「宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』で2万5000枚分の作画を担当した」という自称スーパーアニメーターの大ウソが発覚して大騒動に

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宮崎駿監督の長編アニメ映画「君たちはどう生きるか」は2023年12月から日本国外でも公開が始まっており、北米でスタジオジブリ史上最高額の興行収入を記録するなど、大きく話題になっています。南米・コロンビアでも2024年1月25日(木)からいよいよ劇場公開となるのですが、公開に先立って「『君たちはどう生きるか』で2万5000枚の動画を描いた」と語る地元の女性が話題となりました。しかし、この女性の証言はすべてウソだったことが判明し、コロンビアで大きな騒ぎとなっています。
Colombian Graphic Designer Scams National Media Into Believing She Worked "Hand-In-Hand" With Hayao Miyazaki On 'The Boy And The Heron'
https://www.cartoonbrew.com/feature-film/geraldine-fernandez-studio-ghibli-boy-and-the-heron-236877.html
「君たちはどう生きるか」の製作に参加したと主張したのは、コロンビア・バランキージャ市の建築用ガラス・アルミニウム製品メーカーにグラフィックデザイナーとして勤めるジェラルディン・フェルナンデスさんです。
フェルナンデスさんへのインタビュー映像は以下で見ることができます。
Video de Geraldine Fernández sobre su supuesto trabajo en Studio Ghibli - YouTube

フェルナンデスさんはインタビューで、「20カ月(1年8カ月)にわたって、2万5000フレームを納品しなければなりませんでした。その2万5000フレームは、いわば10秒のシーンに相当するもので、大変な作業でしたがそれだけの価値はありました。そこに宮崎監督がいたからです。彼は人生の達人だけでなく、プロとしても達人であることはご存じでしょうが、彼と一緒に仕事をしたことは非常に素晴らしく、ユニークな経験でした」と語っていました。
また、フェルナンデスさんは「宮崎監督と3回直接会った」「宮崎監督が自分の作品を称賛する際に、愛情を込めて『コロンビアの人』と呼んだ」「スタジオジブリが自分の仕事を評価し、手紙と贈答品を送ってきた」などのエピソードも披露しています。スタジオジブリのスーパーアニメーターだったというフェルナンデスさんの主張は、コロンビアでは驚きをもって報じられ、多くの人が信じたとのこと。
さらに、「君たちはどう生きるか」が2024年1月7日に発表された第81回ゴールデングローブ賞の最優秀長編アニメーション映画賞を受賞したことで、フェルナンデスさんに注目が一気に集まりました。実際にコロンビアにあるセルヒオ・アルボレダ大学では、フェルナンデスさんの講演会が開かれたそうです。また、地元紙のEl Heraldoでも「ゴールデングローブ賞を受賞したバランキージャの才能」というコピーとともに、大々的に扱われました。

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しかし、現地のアニメファンには、フェルナンデスさんの言っていることがあまりにもむちゃくちゃであることがわかるため、すぐにウソをついているのではないかという疑惑が浮上しました。実際、映画の宣伝資料やクレジットにはフェルナンデスさんの名前がないことがその証拠でした。
アニメ関連ニュースサイトのCartoon Brewが、アメリカで「君たちはどう生きるか」を配給するGKIDSに確認したところ、「スタジオジブリの公式クレジットリストを持っていますが、フェルナンデスさんの名前は『君たちはどう生きるか』のクレジットのどこにも登場しません」という返答があったそうです。
さらにフェルナンデスさんは、本業のグラフィックデザインで他人の作品を盗用した疑いで告発されました。フェルナンデスさんの作品のほとんどは、インターネットコミュニティのDeviantartにアップロードされた作品、あるいはコロンビアの広告代理店が実施したキャンペーンを剽窃(ひょうせつ)したものであることが判明しました。
コロンビアでフェルナンデスさんに対して懐疑的な目を向ける人が増えるなか、フェルナンデスさんは2024年1月15日に、スペインの配信者でゲームジャーナリストのCaith_Sithさんからのインタビューを受けました。
Se viene MOVIDA: LA VERDAD sobre Geraldine "de Studjo Ghibli" !YouTube - Twitch

フェルナンデスさんはインタビューの中で、「『君たちはどう生きるか』の製作に関して私が話したことはすべて真実です。しかし、機密保持契約に縛られているため、今はその証拠を示すことはできません」と語り、自分が映画に関わった証拠をスタジオジブリに提示してもらうつもりだと主張しました。
また、インタビューでグラフィックデザイン業での盗用について言及されると、フェルナンデスさんは「私の作品はすべてオリジナルです」と発言。ただし、その後に撤回し、「画像の1つは自分が作ったものではない」と認めました。
El Heraldoは「フェルナンデスさんの話は虚偽であることが判明しました。El Heraldoはバランキージャとカリブ海の芸術家に光を当てようとして、誠意を持ってフェルナンデスさんの主張を信じましたが、結果的にはウソでした。私たちは、メディアを欺いたこのグラフィックデザイナーに関する情報を掲載したことについて、読者に謝罪します」というコメントを発表しました。
フェルナンデスさんは1月16日に放送されたラジオ番組に出演し、「エピソードを誇張し過ぎたことは認めるが、『君たちはどう生きるか』の製作に参加していたことは事実」「映画全体ではなく、一部のシーンに携わっています。それらは2万5000フレームの一部で、2万5000フレーム全部を私が描いたわけではありません」と主張しました。

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しかし、2024年1月18日に再びラジオ番組に出演したフェルナンデスさんは「私は未熟な行為から、『君たちはどう生きるか』に参加したと言いました。最初のインタビューを受けた時、もう後には引けないことに気付きました。すべてのメディアを見た時、大きな恐怖を感じました」と語り、自分がウソをついていたことを認めました。
なお、フェルナンデスさんは記事作成時点でX(旧Twitter)とLinkedInのプロフィールを削除し、Instagramも非公開に設定し、個人のウェブサイトも閉鎖しています。

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