フェイクニュースを拡散する人の中には実際はうそだと知りながら「世のためになる」と思ってわざと拡散する人もいる

フェイクニュースを拡散する人の中には実際はうそだと知りながら「世のためになる」と思ってわざと拡散する人もいる - 画像


SNSなどに氾濫しているデマや流言飛語の影響を最低限に抑える上では、フェイクニュースを拡散させないことが重要です。ところが、フェイクニュースを拡散している人の中には、「それがフェイクニュースだとわかっているけれど拡散することが世のためになる」と考えて、わざとフェイクニュースを広めている人もいるとのことです。
Individual differences in sharing false political information on social media: Direct and indirect effects of cognitive-perceptual schizotypy and psychopathy - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0191886921004487

フェイクニュースを拡散する人の中には実際はうそだと知りながら「世のためになる」と思ってわざと拡散する人もいる - 画像


Some people who share fake news on social media actually think they’re helping the world
https://theconversation.com/some-people-who-share-fake-news-on-social-media-actually-think-theyre-helping-the-world-215623
現代のソーシャルメディアでは、多くの人々が政治的なニュースを共有・拡散していますが、その中にフェイクニュースが紛れ込む可能性は高まっています。世界経済フォーラムによると、フェイクニュースは2024~2025年にかけて最も深刻なグローバルリスクとなるそうで、フェイクニュースの拡散による社会的・政治的分断の加速が懸念されています。
ソーシャルメディア上で共有されるフェイクニュースの一部は、有料広告やボットによって拡散されています。しかし、フェイクニュースの拡散に大きな影響力を持っているのはボットではなく、普通のソーシャルメディアユーザーであることもわかっています。
そこでイギリスのウェストミンスター大学で心理学教授を務めるトム・ブキャナン氏らは、アメリカに住む合計1000人の被験者を対象にしたオンライン調査を実施して、人々がフェイクニュースを拡散した割合やその心理について研究しました。
調査の結果、約20%の人が「後からフェイクニュースだと判明した情報を、それがフェイクだとは気づかずに拡散してしまったことがある」と回答しました。ところが、約10%の人は「うそだとわかっていた政治的なフェイクニュースを拡散したことがある」と回答し、一部の人々は意図的にフェイクニュースを拡散していることがわかりました。

フェイクニュースを拡散する人の中には実際はうそだと知りながら「世のためになる」と思ってわざと拡散する人もいる - 画像


わざとフェイクニュースを拡散する人の割合は決して多くありませんが、ソーシャルメディアの規模を考えると、一部の人々が拡散するだけでフェイクニュースが山火事のように広がる可能性もあります。その結果、人々が信頼できるニュースを入手しにくくなったり、フェイクニュースを信じ込んだりしてしまう危険があります。
ブキャナン氏らが過去に行った調査では、一部の人々は「面白いと思った」「ばかげていると思った」からフェイクニュースを拡散していたほか、これが真実ではないと強調するためにフェイクニュースを拡散する人もいたそうです。
しかし、中には他人を攻撃あるいは操作するために、意図的にフェイクニュースを拡散する人もいました。これらの人々は、気に食わない政治家に対する中傷キャンペーンを支援したり、あるいは支持する政治家の評判を高めたりすることで、他人の政治的見解に影響を及ぼすためにフェイクニュースを利用するケースがあります。目的を持ってフェイクニュースを拡散している人にとって、その内容が真実かどうかはそれほど重要ではなく、本人はその有害性に無頓着だとブキャナン氏らは指摘しています。
これらの人々とは対照的に、まったくの善意でフェイクニュースを共有する人もいました。これらの人々は、たとえその内容が真実であろうと虚偽であろうと、ニュースを共有することで世界がより良くなると考えていたとのこと。たとえば、重大な感染症が流行している時期にその危険性を誇張したフェイクニュースを拡散することで、人々が感染予防に力を入れるように仕向けるといった例が挙げられます。

フェイクニュースを拡散する人の中には実際はうそだと知りながら「世のためになる」と思ってわざと拡散する人もいる - 画像


ブキャナン氏らは、流行するフェイクニュースはネガティブな感情を喚起したり、道徳心に強く訴えかけたりするものが多いと指摘。そのため、ソーシャルメディアの知人がフェイクニュースを共有しているのを見ると、つい強い語調で注意したりブロックしたりしてしまいがちです。しかし、「フェイクニュースを指摘された人はかえって意見が偏っていく」という研究結果もあるように、厳しく意見したりさらし上げたりすることが逆効果になってしまうケースもあります。
こうした弊害を避けつつフェイクニュースと戦うには、プラットフォームの公式のガイダンスに従い、報告フォームからフェイクニュースとして報告するのが良いとのこと。また、自分が何らかの理由でフェイクニュースを共有したくなってしまった場合は、その気持ちをぐっとこらえ、同じメッセージを伝える別の方法を探すべきだとブキャナン氏らはアドバイスしました。

ジャンルで探す