ソフトバンク創設者の孫正義氏が15兆円の資金を投入してNVIDIAに対抗するAI半導体ベンチャーを設立する「プロジェクト・イザナギ」を推進か

ソフトバンク創設者の孫正義氏が15兆円の資金を投入してNVIDIAに対抗するAI半導体ベンチャーを設立する「プロジェクト・イザナギ」を推進か - 画像


ソフトバンクグループ創設者の孫正義氏が、NVIDIAに対抗するAI半導体ベンチャーを立ち上げるため、最大1000億ドル(約15兆円)の資金投入を検討していると、アメリカ経済紙のBloombergが報じています。
SoftBank Founder Masayoshi Son Seeks to Build AI Chip Venture to Rival Nvidia - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-02-16/masayoshi-son-seeks-to-build-a-100-billion-ai-chip-venture
Softbank founder reportedly aims to raise $100 billion to build AI chip company that would rival Nvidia — Project Izanagi might leverage Arm design | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/artificial-intelligence/softbank-founder-reportedly-aims-to-raise-dollar100-billion-to-build-ai-chip-company-that-would-rival-nvidia
Bloombergによれば、この投資は「プロジェクト・イザナギ(Project Izanagi)」というコードネームで呼ばれており、孫氏が直接指揮を取っているとのこと。このコードネームは、日本の古事記に登場する国生みの神・伊邪那岐命(いざなぎのみこと)にちなんでいるほか、汎用(はんよう)人工知能の略称である「AGI」を含んでいるのが由来だそうです。以下の特別講演のムービーで語るように、孫氏は「人類よりも賢い機械で満たされた世界はより安全かつ健康的で、人類より幸せになるだろう」と述べており、AGIへの期待を示しています。
SoftBank World 2023 孫 正義 特別講演 AGIを中心とした新たな世界へ - YouTube

孫氏はプロジェクト・イザナギで設立するベンチャーについて、ソフトバンクグループ傘下の半導体企業であるArmを補完するような企業を構想しているとのこと。ソフトバンクは2020年7月にArmの事業を分割し、IoT部門がソフトバンクに移管しており、Armには半導体設計のIP事業が残っています。同年9月、ソフトバンクはNVIDIAにArmを最大400億ドル(当時のレートで約4兆2000億円)で売却する契約を発表しましたが、アメリカやイギリスの規制当局から待ったがかかり、取引完了の見込みがないとして、NVIDIAはArmの買収を断念しています。
NVIDIAによるソフトバンク傘下の半導体企業Arm買収話がなくなる可能性浮上 - GIGAZINE

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その後、ソフトバンクは一転してArmへ注力するようになり、2023年にはNASDAQにArmの株式公開申請を行いました。その結果、Armの時価総額は1532億ドル(約23兆円)にまで跳ね上がり、ソフトバンクグループの時価総額12兆5600億円を大きく上回っています。これを受けて、ソフトバンクは「今後のAIビジネス戦略において、Armの成長が最重要課題である」と発表しました。
記事作成時点では、AI向け半導体の製造はNVIDIAが独走している状態。2024年2月に発表された調査結果では、NVIDIAがデータセンター向けGPU市場で98%のシェアを握っていることが判明しています。プロジェクト・イザナギが設立を目指すAI半導体ベンチャーがこのNVIDIAの牙城を崩せるのかが今後注目したいポイントです。
NVIDIAがデータセンター向けGPU市場で98%のシェアを独占していることが判明、AI性能が明暗を分ける結果に - GIGAZINE

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Bloombergによれば、プロジェクト・イザナギで検討されているシナリオの1つはソフトバンクが300億ドル(約4兆5000億円)を、中東の投資企業が700億ドル(約10兆5000億円)を用意するというものだとのこと。すでに、Armのレネ・ハースCEOはソフトバンク取締役会の一員として、孫氏に助言しているそうです。プロジェクト・イザナギはAI関連の投資では最大規模のものになるとみられますが、資金調達方法や資金の使途は決まっていないため、今後変更される可能性は十分あります。
孫氏は、OpenAIのサム・アルトマンCEOが計画しているAI向け半導体ファブの建設への資金調達に参加するのではと報じられていますが、今回のプロジェクト・イザナギはこのアルトマンCEOの計画には関係しないとBloomebergは報じています。なお、アルトマンCEOはアラブ首長国連邦などの中東方面が投資に関係すると国家安全保障と独占禁止法への懸念が高まるとして、アメリカからの承認を得ようとしているとのこと。
OpenAIのサム・アルトマンCEOが数百兆円という桁外れの資金調達を計画し「半導体業界の再構築」を目指している、すでに孫正義やUAEの有力者と会談しているとの報道も - GIGAZINE

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また、イギリスのAI用アクセラレータを開発する半導体企業のGraphCoreは、海外への売却が検討されていると報じられています。AI技術は戦略的優先事項とみなされていることもあり、イギリスの規制当局から審査を受ける可能性は非常に高いとみられていますが、市場では5億ドル(約750億円)の価値があると見られており、このGraphCoreの買収に興味を持っている企業として、ソフトバンクやOpenAIの名前が挙がっています。このGraphCoreをどこが買収するかは、今後のAI半導体業界を大きく左右するかもしれません。
British AI champion Graphcore explores foreign sale
https://www.telegraph.co.uk/business/2024/02/17/british-ai-champion-graphcore-explores-foreign-sale/

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