「コーヒーをいれる時は豆をひく前に水でぬらす方がいい」と研究で裏付けられる

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コーヒー好きの人は自宅でおいしいコーヒーを入れるためにさまざまな創意工夫を編み出しており、中には「コーヒー豆をひく前にほんの少しぬらす」というテクニックもあります。アメリカ・オレゴン大学の研究チームが行った研究では、実際にコーヒー豆をぬらすとひいた時に発生する静電気が抑えられ、より効率的にコーヒーを抽出できることが示されました。
Moisture-controlled triboelectrification during coffee grinding: Matter
https://www.cell.com/matter/fulltext/S2590-2385(23)00568-4

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Grinding coffee with a splash of water reduces static electricity and makes more consistent and intense espresso | ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2023/12/231206115853.htm
Why adding water when you grind coffee beans makes for a better brew | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2406880-why-adding-water-when-you-grind-coffee-beans-makes-for-a-better-brew/
Scientists Have Discovered a Way to Actually Make Coffee Taste Better : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-have-discovered-a-way-to-actually-make-coffee-taste-better
一部のコーヒー愛好家は、ミルやグラインダーでコーヒー豆をひいた際に発生した静電気で粉同士が固まり、抽出に偏りが出てしまうのを避けるために、「コーヒー豆をひく前に少しぬらした方がいい」とアドバイスしています。しかし、実際にコーヒー豆をひいた時の静電気がどのような影響をもたらすのか、豆の状態によって静電気の量に違いが出るのかといった詳細はよくわかっていませんでした。
そこでオレゴン大学の計算材料化学者であるクリストファー・ヘンドン氏は、コーヒー豆をひいた時に生じる静電気について調べるため、ポートランド州立大学の火山学者であるジョシュア・メンデス・ハーパー氏らと研究チームを組みました。
意外にも思える組み合わせですが、論文の筆頭著者を務めたハーパー氏が研究している火山噴火中の帯電プロセスは、コーヒー豆をひく時の帯電プロセスと類似しているとのこと。ハーパー氏は、「噴火の際、マグマはたくさんの小さな粒子に分解されて、それが大きな煙となって火山から噴き出します。そのすべての過程で粒子は互いにこすれ合い、雷が発生するほど帯電します。単純化して言えば、これはコーヒー豆をひいて細かい粉にするのと同じです」と述べています。

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研究チームはさまざまな原産国・加工方法・焙煎(ばいせん)度合い・水分含有量のコーヒー豆を用いて、グラインダーで粉砕した際に発生する静電気の量について分析しました。
すると、コーヒー豆の焙煎度合いや水分含有量が、粉砕時に生じる静電気の量に関係していることが判明。具体的には、より深く焙煎されていて黒色っぽい豆は内部の水分が少なく、粉砕時に発生する静電気が多い一方で、焙煎が浅く色が薄い豆は内部の水分量が多く、静電気も発生しにくかったと報告されています。
続いて、同じコーヒー豆を乾燥したままグラインダーでひいてエスプレッソマシンで抽出した場合と、ぬらしてから粉にして抽出した場合で、コーヒーの抽出時間や風味が変わるのかどうかも調査しました。
その結果、水でぬらしたコーヒー豆の方が抽出時間が長くなり、より濃いコーヒーを作ることができるとわかりました。また、水でぬらすことで粉の偏りが生まれにくくなり、ショットごとの差を抑えることにもつながったとのことです。
ヘンドン氏は、「原産地や加工方法の問題ではありません。コーヒーの品質や豆の価格でもありません。結局のところ、コーヒーの色と内部の水分に尽きるのです」と述べています。科学系メディア・New Scientistの取材に対し、ヘンドン氏はコーヒー1杯あたり0.5ml(コーヒー豆1gあたり20μl)の水を加えることで、粉が固まるのを防いでエスプレッソの風味を向上させられると回答しました。

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今回の研究ではエスプレッソだけをテストしましたが、コーヒー豆をぬらすことで静電気を抑えて粉が固まりにくくなる利点は、その他のコーヒー抽出方法でもメリットがあるとのこと。また、この方法を使えば同量のコーヒー豆からより濃度が高いコーヒーが抽出可能になるため、コーヒー産業全体に大きな経済的影響をもたらす可能性もあります。
研究チームは今後、「完璧なコーヒーの入れ方」についてさらなる調査を行う予定です。ヘンドン氏は、「再現性のあるエスプレッソを作るにはどのようにコーヒー豆をひけばいいのかがわかったので、次はコーヒーの味に感覚的な違いが違いが生まれる要因を理解したいと思います」と述べています。
また、コーヒーを起点とする学際的なコラボレーションが、地球科学に関する洞察をもたらすことも期待されています。ハーパー氏は、「コーヒー豆がどのように粉砕され、粒子として流れ、水と相互作用するのかについては、まだ多くのことがわかっていません。これらの調査は地滑り、火山噴火、土壌中の水の浸透など、地球物理学の並行する問題解決にも役立つかもしれません」とコメントしました。

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