「レーザーポインターはネコの精神衛生に悪影響をおよぼすのか?」を専門家が解説

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ネコのおもちゃとしてレーザーポインターは普及しており、ソーシャルメディアなどでもネコがレーザーポインターを必死に追いかける動画は頻繁に見かけます。このレーザーポインターを使った遊びがネコの精神衛生に悪影響をおよぼすのか否かについて、専門家が解説しています。
Are Laser Pointers Bad For Cat’s Mental Health? A Vet Reveals the Truth
https://www.inverse.com/science/laser-pointer-cat-toy-mental-health

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レーザーポインターはネコの注意を引き付け、運動を促すのに役立ちますが、遊んだネコは満足感を得られない可能性があります。ネコがレーザーポインターで遊ぶことは、「好きな食べ物のにおいをかいだのに、それを決して食べられないようなものです」と語るのは、ウルグアイのモンテビデオにある共和国大学の獣医学博士課程の学生で研究助手でもあるフロレンシア・バリオス・フェルナンデス氏。
野生で狩りをして食料を得る捕食動物のネコは、獲物を捕まえることを好みます。「ネコにとって狩猟行為はこの世で最高の経験です」とフェルナンデス氏は語りました。フェルナンデス氏によると、ネコは狩猟行為により脳内で多幸感をもたらすエンドルフィンを放出することさえある模様。しかし、狩猟は獲物を捕まえて殺すことで最高潮を迎えるため、獲物の実体がないレーザーポインターをフェルナンデス氏は「ネコをからかう幽霊のようなもの」と表現しています。

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応用動物福祉科学関連の学術誌に2022年に掲載された論文では、レーザーポインターでネコと遊ぶことは、尻尾を追いかけたり反射光を追いかけたりするような反復行動と関連性があることが示されました。なお、レーザーポインターを使った遊びの中でネコが継続的に狩猟行為に失敗し続けると、不安が高まり、望ましくない行動を頻発するようになる可能性が指摘されています。
フェルナンデス氏によると、珍しいことではあるもののレーザーが目に直接照射されると、ネコの網膜にダメージを与える可能性があるそうです。ただし、軍用のレーザーポインターを利用している場合、人間の目にもダメージを与える可能性があるため、より注意が必要となります。
ネコはげっ歯類を狩るイメージが強いですが、フェルナンデス氏によるとネコはタンパク質を得るために虫を含むあらゆるものを狩りの対象とするそうです。ネコの狩猟行為の成功率は40~50%ほどとそれほど高くありません。これはネコが1日の大半を狩りに費やすケースが多い理由でもあります。レーザーポインターが示す赤色の点は、タンパク質が豊富な虫に似ており、ネコの素早い動きを誘発させるのに役立つそうです。

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屋内で飼うネコは屋外で活動するネコよりも狩猟行為を模した遊びに興じる可能性が高いことが2021年の研究により明らかになっています。屋外で活動するネコと屋内飼いのネコを比較すると、屋内飼いのネコは疑似的な獲物よりも人工的な刺激に対してより激しい反応を示すそうです。例えば、屋内飼いのネコは食べ物の心配をする必要がなくても、目の前を横切るあらゆる獲物に注意を払うことが確認されています。この捕食行動を促進することはネコの健康にとって極めて重要です。フェルナンデス氏によると、病気のネコの60%は遊ぶことをやめてしまうそうで、遊び時間と病気の関連性が指摘されています。
市販のレーザーポインターがネコの精神衛生に悪影響をもたらす可能性をフェルナンデス氏は解説していますが、いくつかの変更を加えることでレーザーポインターを「優れたネコのおもちゃ」にすることもできるそうです。フェルナンデス氏は「レーザーポインターで目に見える獲物を導くこと」を推奨しており、レーザーポインターでネコを「ネコの大好きなおもちゃ」へと誘導することを推奨しています。
また、ネコがレーザーポインターを追いかける過程で家具に衝突することを防ぐために、開けた場所で遊ぶことをフェルナンデス氏はオススメしており、「ネコが何かにぶつかる可能性があるため、飼い主がレーザーポインターを正しく制御する必要があります」と語りました。

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なお、視覚的な刺激が必ずしも悪いものではないことが別の研究で示されています。保護施設で暮らすネコにさまざまな映像を見せるという実験では、「テレビを見せなかったネコ」や「無生物の映像を見せたネコ」と比べ、「アニメーションを見せたネコ」の方が睡眠時間が約3時間短くなることが明らかになっており、環境エンリッチメントの向上につながる可能性が示唆されています。

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