OpenAIとMicrosoftの提携がイギリスの独禁法当局の監視対象に、アメリカも非公式に調査を開始

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by Focal Foto
イギリスの競争・市場庁(CMA)が2023年12月8日に、MicrosoftとOpenAIの提携関係について関係者から意見聴取を行うことを発表しました。背景には、OpenAIのサム・アルトマンCEOの電撃的な追放と復帰に伴う同社とMicrosoftの接近が、AI市場の競争に影響を与える関係に発展するとの懸念があります。
CMA seeks views on Microsoft’s partnership with OpenAI - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/cma-seeks-views-on-microsofts-partnership-with-openai
OpenAI, Microsoft Tie-Up Facing UK Antitrust Scrutiny - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-12-08/microsoft-open-ai-tie-up-facing-uk-antitrust-scrutiny
Microsoft, OpenAI tie-up comes under antitrust scrutiny | Reuters
https://www.reuters.com/world/uk/uk-antitrust-regulator-considering-microsoft-openai-partnership-2023-12-08/
2023年11月17日に突然サム・アルトマンCEOが解任されたことに端を発する騒動は、アルトマン氏の復職と取締役会の再編によって幕引きとなりました。その過程では、Microsoftのサティア・ナデラCEOがアルトマン氏の進退に関する交渉を主導したり、アルトマン氏を含むOpenAIのメンバーをMicrosoftに受け入れると発表したりするなど、OpenAIの人事にMicrosoftが深く関与している実態が浮かび上がりました。
Microsoftがサム・アルトマンら元OpenAIメンバーの入社を発表 - GIGAZINE

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by Johannes Marliem
提携関係にあるAI大手2社が主役となった今回の騒動について、CMAは「最近の進展を含むMicrosoftとOpenAIの提携が、『関連する合併状況』をもたらしたかどうか、また、もしそうならその合併がイギリスの競争にどのような影響を及ぼしうるのかについて、当事者および利害関係のある第三者に対して意見を陳述する早期の機会を提供します」と述べて、関係者からの情報収集を開始したことを明かしました。
「関連する合併状況」とは、複数の企業が別個の存在でなくなるような取引のことで、取引によって売上高が7000万ポンド(約128億円)を超えるようになるか、またはシェア率が25%以上になることが、CMAによる審査開始の基準となります。
CMAの合併担当シニアディレクターであるソーチャ・オキャロル氏によると、この意見聴取は第1段階の調査に先立って行われるもので、CMAによる情報収集プロセスの最初の部分と位置づけられているとのこと。

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調査の主眼となっているのが、OpenAIに対するMicrosoftの支配がどの程度に及んでいるかです。OpenAIの母体は非営利団体で、独占禁止法の審査対象となることはまれですが、2019年に設立された営利子会社はMicrosoftが49%の株式を保有しています。
加えて、前述の経営体制の刷新により、MicrosoftはOpenAIに対するオブザーバー的な地位を獲得しています。これにより、取締役の選任などについて投票するための議決権こそないものの、OpenAIの取締役会にMicrosoftの代表者を出席させて機密情報を入手できるようになりました。
CMAは、「提携が支配権の獲得につながったかどうか、つまり一方の当事者が他方に対する重要な影響力、事実上の支配権、または議決権の50%以上を持つことになったかどうか、あるいは一方が他方に対して持つ支配の性質が変化したかどうかを検討します」と述べました。

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一方、Microsoftのブラッド・スミス社長はメディアへの声明で、「変化したことといえば、MicrosoftがOpenAIの取締役会に議決権を持たないオブザーバーとして参加するようになることだけです。GoogleがイギリスのDeepMindを完全に買収したのとはわけが違います」と述べました。また、OpenAIはメディアからのコメントの要請に応じませんでした。
OpenAIとMicrosoftの動向にはアメリカの規制当局も注視しており、海外メディアのBloombergは匿名を希望した関係筋の話として、「連邦取引委員会(FTC)は、OpenAIに対するMicrosoftの投資の性質と、それが独占禁止法に違反する可能性があるかどうかについて、非公式の予備的な調査を開始しました」と報じました。

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