【名前に使えない漢字の例一覧】名づけに使えない漢字がある理由や基準も解説

子どもができた際は名づけが必要ですが、日本には名前に使えない漢字があります。戸籍法で名前に使える漢字が決められているためです。

今回は名前に使えない漢字の例や、名づけの際に気をつけるべきルールを解説します。
名前に使えない漢字があるのはなぜ?

日本国籍の人は戸籍への登録が定められており、赤ちゃんが生まれると新たに戸籍に登録されます。戸籍に記載できる文字は法律で定められているため、名前に使えない漢字も存在するのです。
○戸籍法施行規則で漢字が制限されている

戸籍法第五十条では「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない」と定められています。そして戸籍法施行規則第六十条で常用平易な文字として挙げられるのは「常用漢字表」「別表第二に掲げる漢字」「片仮名又は平仮名」の3種類です。

言い換えると、赤ちゃんの名づけに使えるのはひらがな・カタカナのほか常用漢字と「別表第二に掲げる漢字」のみで、それ以外の漢字や記号・アルファベットは名前に使えません。

ただし、出生届を提出する赤ちゃんが外国籍の場合は、法務省が定めた漢字13,287字を選択可能です。
○名前に使える漢字は常用漢字と人名用漢字のみ

赤ちゃんの名づけなど、戸籍名に使える漢字は常用漢字と人名用漢字に限られます。常用漢字は昭和56年(1981年)に内閣告示され平成22年(2010年)に改められた「一般の社会生活」で多く使う2,136字です。常用漢字のうち約1,000文字は小学校で習います。

人名用漢字は戸籍法施行規則の「別表第二に掲げる漢字」で、常用漢字ではないものの名づけ用のニーズが高い漢字です。「巫女」(みこ)の「巫」や「苺」(いちご)などが含まれます。2017年9月25日以降は863字です。
名前に使えない漢字を名づけ前に調べる3つの方法

赤ちゃんの名前を考えても、名前に使えない漢字に該当する場合があります。そこで活用したいのが、名づけ前に名前に使える漢字を調べる3つの方法です。
○出生届を提出する役所で問い合わせる

赤ちゃんが生まれたら、戸籍名などを記載して出生届を市区町村役場に提出しますが、名前に使えない漢字があると受理されません。そこで、赤ちゃんの名前候補に名前に使えない漢字が含まれていないか、出生届を提出する役所に問い合わせる方法があります。

なお、名前に使える漢字でも組みあわせによっては、受理されるか不受理になるかの判断が役所により異なるケースがあることを認識しておきましょう。
○法務省Webサイトの戸籍統一文字情報で調べる

法務省Webサイトの「戸籍統一文字情報」では、読み方や画数などを入力すると、漢字が常用漢字・人名用漢字に該当するかどうか調べられます。検索結果に表示されない場合は、名前に使えない漢字です。
○赤ちゃんの命名サイトや書籍で確認する

名前に使えない漢字を調べる3つ目の方法は、命名サイトや書籍での確認です。多くの出産・育児系Webサイトでは赤ちゃんの名前ランキングが公開されており、名づけの参考にできます。また、苗字との組み合わせや、希望する呼び名などから候補の名前を検索できるサイトもあります。

赤ちゃんの名づけに関する書籍も多数販売されているので、参考にするといいでしょう。具体的に気になる名前が見つかったら、念のために前述の法務省サイトなどで使用可能な漢字かどうか確認しておくと安心です。
名前に使えない漢字の基準

名前に使えない漢字と使える漢字は何が違うか、どのような基準で定められたか説明します。
○常用漢字と人名用漢字に含まれない漢字

繰り返しになりますが、名前の漢字は「常用平易な文字」に含まれなければ使えないと戸籍法で決まっています。漢字は数万種類存在し、日常的に馴染みがない漢字の名前を受理すると戸籍などの事務に支障が生じるためです。文化庁国語課が平成19年(2007年)に行った調査では、日本で文献に使われる漢字の約96%が常用漢字表に含まれており、おおむね妥当といえます。

しかし、常用漢字表にない漢字を赤ちゃんに名づけたい国民の要望が多く、昭和26年(1951年)に「人名用漢字別表」が定められました。人名用漢字は年々追加されているため、今は名前に使えない漢字でも今後使えるようになる可能性があります。
○否定的な意味になる漢字の組み合わせ

1993年、「悪魔」と名づけられた赤ちゃんの出生届が市役所に受理を拒否される問題がありました。親が訴えを起こした家庭裁判所の判断は、「悪」と「魔」の両方とも常用漢字に含まれるため名づけに使えるとし、受理を容認するものです。しかし、ワイドショーなどで大々的に報じられ論争となり、結局赤ちゃんには別の名前がつけられました。

名前に使えない漢字ではなくても、「悪魔」のように漢字の組み合わせがマイナスな意味をもつものである場合、出生届が受理されないケースがあります。また、家庭裁判所は「名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合」に本人が改名を申請できると定めているため、受理の可否は別として否定的な名前をつけるのは避けましょう。
名前に使えない漢字の例

名前に使えない漢字をいくつかピックアップして紹介します。一見名前に使えそうな漢字もありますので、覚えておきましょう。

玻…「玻璃」(はり)という水晶を意味する仏教用語です。なお「璃」は常用漢字に含まれます。
籐…「とう」と読むヤシ科植物です。草かんむりの「藤」とは異なります。
齋…名字の「齋藤」や明治時代以前の男性名で見られる漢字です。異体字(新字体)の斎は名前にできます。
珪…現代では「珪藻土」(けいそうど)などに使われますが、身分が高い人が部下に与える宝玉を意味します。
綵…「さい」「あや」と読み、意味は「5色の絹」です。
厦…「か」と読み、「大きな家」を意味します。
繪…「絵」の異体字(旧字体)です。
檸…「ねい」と読みます。「檸檬」(れもん)は名前にできません。
薺…花の「なずな」です。
薇…単独では「び」「ぜんまい」と読み、「薔薇」(ばら)にも使われます。

名前に使えない漢字を将来使えるようになる?

人名用漢字は法制審議会の議論を経て追加されてきました。たとえば2004年に追加された漢字は「苺」「稟」「狼」など488字です。2015年に「巫」、2017年に「渾」の1字ずつが追加されて以来、人名用漢字は改訂されていません。しかし、現在は名前に使えない漢字も、国民からの要望が多ければ追加される可能性があります。
名前に使えない漢字以外の名づけルール

ここまで名前に使えない漢字について解説しましたが、ほかにも赤ちゃんの名づけに使えない文字などのルールが存在するため、簡単に説明します。
○アルファベット・数字・記号も戸籍名にできない

常用漢字・人名用漢字を除く漢字のほか、漢数字を除く数字や、〇☆□といった記号も名前に使えません。アルファベットなど日本語以外の文字も同様です。ただし、外国籍の子はアルファベットとカタカナを併記して出生届を提出できます。
○親や兄弟姉妹と同じ名前にはできない

赤ちゃんは戸籍に存在する親や兄弟姉妹と同じ名前にできないため、たとえば母親が花子の場合は子に花子と名づけられません。また、先に生まれた子が太郎ならば、弟を太郎にすることは不可能です。

ただ、戸籍は親と子で構成されるため、別の戸籍に記載された祖父母などの親戚と同じ名前はつけられます。
○キラキラネームを赤ちゃんに名づけられなくなる?

2024年度から戸籍への読み仮名記載が義務化され、「星」を「すたー」と読むなど漢字本来の読みからかけ離れたキラキラネームは徐々に名づけられなくなる予定です。ただ、法務省は2024年3月時点では戸籍に記載する読み仮名の基準を提示していないため、どの程度まで許容されるか明らかではありません。

個性的な名前をつけたい場合は、漢字の読みに合わせる、漢字ではなくひらがな・カタカナにするなどの対策が必要です。
名前に使えない漢字を知って赤ちゃんの名づけに活かそう!

名前は親が赤ちゃんに与える初めての贈り物です。ただし法律やルールに従って名づけなければならないため、名前に使えない漢字も存在します。

「せっかく素敵な名前を考えたのに、名前に使えない漢字が含まれていて受理されなかった」とならないためにも、どんな漢字を名づけに使えるか、事前にしっかり調べておきましょう。

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