「新型コロナへの感染による免疫とワクチンによる免疫の違い」が判明、一体どちらの免疫の方が強力なのか?

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「新型コロナウイルスに感染すると強力な免疫を得られる可能性がある」とするプレプリントの論文がある一方で、専門家は「過去に新型コロナウイルスに感染していたとしても、ワクチン接種を受けるべき」と話しています。そんな中、新型コロナウイルスの3800種類以上もの変異をシミュレーションした研究により、ウイルスへの感染で獲得した免疫とワクチン接種で獲得した免疫との間には大きな違いがあることが確かめられました。
Antibodies elicited by mRNA-1273 vaccination bind more broadly to the receptor binding domain than do those from SARS-CoV-2 infection
https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abi9915
How Immunity Generated from COVID-19 Vaccines Differs from an Infection – NIH Director's Blog
https://directorsblog.nih.gov/2021/06/22/how-immunity-generated-from-covid-19-vaccines-differs-from-an-infection/
新型コロナウイルスのデルタ株に代表される「懸念される変異株」の出現により、過去の感染やワクチン接種で得られた免疫が効きづらくなることが危惧されています。そこで、アメリカ・シアトルにあるフレッドハッチンソンがん研究センターのJesse Bloom氏とAllison Greaney氏らの研究チームは、新型コロナウイルスの表面から突き出たスパイクタンパク質にある「受容体結合部位(RBD)」という部分に注目した研究を行いました。

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RBDとは、人間の細胞の表面にある受容体とウイルスのスパイクタンパク質を結合させる役割を持つ部位です。RBDが機能しなければ、ウイルスは人の細胞内にうまく侵入できないため、RBDを認識できるかどうかは「過去の感染で獲得した免疫」と「ワクチンから獲得した免疫」の両方にとって重要なポイントとのこと。
しかし、RBDには多くの変異が起こりうるので、人体の免疫システムが特定のRBDを認識できるようになったとしても、構造が違うRBDを持つウイルスの変異株が出現すると対処できなくなってしまう可能性があります。
そこで研究チームは、RBDに発生しうる約3800通りの変異を網羅したライブラリを作成。モデルナのmRNAワクチン接種を2回受けた人と、過去に新型コロナウイルスに感染したことがある人から採取した抗体がこれらのRBDにどう反応するかを並行して検証する「ディープ・ミューテーション・スキャン法」という手法を用いて、免疫システムがRBDの変異に適切に反応できるかを調べました。

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調査の結果、ワクチンによって誘発された抗体はRBDを集中的に狙っていたのに対し、過去の感染によって誘発された抗体はスパイクタンパク質にあるRBD以外の部分を標的にするケースが多いことが判明しました。また、ワクチンによる免疫はRBDのさまざまな場所をまんべんなく標的にしていたのに比べて、感染により得られた免疫はRBDの特定の部分を狙う傾向が強いことも分かりました。
この研究結果について、アメリカ国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長は「抗体の識別方法の違いが、感染による免疫とワクチンによる免疫の違いになっていることが示唆されました。つまり、ワクチンで得られた抗体は、新型コロナウイルスの新しい変異株が登場しても強力に対応することができる可能性があるということです。さらに重要なことに、新型コロナウイルスに感染した後に回復した経験がある人でも、ワクチンの接種を受けることでさらなる防御効果が期待できることも示されました」とコメントしました。

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ワクチンによる抗体と感染による抗体の間になぜこのような違いがあるのかは、はっきりとは分かっていません。研究チームは、ワクチンがウイルスのタンパク質を実物とは少し違う形で提示するため、それがかえってさまざまなRBDの形状に対応できる免疫反応の柔軟性につながっているかもしれないと推測しています。
また、「mRNAが関与しているのが重要」だとする見方や、「普通の感染ではよほど重症でもない限り気道しかウイルスにさらされないのに対し、ワクチンは筋肉に直接投与されるので免疫がより大きく反応する」という説もあるそうです。
コリンズ所長は「いずれにせよ、新型コロナウイルスが普通の風邪の原因ウイルスである通常のヒトコロナウイルスと同様にさまざまな変異を起こす一方で、ワクチンはそれらの変異に対し引き続き有効なことが示唆されています。従って、パンデミックとの戦い勝つための最大の希望は、新型コロナウイルスに感染したことがあるかどうかにかかわらず、できるだけ多くの人がワクチンの接種を受けることです。そうすれば命が救われるだけでなく、既存のワクチンでは対応できないような変異株が出現する可能性も低くできます」と結論づけました。

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