「生涯一人暮らし」を決めた人の老後資金の備え方

これからは「生涯一人暮らし」のケースはますます増えるかもしれません。子供がいる方でも「子供の世話にはならない」と言ってはいても、いざとなれば子供に頼らざるを得ない部分もあるでしょう。子供がいなければ、それをお金で解決することになります。現実問題、老後にはどのような費用が掛かるのか、そしてどのように備えておけばよいのでしょうか。

○基本的な生活費はいくらかかる?

最初に老後の基本的生活費を把握してみましょう。データは少々前のものですが、現在とそれほど大きな変化はないでしょう。人の暮らしで15万、夫婦で24万円程度とわかります。その他に、介護が必要になれば介護費用、家電などの買換え費用、リフォームなど住まいの通常とは別の費用などが必要となります。これをベースに、地域性や自分が望む生活レベル等を加味して考えてみましょう。

○基本的な生活費以外に準備しておくこと

「生涯一人暮らし」となると、さまざまな事柄をお金で解決しなければなりません。特に病気やけがで身動きできないとき、高齢になって自立できないとき、老後にさまざまなサービスを受けるときの保証人の依頼など、元気で働いている間は問題なくても、高齢になったり弱ったりしたときは、家族がいないことが大きなハンディになります。現役時代の扶養家族がいない分の余力は、ほぼそのために備える必要があるのではないでしょうか。
○介護費用の準備

要介護5の1割負担額は老人ホームなどの特定施設に入居の場合で、およそ2万5,000円程度です。在宅の場合はサービスによって手細かく規定されますが、80歳を越えたら何らかの介護負担があると考えておきましょう。支給限度額を超えて介護を受ける方は、要介護5でも3%程度ですので、80歳を過ぎたら2万5,000円×12カ月×余命年数程度は最低限想定しておきましょう。10年間で300万円見当です。
○高齢者施設の入居費と毎月の費用の準備

入居初期費用がゼロの施設もありますが、自立型の施設は数千万円、要介護者対象でも数百万円の一時金が必要なところもあります。自分が望む施設の入居費用と月々の費用を事前にチェックしておきましょう。

入居の際には保証人が必要となります。保証人になってくれる人がいない場合は入居ができなくなるかもしれません。民間の保証人業務を行っている会社と契約を結べば可能なケースもあるでしょうが、その分の費用を準備しておかなければなりません。
○医療費の準備

現役時代に働けなくなった場合の医療費と生活費、老後の医療費と年金では不足する生活費の用意が必要です。仮に終末医療としてホスピスで過ごすとなると、日額のベッド代は様々で3万円/月のところも少なくありません。

また救急車で運ばれた先のベッド代が3万/日であったら、たちまち月々100万円は消えていきます。あらかじめ病院を選べないことが多いことも考えておく必要があります。家族がいなければ付き添いを雇う必要があるかもしれません。また、後期高齢者の保険料がUPする見込みです。社会保険があって老後は医療費が予測以上かかります。
○住まいの維持管理、家電の買い替え

住まいのリフォームは現役の時に済ませて、リタイア後は最低限の維持管理で済ませるのが原則です。それでも家電の買い替えは発生するでしょう。
○葬儀費用とお墓の準備

お墓は維持には通常一定の費用が必要です。維持費用を負担しない単身者に、限られた実家の墓地スペースを明け渡せるか疑問です。葬儀も含めてどうしたいかを考え、依頼先とそのための費用を考慮に入れておきましょう。
○年金はどのくらいもらえる?

若い方は「自分たちは将来年金がもらえない」と言う方が多いですが、年金を増やすには次世代の人口を増やすしかないわけで、生涯単身と考えているのであれば、甘んじて受け入れるしかありません。

世界的に見て日本の年金制度は歴史が長く、充実しています。隣の韓国は1986年の制定で受給資格20年を満たすのは、なんと2008年以降で、つい最近なのです。1941に制度ができた日本との差は歴然です。営々と築き上げてきた制度を軽視してはなりません。それでも年金が不足と考えるのであれば、年金を増やす方法はいろいろあります。
○1. 受給の繰り下げを行う

平成4年4月1日より75歳受給まで繰り下げ可能になります。その際の年金額は84%増しとなります。70歳まで繰り下げる場合の年金額は42%増しとなります。75歳未満で亡くなれば損をするようですが、年金は生きているときに安心できることを主軸に考えてください。また年金は障害年金を受け取れる保険の機能もあります。働き盛りが加入する定期保険は掛け捨てですが、健康に過ごしていても「損」とは考えないでしょう。
○2. 長く働く

現在は65歳までは働きつづけられるようになりましたが、75歳くらいまではスローダウンして上記の基本的生活費程度は確保すれば、年金の繰り下げができます。厚生年金に加入していれば、長く働いた分年金額も増えます。
○3. 2階・3階部分の年金に加入する

サラリーマンは、厚生年金もあり、比較的恵まれた年金額を手にできますが、第1号被保険者は年金の受給を繰り下げても、生活を維持できるレベルには足りません。国民年金基金か確定拠出年金等の加入を早くから検討する必要があります。

単身者に限りませんが、65歳までは働き、その後75歳まではペースダウンして楽しく働き、最低限の生活費を確保してみませんか。70歳または75歳から割り増しされた年金の受け取り開始するのが、これからの時代のリスクの少ない老後の設計のように思います。おひとり様であれば、なおさら年金額を増やしておきたいものです。

佐藤章子 さとうあきこ 一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。 この著者の記事一覧はこちら

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