夜勤をしている労働者の半数以上が睡眠障害を抱えているという研究結果、交代勤務の悪影響は低学歴の若者で顕著

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現代社会では医療機関やインフラ関係、24時間営業のコンビニエンスストアなど、深夜労働が要求される仕事が数多く存在します。2015年の調査では、EU圏内に住む労働者の約21%が夜勤を含む交代勤務に従事していることがわかったほか、日本でも2012年の時点で労働者の21.8%が深夜労働に従事していることが報告されています。夜勤に従事する3万7000人以上の労働者を対象にしたオランダとベルギーの研究では、夜勤労働者の半数が何らかの睡眠障害を抱えているという結果が明らかになりました。
Frontiers | Shift work is associated with extensively disordered sleep, especially when working nights
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2023.1233640/full

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Working night shifts causes sleep disorders in more than half of workers
https://www.frontiersin.org/news/2023/12/07/night-shifts-sleep-disorders-half-of-workers
More than half of night shift workers have a sleep disorder • Earth.com
https://www.earth.com/news/more-than-half-of-night-shift-workers-have-a-sleep-disorder/
Most Night Shift Workers Have a Sleep Disorder, Study Confirms : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/most-night-shift-workers-have-a-sleep-disorder-study-confirms
十分な睡眠は人間の心身を健康に保つために必要不可欠ですが、夜勤や交代勤務が必要な仕事に就いている場合、睡眠パターンが乱れて睡眠不足になったり、睡眠障害を発症したりする可能性が高まります。
オランダのフローニンゲン大学の睡眠科学者であるマリカ・ランセル教授は、「交代勤務が睡眠の質を低下させるという証拠はたくさんあります。しかし、シフトの種類がさまざまな睡眠障害の有病率に及ぼす影響や、人口統計学的特徴によってどのような差が出るのかはほとんど知られていません」と指摘。
そこでランセル氏らの研究チームは、新聞広告を通じて募集した3万7662人の働いている成人を勤務スケジュールごとに分類し、睡眠時間や睡眠障害の有病率、人口統計学的特徴などを分析する研究を行いました。被験者の平均年齢は約40歳で、59.4%が女性、日中に仕事をしている人は86.2%、平均睡眠時間は6.97時間でした。また、調査された睡眠障害は不眠症・過眠症・睡眠時随伴症・睡眠関連呼吸障害・睡眠関連運動障害・概日リズム睡眠覚醒障害の6つでした。

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分析の結果、日勤のみの労働者と比較して、常に夜間に働いている労働者、あるいは交代勤務をしている労働者は、睡眠障害の有病率が高いことがわかりました。ランセル氏は、「注目すべきは、夜間に働く人の51%が、少なくとも1つの睡眠障害で陽性反応を示したことです」と述べました。
常に夜勤をしている労働者は、24時間以内の睡眠時間が6時間未満である割合が50%に達し、2つ以上の睡眠障害を持っている割合は26%でした。すべての勤務スケジュールを総合すると、少なくとも1つの睡眠障害を持っている人の割合は約3分の1であり、夜間勤務の労働者がいかに睡眠障害を発症しやすいのかがわかります。
この結果について研究チームは、夜勤労働者であっても所属する社会は日中指向であるため、日中も家事や所用などをこなす必要があるほか、休みの日になると日中に覚醒している睡眠パターンに戻りやすいことが原因だと分析しています。ランセル氏は、「夜勤労働者は、日中の仕事が中心の生活環境と同期できないため、夜勤の悪影響を完全に防ぐことはできないでしょう」と指摘しています。
また、「男性の方が睡眠時間が短い一方、女性の方が睡眠障害になりやすい」という性差もみられたほか、30歳以下の若年層が睡眠障害になりやすいこともわかりました。さらに、「低学歴の若者でありパートナーや子どもがいない人」が、交代勤務による睡眠不足や睡眠障害の発症といった悪影響を最も受けやすかったとのことです。

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今回の研究はあくまで自己申告に基づいたものであり、被験者も自ら研究に応募しているなどの限界がありますが、統計は夜勤と睡眠障害の間に関連があることを示しています。研究チームは、現代社会が夜間労働に依存していることを認めつつ、雇用主が労働者の健康にもっと気を配るべきだと主張。交代勤務にする場合は「午後勤→夜勤→午前勤」と時間帯が後ろにずれていく順方向シフトの方が好ましく、夜間勤務の時間はできる限り短くし、その間に十分な休養日を設けることをアドバイスしています。

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