していましたが、作業の遅延によって最後の貨物パレットがISSに取り残されてしまったとのこと。
そこでNASAは2021年3月に、ISSのロボットアームを使用して残ったバッテリーと貨物パレットを船外廃棄することを決定しました。貨物パレットを廃棄した際の写真が以下。パレットの総重量は約2.6トンで、サイズは一般的な冷蔵庫の約2倍だったそうです。
Here is a picture of EP-9 after jettison from ISS pic.twitter.com/VQYf9GjyeP— Jonathan McDowell (@planet4589) March 7, 2024
パレットが地球に再突入した3月8日、NASAは「パレットの徹底的なデブリ分析評価を実施し、地球の大気圏に再突入しても無害であると判断しました」と述べていましたが、他の宇宙専門家や欧州宇宙機関(ESA)はパレットの一部が燃え尽きずに落下する可能性があると指摘していました。
NASAの広報担当者であるジョシュ・フィンチ氏はテクノロジー系メディアのArs Technicaに対し、NASAは残骸をオテロ氏から回収したと報告しています。フィンチ氏は、「私たちはできるだけ早くこの物体を分析し、その起源を突き止めます。分析が完了すれば、より多くの情報が利用可能になります」とコメントしました。
オテロ氏は自宅への損害賠償を担当機関に求めると述べていますが、バッテリーパレットを捨てたのはISSであるものの、パレット自体はJAXAが打ち上げたものであるという点で事態が複雑になる可能性があります。宇宙に打ち上げられた物体が引き起こした損害の賠償責任について定めた宇宙損害責任条約によると、宇宙物体が起こした損害は打ち上げ国が責任を負うこととなっていますが、いったん宇宙船内に納められた物体を廃棄した際の扱いがどうなるのかは不明です。

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