札幌市交通資料館がリニューアル、屋内展示を強化 - 木製22号車も

札幌市交通資料館が5月1日にリニューアルオープンを迎える。改修前と比べて敷地面積が大幅に増加し、プロジェクションマッピングや音図鑑といった独自の展示内容が魅力に。4月22日に報道公開が行われ、内部の様子が公開された。

札幌市交通資料館は、市営交通の歴史を発信していく拠点として、1975(昭和50)年に札幌市営地下鉄南北線の自衛隊前駅付近でオープン。2017年から耐震工事のために休館した。コロナ禍で工期がやや遅れたものの、無事に改修工事が終了。5月1日のリニューアルオープンを予定している。

敷地面積は471平方メートルで、改修前の290平方メートルから大幅に増加した。屋内展示を強化したほか、開館当初からの強みだった屋外展示も引き続き楽しめる。

リニューアルオープン後の札幌市交通資料館は、毎年4月15日から10月いっぱいの9時半から16時半まで営業する予定。入館料は無料。毎週水曜日が休館日で、市内小学校の夏休み期間中は無休で営業する。
○パワーアップした屋内展示、新コーナーも

自衛隊前駅側にある入口から館内に入ると、屋内展示が見渡せる。フロアマットは地下鉄を運行する札幌市交通局、札幌市電を運行する札幌市交通事業振興公社で使用される「STマーク」の色を線であしらった。

「なりきり写真館」では、札幌市電や地下鉄南北線のパネルから写真を撮れる。札幌市電のパネルにフラッシュを焚くと、通常塗装だったはずの市電が花電車になるしかけも。こどもから往年のファンまで楽しめる新コーナーとなっている。

入口の右手では、パネル展示で札幌市営交通の歴史が把握できるようになっており、正面には歴代地下鉄車両の模型が展示されている。南北線、東西線、東豊線の模型を上から眺めると、各車両の長さの違いやパンタグラフの有無がわかりやすい。

収蔵品展示はガラスケース展示の他に、引出しを開けるとさらに多くの収蔵品が顔を出すようになっている。ブレーキハンドルや乗車券類、乗務員が使用する腕章など、多彩な展示品が目を引く。

路面電車や地下鉄の模型に加え、各種部品の展示も充実しているほか、地下鉄南北線開業時に使用されていた自動改札機も展示。動作しないため、きっぷを入れて遊ぶことはできないが、通過すると当時の人々の背格好やデザインの特徴が想像できて面白い。

屋内展示のメインは、札幌市で最初の路面電車として活躍した木製22号車である。1919(大正8)年に名古屋から24両購入された車両で、改修工事中は愛知県の明治村に移設されていた。リニューアル工事完了後に再び札幌へ戻り、展示が再開される。

木製22号車の窓にはプロジェクションマッピングが投影され、札幌市営交通のあゆみを振り返ることができる。車内にある人感センサーを使用して自動的に上映を開始し、上映終了後、20秒ほどで再び上映できるようになるという。

その他、東豊線の車両で使用された運転台を使って模型を運転する「札幌地下鉄ライド」、市営交通に関わる音声を駅別に再生する「市営交通おと図鑑」といった独自の展示も魅力的だった。

「札幌地下鉄ライド」は東豊線で使用された7000形の運転台を使用し、東西線8000形の模型を操作する。模型はマスコンハンドル1本で加速と停車を調整できる仕様で、ブレーキハンドルは使用しなくても操縦可能。こどもでも操作しやすいよう配慮されている。

「市営交通おと図鑑」では、各駅のボタンを押すと案内放送などが流れるが、約10回に1回、普段はなかなか聞けない乗務員向けの放送等がランダムで流れる。筆者が実際に操作してみたところ、「運転ハンドルをノッチオフ位置にしてください」など、2回ほど珍しい音声が流れた。音声に特化した展示はなかなか見られないため、興味深い内容だと感じる。

ミュージアムショップでは地下鉄・市電グッズのほか、交通資料館オリジナルのカプセルトイなども企画しているという。
○屋外展示も魅力、2021年に引退したM101号車も

南北線の高架下では、2021年まで活躍した札幌市電M101号車、南北線開業時に活躍した1000形をはじめ、札幌市電や札幌市営地下鉄で使用された車両が多数展示されている。現在は「オープンに向けて整備中」とのことだったが、冬の過酷さを考えると、全体的に保存状態は悪くないと感じた。

鉄道だけでなく、現在は運転されていない札幌市営バスも保存・展示されている。札幌市内を走った車両たちを間近で見ると、当時の人々の暮らしや世相を想像せずにはいられない。
○4月27日にプレオープン、倍率は約10倍に

札幌市交通資料館の館長を務める中山英樹氏は、「おじいちゃんやおばあちゃんが孫たちを連れて、『昔はこうだったんだよ』と懐かしんだり、こどもたちに『地下鉄や市電の運転士や駅員さんになりたい』と思ってもらえたりできるような施設になってほしいと思います。たとえば自動改札機付近に券売機を設置するなど、今後も展示物の拡大や改善を進めていきたい」と話していた。

4月27日には、2回に分けてプレオープンが予定されている。応募はすでに締め切っており、合計230名の募集に対し、約2,000人の応募があったという。開館を待ち望むファンが喜ぶ施設になることを期待したい。

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