あらゆる変異株に対応する新型コロナワクチンが登場、新型コロナのみならずSARS全体にも対応

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株が登場するたびにそれに対応したワクチンが開発されていますが、SARS-CoV-2はそれ以上の速度で変異を続けており、ウイルスの変異とワクチン開発はいたちごっことなっています。ケンブリッジ大学とバイオテクノロジー企業・Diosynvaxが、既知および将来のすべてのSARS-CoV-2変異株に対する免疫を獲得できる可能性を持つワクチンを開発し、動物での試験で有望な結果を得たと発表しました。
A computationally designed antigen eliciting broad humoral responses against SARS-CoV-2 and related sarbecoviruses | Nature Biomedical Engineering
https://www.nature.com/articles/s41551-023-01094-2
New vaccine technology could protect from future viruses and variants | University of Cambridge
https://www.cam.ac.uk/research/news/new-vaccine-technology-could-protect-from-future-viruses-and-variants
Pan-Coronavirus Vaccine Performs Well in Preclinical Studies
https://www.genengnews.com/topics/coronavirus/pan-coronavirus-vaccine-performs-well-in-preclinical-studies/
New Covid vaccine can protect us from all COVID variants
https://interestingengineering.com/health/this-one-vaccine-can-protect-us-from-all-covid-variants
すべてのSARS-CoV-2の変異株の表面にはスパイクタンパク質が存在しており、ウイルスはこれを使って細胞に侵入して感染します。これまで登場しているワクチンの多くはこのスパイクタンパク質を標的にしていますが、スパイクタンパク質はウイルスの突然変異により変化し続けるので、基本的に既存の変異株にしか効果を発揮できません。
研究を主導したケンブリッジ大学獣医学部のジョナサン・ヒーニー教授は、「現行のワクチンは過去に発生した特定の変異株に基づいているため、ワクチンが製造およびテストされ、人々が利用できるようになるころには新たな変異株が発生している可能性があります。私たちは、SARS-CoV-2だけでなく、その親戚すべてを防ぐワクチンを作り出したいと考えました」と話しています。

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変異株の課題を解決するため、ヒーニー氏らはスパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD)に着目しました。SARS-CoV-2がスパイクタンパク質で細胞に侵入する際は、このRBDと細胞の受容体が結合しなくてはならないため、RBDはウイルスの自己複製に必要不可欠な「アキレスけん」といえます。しかし、現行のワクチンはスパイクタンパク質全体を対象としているため、これを抗原として生成された抗体のうちRBDを標的にするのはわずか16%しかありません。
今回の研究でヒーニー氏らのチームは、SARS-CoV-2や2002年に発見された重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスなどが属する「サルベコウイルス亜属」に対する広範な免疫反応を引き起こす抗原構造を特定し、これらのウイルスのRBDをベースとした抗原を生成することに成功しました。
研究チームが、この抗原を元に弱毒化ワクチンやmRNAワクチンを作成してマウス、ウサギ、モルモットに投与したところ、いずれも強力な免疫応答を引き起こすことができたとのこと。
このワクチンは、SARS-CoV-2のアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン株が出現する前のものから設計されたにもかかわらず、これらすべての変異株に対して強力な保護効果を提供したため、今後登場する新しい変異株にも効果があると考えられています。

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ヒーニー氏は「野生型ウイルスや過去に問題を引き起こしたウイルスの一部を使う現行のワクチンとは異なり、この技術は自然の過ちから学んだ教訓を組み合わせて未来から私たちを守ることを目的としています。これらの最適化された合成抗原は、簡単には変化しないウイルスの重要な部位を標的として広範な免疫応答を発生させるため、未知のウイルスに対するワクチンへの扉を開くものとなります。これは他に類を見ないワクチン技術であり、まさにターニングポイントとなるでしょう」と説明しました。
研究チームは目下、このワクチンを用いた「ファースト・イン・ヒューマン試験」、つまり人間での最初の臨床試験を進めており、成功すればこれまでより効果的なSARS-CoV-2ワクチンが開発できるだけでなく、ほかのウイルスに対しても同様の効果を持つワクチンが登場する可能性があると期待されています。

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