マンモス復活を目指すバイオテクノロジー企業がアジアゾウのiPS細胞作成に成功しマンモス復活に一歩近づく

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by Steve Jurvetson
アメリカのバイオテクノロジー企業であるColossal Biosciences(Colossal)はマンモスやドードー、フクロオオカミなどの絶滅動物をよみがえらせることを目標に掲げています。そんなColossalが、絶滅種のケナガマンモスと最も遺伝的に近い動物であるアジアゾウの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作成することに成功し、マンモス復活に一歩近づいたと報告しています。
Revolutionary Elephant iPSC Milestone Reached in Colossal’s Woolly Mammoth Project | Business Wire
https://www.businesswire.com/news/home/20240306305869/en/Revolutionary-Elephant-iPSC-Milestone-Reached-in-Colossal%E2%80%99s-Woolly-Mammoth-Project

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Will these reprogrammed elephant cells ever make a mammoth?
https://www.nature.com/articles/d41586-024-00670-z
Scientists Create Elephant Stem Cells in the Lab - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/03/06/science/elephant-stem-cells-woolly-mammoth.html
Woolly mammoth de-extinction inches closer after elephant stem cell breakthrough | Live Science
https://www.livescience.com/animals/extinct-species/woolly-mammoth-de-extinction-inches-closer-after-elephant-stem-cell-breakthrough
Colossalはハーバード大学のジョージ・チャーチ教授と起業家のベン・ラム氏が、絶滅したマンモスを復活させ、北極圏に解き放つことを目的として2021年に設立したスタートアップです。立ち上げ時に1500万ドル(当時のレートで約16億5000万円)の資金調達に成功しているほか、アメリカの情報機関であるCIAからも投資を受けていることがわかっています。
Colossalはケナガマンモスと最も遺伝子的に近縁であるアジアゾウを遺伝子編集し、毛むくじゃらの体や豊富な脂肪の蓄積といった寒冷地に適応した形質を持たせようとしています。しかし、野生のアジアゾウは記事作成時点で5万2000頭未満しか残っておらず、絶滅が危惧されているため、生きたアジアゾウから細胞を採取することは望ましくありません。
そこでColossalは、アジアゾウのiPS細胞を作ることでこの問題を解決しようと試みてきました。iPS細胞は体内のあらゆる細胞に分化させることができる幹細胞であるため、科学者らはiPS細胞を用いることで、生きた動物から組織を採取せずに遺伝子編集技術や寒冷地への適応をテストすることが可能です。
そして現地時間の2024年3月6日、ColossalはついにアジアゾウのiPS細胞を作成することに成功したと発表しました。Colossalの生物科学責任者であるエリオナ・ハイソリ氏は、「この細胞は間違いなく、私たちの絶滅動物復活に向けた作業において大きな利益となります」とコメントしました。

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これまで、絶滅危惧種のキタシロサイやドリル、ヤンバルクイナなどさまざまな動物のiPS細胞が作られてきましたが、ゾウのiPS細胞作成を目指した多くの試みは失敗に終わっていたとのこと。その原因は、ゾウの細胞ががん細胞になるのを防ぐTP53という遺伝子にあるとみられていました。
ハイソリ氏は、「ゾウの細胞で克服する必要があったことのひとつが、TP53経路がゾウの細胞に広がっているということです」とコメントしています。そこでハイソリ氏らの研究チームは、TP53タンパク質の産生を阻害する分子を作成することで、アジアゾウのiPS細胞の作成に成功しました。
研究チームはすでに、アジアゾウのiPS細胞を胚のような細胞塊に成長させることに成功しています。ハイソリ氏らは今後、iPS細胞のいくつかの遺伝子をゾウのものからケナガマンモスのものに変え、それが細胞自体の変更につながるかどうかを確かめることにしています。この戦略を使えば、「マンモスのような毛皮を持ったゾウの細胞塊」を作ることが可能になるかもしれません。
Colossalの創業者であるラム氏は、「私たちがケナガマンモスの復活プロジェクトに着手した時、それが困難であることは知っていました。しかし、私たちは常に地球上で最高のチームを編成し、目の前の課題に集中してきました。多くの応用が期待される今回の成功を、科学界と分かち合えることを誇りに思います。この一歩一歩が、象徴的な種であるケナガマンモスを復活させるという私たちの長期的目標に近づいているのです」と述べました。

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by Richard Droker
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