AIモデルは「網膜の写真」だけで子どもが自閉症かどうか100%見分けられるという研究結果

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コミュニケーションや行動などに特徴がみられる自閉症スペクトラム症(ASD)の子どもを「網膜の写真」だけで100%の精度で見分けられるディープラーニングAIモデルを、韓国の延世大学医学部の研究チームが開発しました。ASDの子どもを早期診断する客観的なスクリーニングツールとして、AIが有望な選択肢になる可能性があると期待されています。
Development of Deep Ensembles to Screen for Autism and Symptom Severity Using Retinal Photographs | Ophthalmic Imaging | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2812964

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AI-screened eye pics diagnose childhood autism with 100% accuracy
https://newatlas.com/medical/retinal-photograph-ai-deep-learning-algorithm-diagnose-child-autism/
A Hidden Pattern in Children's Eyes Can Reveal if They Have Autism : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/a-hidden-pattern-in-childrens-eyes-can-reveal-if-they-have-autism
眼球の内側にある網膜には光を感知する視細胞が1億個以上も並んでおり、視細胞が感知した情報は視神経を伝って脳に送られます。網膜全体に張り巡らされた視神経は眼球の奥で100万本以上がまとまった太い束になり、視神経乳頭という一点で眼球の壁を突き抜けているとのこと。
この視神経乳頭は中枢神経系の延長線上にある「脳の窓」であり、近年はこの視神経乳頭に簡単かつ非侵襲的にアクセスして脳に関連する情報を得る試みが進められています。すでにイギリスの研究チームは、網膜にレーザーを照射することで外傷性脳しんとうを検出する方法を考案しています。
新たに延世大学医学部の研究チームは、子どもの「網膜の写真」をスクリーニングしてASDであるかどうかやASDの重症度を診断するディープラーニングAIモデルを開発しました。研究チームは、「ASD患者には網膜の構造的な変化があり、これは胚や解剖学的な結合を介した視覚経路の異常など、脳の変化を反映している可能性があります」と述べています。

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まず、研究チームはASDの有無およびASDの重症度を関連付けた網膜の写真でAIモデルをトレーニングしました。ASDの重症度は、自閉症診断観察検査第2版(ADOS-2)と対人応答性尺度第2版(SRS-2)のスコアで評価されたとのこと。
そして、平均年齢7.8歳の子ども958人から収集した合計1890枚の網膜の写真を用いて、AIモデルがASDの有無や重症度を正しく測定できるかどうかをテストしました。被験者のうちASDと診断されていたのは約半数であり、残り半数は年齢と性別を被験者が同じ非ASDの対照群でした。
テストの結果、AIモデルは100%の精度で子どもがASDであるかどうかを網膜の写真から判別することに成功しました。また、ASDの診断に重要と思われる視神経乳頭を含む写真のわずか10%のみを残し、残りの部分を削除した場合でも、精度に顕著な減少はみられませんでした。これは、視神経乳頭がASDと定型発達を見分ける重要な領域であることを示しています。
一方、網膜の写真を用いてASDの重症度を予測したテストでは、ADOS-2による重症度の予測精度は66%、SRS-2に基づいた重症度の予測精度は48%にとどまりました。研究チームは、「私たちは、実現可能な重症度の分類がADOS-2スコアでのみ可能であり、SRS-2スコアでは不可能であることを発見しました。これは、ADOS-2が訓練を受けた専門家によって十分な時間をかけて評価されるのに対し、SRS-2は介護者によって通常数十分で評価されるためでしょう。従って、前者は後者よりも重症度をより正確に反映します」と述べ、AIモデルは重症度の測定でも有望だったと主張しました。

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今回の被験者の最低年齢は4歳だったため、AIモデルはそれ以降の年齢層に対してASDの客観的なスクリーニングツールとして利用可能だと研究チームは主張。一方で、新生児の網膜は4歳まで成長し続けるため、4歳未満の子どもでもAIモデルが正確に機能するかを確かめるにはさらなる研究が必要だとのこと。
研究チームは、「「一般化可能性を確立するにはさらなる研究が必要ですが、今回の研究はASDの客観的なスクリーニングツール開発に向けた注目すべき一歩です。これは、『リソースが限られているために児童精神医学の専門家にアクセスできない』といった、緊急的な問題に対処する助けになるでしょう」と述べました。

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