認知症患者の3割は自覚がないとの調査結果、もし家族が認知症かもしれないと思ったらどうすればいいのか?

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久しぶりに会った高齢の親や親戚が忘れっぽくなっていたり、おしゃれ好きだったはずなのに身だしなみを気にしなくなっていたりした場合、認知症の可能性があります。「認知症患者の3分の1が自分が認知症であることに気づいていない」という報告を元に、家族の認知症の問題にどう向き合うべきかについて、専門家が論じました。
More than a third of people with dementia don't know they have it – what to do if you suspect your partner has the condition
https://theconversation.com/more-than-a-third-of-people-with-dementia-dont-know-they-have-it-what-to-do-if-you-suspect-your-partner-has-the-condition-219172
イギリスの認知症委員会は2023年12月に、同国の認知症患者の約36%が未診断であると報告しました。この報告書は、医療や介護の専門家に認知症の初期症状を発見するにはどうすればいいか情報提供するものでしたが、認知症は本人の身近な人にとっても大きな悩みです。
アイルランド・ダブリンシティ大学の臨床看護学者であるケイト・アーヴィング教授は、「認知症の症状は人によって異なるため、大事な人の普段の暮らしを知ることが大切です。いつもきちんと整理整頓していた人がだらしなくなるのは、元から大ざっぱな人がもう少し大ざっぱになるのとはわけが違います」と話しました。

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認知症の初期症状としては、記憶の問題がよく知られていますが、ストレスや悲しい出来事が記憶に影響を与えることがあるほか、加齢によっても認知機能は変化するため、物忘れがあったからといって認知症が始まったとは限りません。しかし、ストレスなど他の原因のせいだと決めつけることが認知症の兆候を見逃してしまう原因になることもあり、専門家はこれを「診断の影(diagnostic over-shadowing)」と呼んでいます。
多くの場合、認知症は数カ月から数年という期間で進行するため、ものを覚えるのに時間がかかるといった問題が数日から数週間という短い間に起きた場合、「認知症ではなくもっと深刻な何かの可能性がありますので、医師による速やかな診察が必要です」とアーヴィング氏は話しました。
他方で、認知症は現代社会における最大の恐怖のひとつであり、その人がその人でなくなるという恐怖から認知症に関する話題は避けられる傾向があります。また、話す場合もなじったり恥をかかせたりするような、その人のためにならないやり方になることもあれば、他の親族にだけ話して本人には相談しないということもあります。
こうしたすれ違いは、時間がたつにつれて信頼関係の消失に発展することもあるため、記憶障害があった場合や、本人が記憶の問題についての心配を口にした時点で、本人と率直に話し合うことが最善だとアーヴィング氏は指摘します。

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認知症やその疑いについて話すのは誰にとっても勇気が必要で、時には本人が記憶の問題を否定したり、まったく自覚がなかったりすることもあります。このような否定や察しの悪さは、それそのものが認知症の症状であることもあれば、そうでない場合もありますが、いずれにせよ記憶障害について誰かが懸念を表明したら重く受け止める必要があります。
やっかいなのが、本人が心配は要らないと頑固に否定する場合です。こうしたケースに対し、アーヴィング氏は「『心配が要らないというのはわかるけど、私は心配だから、私を安心させるために病院で診てもらって欲しい』と頼むのも手です」とアドバイスしました。
また、記憶障害にはある程度可逆的な原因があること、つまりある程度回復させることも可能なことを説明して、原因を取り除くために診察に行くよう勧めるのもひとつの方法です。
本人が受診に前向きになった場合、あらかじめ経験した記憶障害の種類やその時の状況、記憶障害の影響を1週間ほど記録しておくと、診断の際に役立つとのことです。

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アーヴィング氏は、家族と認知症の問題について、「記憶障害や妄想にはストレスが伴うことも多いので、これが日常生活に支障を来したり、家族関係を悪化させたりすることもありますが、最善策は正直でオープンであることです。つまり、『一緒に頑張ろう』『力になりたい』『何が起きても正面から向き合おう』と伝えることが肝心です。もし本人が嫌がるようでしたら、その人をもっとうまくサポートできる他の家族の助けを借りるのもいいでしょう」と話しました。

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