ヒヒのミイラから古代エジプト人が交易した「謎の港湾都市」のありかが明らかに

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紀元前の古代エジプト文明はさまざまな地域と交易を行っており、当時のエジプト人が神聖視していたヒヒもエジプト外部から輸入していました。古代エジプト人が作った「ヒヒのミイラ」のDNAを分析した結果、古代エジプトの記録に現れるものの詳細は不明だった「Punt(プント)」と呼ばれる謎の港湾都市の位置が明らかになりました。
Adulis and the transshipment of baboons during classical antiquity | eLife
https://elifesciences.org/articles/87513

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Baboon mummy DNA from ancient Egypt reveals location of mysterious port city not on any maps | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/ancient-egyptians/baboon-mummy-dna-from-ancient-egypt-reveals-location-of-mysterious-port-city-not-on-any-maps
古代エジプト人はヒヒを神聖視して、冥界の神・バビや知恵の神・トートなどと結びつけており、ヒヒを神々への捧げものとしてミイラにすることもありました。しかし、古代エジプトで自然にヒヒが発生したことはないため、ミイラにされたヒヒは「プント」と呼ばれる場所から輸入されたと伝えられているとのこと。
しかし、古代エジプトの王朝がプントから金や木材、野生動物などを輸入したという交易記録は残っているものの、肝心のプントがどこにあるのかははっきりしていませんでした。
2020年の研究では、古代エジプト人が紀元前1550~紀元前1070年に作ったヒヒのミイラの歯を分析し、幼年期の食生活からこれらのヒヒがアフリカ大陸東端のソマリア・エリトリア・エチオピア付近から来ていることがわかりました。これが、プントの位置を示す最初の強力な証拠だったそうです。
今回ドイツ・コンスタンツ大学の遺伝学者であるギーゼラ・コップ氏らの研究チームは、紀元前800~紀元前540年頃に作られたヒヒのミイラからDNAを抽出し、19~20世紀にかけて収集されたヒヒの標本のDNAと照合する研究を行いました。なお、研究チームは10体の古代エジプトのヒヒのミイラからDNA抽出を試みましたが、古いDNAは壊れやすいためDNAを抽出できたミイラはたった1体だったと報告されています。

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分析の結果、エジプト人がミイラにしたヒヒは、現代のエリトリア沿岸部に生息する個体群と遺伝的に近いことが判明。コップ氏は、「これはアドゥリス港の近くです」と述べ、プントは後の歴史的記述に「アドゥリス」という名前で登場する古代都市と同じ場所にあった可能性が高いと主張しています。
アドゥリスは現代のズラ近郊にあり、紅海に面した港湾都市として交易で栄えました。エジプトの商人が遠征をしたことも紀元前300年以降の歴史的記録で明らかになっており、野生動物の交易の中心地だったといわれています。
これはヒト以外の霊長類に関する最初の古代のDNA分析のひとつであり、他の種に関する研究がさらに進むことで、古代エジプトの野生動物輸入と個体群への影響をさらに詳しく知ることができると期待されています。一方、今回の研究はあくまで1頭のヒヒのミイラに基づいたものであるため、コップ氏らはより多くのヒヒのミイラからDNAサンプルを採取し、年代的にも幅広い分析を行いたいとのことです。

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