貯金ゼロが招く悲惨な未来とは

貯金ゼロだと将来が心配なのは誰でも同じはずです。貯金が必要だとは誰もが感じ、できない理由をはっきりさせ、その解決策を見出したいと考えるでしょう。ただし、本人にはほぼ理由はわかっているはずだと思います。

わかっていてもできない点が問題なのであって、本人の努力による改善策を示しても、それほど効果が期待できるか、心もとない面もあります。今回は少し視点を変えて、今の時代を俯瞰的に見ることによって貯金ゼロが招く恐怖の未来を紐解いていきましょう。

○統計値から読み取る貯蓄の実態

日銀の外郭団体である、金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査 2019』によると、単身者のデータの平均年齢は44歳で6割が男性です。年収の中央値は220万円となっています。2人以上世帯の人数は3.1人で平均年齢は58歳、年収の中央値は450万円となっています。

単身者の借入金がある比率は19.3%で、借入金がある世帯の借入金額の中央値は100万円となっています。平均値は341万円で、内住宅取得資金は180万円となっています。2人以上世帯の借入金がある比率は41.8%で、その大半は住宅宅ローンです。単身者の借入の目的の実に43.7%が生活費となっているのは驚きです。

家計の負債と資産のバランスについて、「不安がある」比率は7.3%(2人以上14.6%)で、実に82.2%(以下同64.1%)が「考えたことがない」と回答しています。一方、「生活設計を立てるつもりがない」と回答した比率は30.4%(22.6%)で2010年の18.0%(20.6%)から、単身世帯は年々増え続けています。マイホームを「取得するつもりはない」「目下のところ考えていない」比率を合計すると、77%(57.9%)となっています。

「老後が心配」とする比率は「多少心配」を加えれば85.6%(81.2%)にもなり、その理由の76.2%(69.7%)が「十分な金融資産がない」としています。年金に関しては61.0%(47.3%)が「それだけで生活は賄えない」と予測しています。老後の生活費としては、59.2%(79.1%)が公的年金、30.0%(38.4%)がその他年金や保険、金融資産等32.2%(27.6%)、就労54.3%(48.2%)となっています。公的援助を期待する比率が11.4%(5.2%)もあります。
○統計値から見る現代の問題

上記の統計値から、どのような時代の問題点が見いだせるでしょうか。先々不安としつつも、現状を直視せず楽観視し、レジャーや生活の資金を借り入れている時代の風潮が読み取れます。当然、その時代の問題点の中にどっぷりと身を置いていたのでは、自分自身の人生設計を危ういものにしかねません。

晩婚化による長い独身時代

金融資産の保有目的として、単身世帯が子供の教育費や結婚資金の比率が低いのは当然でしょう。2人以上世帯の数値はさすがに高くなっています。しかし、ここで考えなければならないのは、近年の晩婚化です。

より若い時代こそ、貯蓄ができることを忘れてはなりません。長い独身時代を経て高年齢になってから結婚すれば、教育資金や住宅ローン、老後の生活資金のための準備が一気に同時に押し寄せます。しかも、準備期間は晩婚化度合いによって短くなるのです。

短い独身時代であれば、その間は思いっきり青春を謳歌するのもよいかもしれませんが、これからは別の考え方も必要でしょう。

生活が広がりすぎた現代社会

上記のデータによると、独身時代の借入理由として、「日常の生活資金」「旅行・レジャーの資金」が大きな比率を占めています。耐久消費財も大きな比率ですが、これは車の購入に関する物も含まれていると思いますので、地域によってはやむを得ない面もあります。日常の生活費のために借金をすること自体、重く考えなければなりません。
○「貯金ゼロ」が導き出す恐ろしい未来とは

それでは、貯蓄がないとどんな未来が待ち受けているのでしょうか。

(1)老後に稼ぐ算段が崩れて困窮する

「最後まで働く」という若い方は身近にも多くいます。相談業務でもそういう方は多くいらっしゃいます。しかしやはり老後は、思うように働けるとは限らないことを考えなければなりません。若いときは、老後の状況を想像するのは難しいです。特に核家族化した現代では、老いていく家族と一緒に暮らすことが少なく、一層想像を難しくしているでしょう。老後は年金や貯蓄に頼らざるを得ないのが自然なのです。「老後の分は定年後に稼ぐ」という考えは、現実とややかけ離れた感があると言えるでしょう。

(2)住む場所がない

「生涯賃貸派」という方もいますし、それなりの理由もあれば何ら問題ではありません。しかし、現実問題、年金生活で家賃を支払うのはかなり大変です。統計値で将来年金では足りないと思っているのですから、なおさらです。それに民間の賃貸マンションやアパートは、なかなか高齢者には門戸を開いてはいません。高齢者は簡単に住まいを貸してはもらえないのです。

また、自分が満足いく老人ホームに入居しようとする場合、数百万、数千万の入居一時資金が必要となります。多くは自宅を売却してその資金に充当することになります。一時金が不要で低所得でも入居できる施設もありますが、希望者が多くなかなか入居できませんし、いろいろ不便なことも少なくありません。

(3)旅行などの娯楽を満喫できない

リタイアしたからといって、家に引きこもるだけとは限りません。まだまだ元気で時間は十二分にあるとなれば、働いていたときにはできなかったことがいろいろ経験できるでしょう。趣味に力を入れたり、旅行三昧になったり、いろいろ楽しみたいことも多くあるでしょう。しかし、それらにお金をまわす余力はなく、「毎日を生きるのに精一杯」という状況に陥る公算が大きいです。

(4)満足な医療・介護サービスが受けられない

年齢を重ねると、ちょっとしたはずみでけがや骨折などをしやすくなります。免疫力も弱ってくるため医療機関のお世話になる回数も増えますし、自分でできることが少なくなれば、介護保険を利用して介護を受けることにもなります。ただ、介護を受けようとしても介護保険適用外のことは自費で支払わなければなりません。

また、今まで自分でこなしてきた家事を代行してもらうケースも多くなるでしょう。満足に体が動かないのにそれらのサービスにも出費するお金がなければ、たちまち家はゴミ屋敷となってしまいます。
○老後の人生を謳歌するには、お金が必要

このような未来を迎えたくなければ、今からでも遅くはないので貯金に励みましょう。貯金をするには、やはり以下の2点が近道となります。

収入を増やす

収入を今よりも増やせる手立てがあるのであれば、節約を考えるよりも収入を増やす方が近道です。ただし、増えた収入相当額は全額貯蓄します。貯蓄に弾みがつけば、今までの生活をもう少し節約して、貯蓄をさらに増やしたいと考えるようになると思います。

節約する

収入を増やす手立てがないのであれば、それがその人の実力です。実力に応じた生活設計にするしかありません。問題を先延ばしせずに、生活スタイルを縮小するしかないのです。

アリとキリギリスの寓話の通り、前もってコツコツと努力してきた成果が老後に大きな差となって現れるのです。今の時代の波に浮かれて人生設計を怠れば、老後は周りと大きな差がつくことを想像しなければなりません。一緒に時代を楽しんでいるように見える友人も、ひそかに副業などで蓄財していないとも限りません。まだまだ体力がある若い時代は、同時にいろいろなことができます。副業が水面下でひそかに広がっている実情も目にします。

令和の時代は、時代の波に浮かれずに波を乗り切り、その先を行く勢いで自分の人生を作りあげていくことが求められる時代のように思います。

○筆者プロフィール: 佐藤章子(さとうあきこ)
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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