ビジネスパーソンに求められる好印象な身だしなみとは? メンズ美容のイマドキの常識を医師が解説

いまや「キレイ」は女性だけのほめ言葉、ではなくなっているようです。Z世代では日常的にメイクをする男性も増えてきている中、肌の清潔感は男性にとってホットなテーマになってきています。

美容医療クリニック「WillbeClinic」の院長 堀田歩希さんに、メンズ美容や日常のケアについて話を伺いました。

○美容医療を行う人が増えている背景

メンズ美容のニーズが高まってきたのは、この3~4年ほど続いていたコロナが影響していて、主に3つの要因が挙げられます。

1つは男女問わず、健康や清潔感に関して気を配り、そこに投資をする人が増えたことです。

次に外出の機会が減ったことで、施術のダウンタイムの時間を確保できるようになったこと。そして、最後が自粛期間中は旅行などを控えることになり、それに使っていたお金を、美容にかけるようになったことが挙げられます。

美容のニーズといっても、男女で目的には差があるように感じます。

女性は「自分のため」、「キレイになるため」に行います。いっぽうで男性は、他人の目に気を遣い、「清潔感を得るため」に行っています。プライベートでは異性にモテるため、ビジネスでは好印象を与えるためが、大きいでしょう。
○若い男性にひげ脱毛が人気な理由

実際、クリニックを経営する中で感じたのは、若い男性であれば「ひげ脱毛」を希望する人がとても多いことです。なぜなら、ひげ脱毛をすれば、短期間で清潔感のある印象に変えられるからです。

また、毎日、ひげそりを行う不便さから解放される意味で、ひげ脱毛を行う男性も多いようです。肌荒れトラブルがなくなるのもメリットの1つでしょう。もう少し年齢層が上がれば、薄毛対策が美容医療の入口として始める人が多いですね。
○女性の社会進出が男性の美容意識を高めた?

こうしたメンズ美容のニーズが浸透した背景として、「女性の社会進出」が大きな要因だと考えられます。

例えば、男性ばかりの職場であれば、そこまで清潔感や美容は気にならないでしょう。しかし、いまは職場も取引先も顧客も、女性の数はますます増えています。

育休環境の改善や復職の早期化など、女性の労働時間は長くなり、仕事を共にする機会も増えました。そのため、ビジネスシーンで容姿や身だしなみに気を遣うようになったのが、ここ10年単位のトレンドとしてあります。
○コミュニケーションは「見た目が55%」の現実

メラビアンの法則にもあるように、コミュニケーションにおいては「視覚情報が55%」と言われ、表情やジェスチャーも含みますが、顔が与える印象は大きいでしょう。

顔の視覚情報として、清潔感が大きな影響を与えます。ひと昔前のビジネスの場では、「話し方」や「マナー」に気を付けることが求められていました。男性社員が「肌をキレイにした方がいい」という意識はなかったはずです。
○肌に関する女性の目はシビア「注意すべきは凹凸」

とはいえ、「とくにシミやニキビもないし、肌はキレイなほうだと思う」と考える男性もいるかもしれませんが、女性は男性が思っている以上にシビアに肌を見ています。

なぜなら、女性は肌に関してはふだんから気を遣って、知識も経験も豊富。しかも、日常的にメイクをしています。肌を見る視座は自然と高くなるわけです。

一方で男性は知識やふだんのケアもしていなければ、ほとんどの人がメイクもしていません。素肌で清潔感があるか判断されます。だからといって、メイクをして肌を整える必要はありませんが、男性が素肌で肌ツヤがよければ、それだけで女性への好印象につながります。

女性が肌の清潔感として見ている部分は、毛穴やニキビ跡といった肌の凹凸です。それと、肌のハリも見ています。くすみやシミの有無も関係はしますが、これらは見た目年齢にも関わってきます。
○肌のケアは「朝、夜、外出前」が重要

では、ふだんから男性はどうケアをしていけばいいでしょうか? 毛穴や肌のハリなどに関しては、ベースを整えることでずいぶんと印象は変えられます。ポイントは「保湿と日焼け」対策です。

女性なら基本中の基本ですが、男性は「できていない人」が多いでしょう。この2つを日常的にケアしていないと、どんなに美容医療で肌をキレイにしようとしても、ベースがないので限界はあります。

まず保湿ですが、これは朝の洗顔後や夜の入浴後、化粧水や乳液を使うだけでいいでしょう。「塗るのが面倒」「べたつくからイヤ」と続かない人もいるかもしれませんが、この積み重ねは大切です。

また、外出前に「日焼けどめ」を塗ることも、最低限やっておきましょう。日焼けどめはアンチエイジングでも重要で、「日焼け=肌の老化」という認識さえあります。

○食事や睡眠は肌のハリに直結することを知ろう

そのほかに、肌のハリに直結することとして一般的には浸透していないかもしれませんが、じつは睡眠や食事といった生活習慣も大切です。

まずは、タンパク質をしっかりとること。コラーゲンやエラスチンもタンパク質成分なので、それらが欠乏すれば新しく産生するのも難しくなります。

糖質や脂質のとりすぎも、皮脂が過剰に分泌され肌荒れと密接に関わってくるので注意が必要です。喫煙も血流を悪くするので肌によくありません。
○自分の肌質を知ることが大事

そうした美容習慣を続けていきながら、20代はまず、「肌の状態を知る」ことが大事です。なんとなく肌で気になることがあっていても、皮脂が多いからなのか乾燥しているからなのかなど、何が肌トラブルの原因かをわかっていない人が多い。

本当は美容皮膚科など専門のクリニックで、自分の肌質を見てもらうのが一番です。

どんな肌質でも保湿と日焼けどめはベースで必要ですが、プラスアルファで肌質改善するためには何が必要か、相談しに行くのでもいいでしょう。
○女性と「肌トーク」すればコミュ力もアップする!

「そこまではちょっと…」とためらいがあるなら、周囲の女性に自分の肌について聞いてみるのもひとつの方法です。じつは女性の方が男性の4倍ほど、色の分類に関して感覚が鋭いという研究結果もあります。識別能力が視覚的に高いわけです。

つまり、女性のほうが肌の見え方もこまかいわけで、「僕の肌どうですか?」と聞いて、フィードバックをもらうのはいいかもしれません。

男性からすると、肌について聞くのは気恥ずかしいと思いますが、女性が得意なテーマなので、コミュニケーションをとりやすい話題でもあります。
○頭髪ケアは「シャンプー選び」が重要なわけじゃない

もう1つの問題は頭髪です。若いうちから頭髪を気にする男性もいるかもしれませんが、気にしすぎる必要はありません。若い時の薄毛は病気に関係するケースがほとんどだからです。

よく「シャンプー選び」にこだわる人がいますが、それより「髪の毛の洗い方」に注意していく必要があります。

例えば、洗髪する時に爪を立てると頭皮を剥がれ落ちて、それを再生する過程でフケが出やすくなり、将来的な薄毛リスクが高まります。優しく洗うことが第一です。

また、しっかりと洗い流すことも大事です。髪の毛というより、頭皮を洗えているか。洗い流せていないと皮脂や汚れが頭皮に重なっていき、それをかくとフケが出て、匂いの発生のもとにもなります。

「ジェルやワックスをつけるのは髪の毛によくないのかな?」と不安になる人もいるかもしれませんが、毛の根本につけるわけではないので、薄毛に大きな影響は与えません。
○「なんか……髪の毛が細くなったかも」と思ったら薬の服用を

ただ、髪の毛が「細くなる」などの症状が出てきたら、早めにAGA予防薬(飲み薬)を服用することを検討してみてください。なぜなら、薄毛が相当に進行したタイミングで対策を始めても、ホルモンの関係でその流れは止まらないからです。

「このラインを超えたら薄毛」といった明確な線引きはありませんが、「生え際が少し後退した」や「毛が細くなった気がする」と実感したら、対策を始めましょう。
○母方の父が薄毛ならあなたも7割の確率で薄毛に!?

もうひとつ薄毛の可能性を考えるとしたら、「母方の父」が薄毛かどうかチェックしてみてもいいでしょう。「母方の父」による薄毛の遺伝確率は7割程度と言われているからです。

自分にそうした素因があるかを知っておき、気になる症状が自分の髪の毛に現れたら、予防タイプの薬を飲むことをお勧めします。

肌も髪の毛も不可逆性が高く、いくら対策を講じても進行が進んでしまったら、若いころの状態に戻すことはできません。特に肌は5、10年の積み重ねの結果で将来が変わってきます。
○清潔な肌は相手への印象だけでなく「自分の内面」も変える

これまで話したように、基礎的なこと習慣にして整えつつ、改善できない肌や毛質のトラブルに関しては、美容医療のプロに相談してもらえればと思います。

もちろん、ルッキズムに傾倒しすぎるのもよくないのですが、自分の肌がきれいになって清潔感が増せば、相手の印象もよくなります。そうすれば、自分に自信がもてるようになります。

自信は自分の内面にもポジティブに影響します。心持ちが変われば、人への接し方やコミュニケーションにも変化が現れて、仕事により前向きになっていけます。女性は日頃からメイクや美容整形でそうした経験をしています。男性も美容の習慣を取りいれることで、自分と周囲への効果を実感してもらいたいですね。

○著者プロフィール:堀田歩輝(ほった・あるき)

美容皮膚科医。慶應義墊大学医学部卒。慶應義塾大学病院、大手美容皮膚科での勤務を経て、2021年Willbe Clinicを銀座に開院。現在は新宿・立川にも店舗を構え統括院長に。「きれいは、みんなのものだ。」をスローガンに、経済的負担が少なく手の届きやすい美容医療を提供している。

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