人はよく似た絵がAI製なのか人間のものなのかを区別できず「AIだと思った絵」に嫌悪感を抱く

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AIが生成した絵に異様なまでの忌避感を示す人がいますが、いざよく似た絵を見せられたとき、人間はその絵が誰(何)によって描かれたのかを判別できない可能性があることがわかりました。さらに、人間はAI製だと思い込んだ人間の絵に根拠もなく悪い評価を与えることも判明しています。
Understanding how personality traits, experiences, and attitudes shape negative bias toward AI-generated artworks | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-024-54294-4
People liked AI art – when they thought it was made by humans
https://www.sciencenorway.no/art-artificial-intelligence/people-liked-ai-art-when-they-thought-it-was-made-by-humans/2337417
心理学者のシモーネ・グラッシーニ氏とミカ・コイヴィスト氏は、AIによって制作されたと解釈される芸術作品を人々がどのように認識し、評価するかを調べるため、人間に絵を見せて評価してもらうという実験を行いました。
グラッシーニ氏らは、人間が描いた20個のマイナー作品をインターネット上から入手し、続いて画像生成AIのMidjourney V.4を用いて「キュビズム」「印象派」「日本の伝統的な芸術」など5種類のアートスタイルに基づく画像を生成しました。画像生成は、ゆがんだ図形など許容できない品質の画像が出なくなるまでやり直されました。
こうして用意した40枚の画像をグラッシーニ氏らはランダムに被験者へ見せ、画像がどの程度ポジティブな感情を引き起こしたか、その画像をAI製だと思うかどうかなどを尋ねました。このほか、被験者の外向性や協調性、感情の安定性など性格特性に関する5つの主要因子も調査しました。
以下が、実験のために用意されたAI製の絵です。

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その結果、被験者は画像がAIによって作られたものなのかを判断するのがあまり得意ではないことが判明しました。さらに、人間はAIが作成したと思われる画像に対してより低い評価を与えていたとのこと。
グラッシーニ氏らは「ある画像がAIによって作られたと考えた被験者は、実際にどこから来たものであるかにかかわらず、その画像はより醜く、感情的価値が低いと見なしました。一方でその画像が人間によって作られたと考えた被験者は、実際はどうあれ、より美しくより高い感情的価値を持つと見なしたのです」と述べました。
性格特性と画像に対する価値観を関連付けた結果では、創造的アイデンティティの高い被験者ほど、人間によって生成されたと信じられる画像をより強く好むことを示しています。グラッシーニ氏らは「芸術に強い愛着を持つ人は、AIによって生成された芸術を、人間の創造性と表現に深く根ざした伝統的な芸術プロセスに対する脅威とみなす可能性があります。このような傾向は『AIが生成した芸術には、人間が創作した芸術にある表現力等が欠けている』という認識から生じている可能性があり、創作物に対する否定的なバイアスが生じていると考えられます」と推測しました。
一方で、テクノロジーに対してポジティブな感情を抱く被験者の場合、人間の絵と見なした場合とAI製だと見なした場合の好みの差が小さくなったことも分かっています。
ここまではグラッシーニ氏らも予想していたそうですが、予想に反し、一般的に芸術や創造性への関心と関連する「開放性」がある人もAI製の絵への忌避感が少なかったそうです。このことについて、グラッシーニ氏らは「開放的な人は、平均的な人よりも新技術の製品を受け入れやすいのかもしれません」と考察しました。

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本研究の実施に当たり、人間の絵が写真撮影あるいはスキャンの際に画質が悪くなってしまいがちなことを考慮し、AI製の画像に人間の絵に近づけるためのノイズが加えられました。またすべての絵が正方形にトリミングされたため、アーティストの意図通りには表示されなかった可能性をグラッシーニ氏らは指摘しました。
グラッシーニ氏らは「我々の結果は、人間がAI製の作品を低く評価する可能性があるという考えを支持しています。これはおそらく認知バイアスによるものでしょう。人間にとって、その作品が実際にどこから来たものかは重要ではなく、むしろ自分が何を信じるかが感情を支配しており、客観的な作品の質はそれほど重要ではないようです」と述べました。
グラッシーニ氏らと同じベルゲン大学でデジタルカルチャーを専門に教鞭を執るアリンタ・クラウト氏は、「多くの民族や文化で、人間は創造性を人間特有のものと見なしています。社会は、創造性を人間の特別な特徴として認識し続けたいのです。そのために人間は戦いたくなるのです」とコメントを寄せました。クラウト氏はまた、「創造的であることと好かれる芸術を作ることは確かに重なり合うものの同じではありません。機械は、本質的に創造的でなくても、人々が好ましいと感じる視覚的製品を作り出すことができるのです。今回の被験者は、AIが作った作品に高い評価を付けたことを恥じる必要はありません」と述べました。

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