保険の選び方、どう決めるべき? - 生命保険と損害保険の基本を学ぶ

●現代は保険の掛け方を模索する時代
大学を卒業して就職し、がむしゃらに働いて20代を過ごした社会人も、30代に入ると転職や結婚、住宅購入など、人生のさまざまな転機を迎えることになるだろう。そういった意味で、30歳は一つの節目となる年齢といっても過言ではないが、「デキる30代」になるために知っておくべきことは意外と少なくない。

そこで本特集では、ファイナンシャルプランナーの佐藤章子氏に、30代を迎えるまでに最低限知っておきたいテーマの基本を解説してもらう。2回目は「保険の選び方」だ。

○バブル崩壊を境に保険の見直しが進む

高度成長期、日本人は必要以上の多額の生命保険に加入していました。「一億総中流」と言われ、一定のレールの上に乗り、みな同じように進んでいれば安心していられた時代でした。周りが加入していた生命保険の金額を疑いもせず受けて入れており、生命保険の加入金額が周りより低いと自分の価値がその分だけ低いと感じる風潮も見受けられました。

その後にバブルがはじけると、保険の見直しが一大ブームになりました。これは単に日本人が現実に目覚めたというよりは、当時日本に参入し始めていた外資系生命保険会社が、日本人の保険の掛け過ぎに注目し、ファイナンシャルプランニングの手法を駆使して、保険金額の削減とともに自分たちの保険に掛け替えるセールストークを積極的に利用したことが大きいと思われます。

格差社会の到来と言われている昨今では当然、各家庭が持っているリスクに大きな開きが生まれているはずです。一億総中流でなくなった以上、保険の掛け方の定番は消滅し、それぞれの家庭に見合った掛け方を模索しなければならない時代となっています。

●生命保険を詳しく学ぼう
保険は大きく「生命保険」と「損害保険」に分けられます。まずは生命保険について詳しくみていきましょう。

○保険の掛け方の基本的な考え方

生命保険の基本的な考え方

「終身保険」は保険金が必ず支払われる保険です。そのために保険料は高くなります。一方で「定期保険」の保険料は基本的に掛け捨てで、決められた期間に死亡などがなければ、その間の保険料は戻ってきません。保険料はその分、安くなります。子育て中で教育費がかかるなど、保険金を高めに設定しなければならないときに利用される保険です。

保険には積立式などいろいろなタイプがありますが、相続対策などの特殊なケースでない限り、資産形成は預貯金か投資で行い、保険は困ったときのための掛け捨てと考えるのが基本です。

生命保険の保険金額の設定

生命保険の額は、周りのみんなが掛けている額ではなく、簡単に言えば次の3つのStepで計算します。つまり、今後人生で必要となる総支出から、同じく今後得られる総収入を差し引いた結果、万一不測の事態が起きたときに不足する額が必要生命保険額となります。

現在の資産状況や収入は各家庭によって大きな違いがあるため、各々で計算せねばなりませんか極端な例として、夫婦共に公務員であり、今後も共働きを続ける予定であるケースは、片方の収入だけで今後の生活が賄えるために、さして生命保険を掛ける必要がありません。贅沢をしなければ、預貯金などの資産も増えていくはずです。一方、同程度の収入の自由業の夫と専業主婦の妻の家庭では、万一の場合のリスクは格段に大きくなるでしょう。

有事の際に「いつ」「どのくらい」生活資金が不足するかは、生涯収支表(ライフプランニングシート)を作成すると明確に把握することができます。無駄な保険を避けるために、30歳までに一度はライフプランニングシートを作ってください。なお、生命保険会社は、Step2の収入を考慮に入れないか、過小評価して算定しがちということを知っておいてください。

Step1

働き手が死亡や障害を負ったときなどの場合、今後どの程度の生活費(療養費・教育費・老後の生活費などをすべて含む)が必要かを考える

Step2

現在の資産の額(預貯金など)と今後得られる資金(退職金や遺族厚生年金・配偶者の年金、今後働いて得られる配偶者の収入など)の額を算定する

Step3

Step1の額からStep2の額を差し引いた額を必要生命保険料とする

●医療保険はどうしたらよい?
厚生労働省の統計によると、平成28年の平均入院日数は約30日でした。中間値ではなく平均であるということや、家族が入院する可能性も考慮に入れ、平均入院日数の2倍程度を入院する事態を想定しておきましょう。この程度は預貯金で用意できるはずです。日本は医療保険体制が整っています。高額療養費制度もあり、医療保険は不要と考えるファイナンシャルプランナーは少なくありません。

そもそも、入院日数が長期にわたり休職や退職せざるを得なくなり、本当に困ったときに頼りにするのが保険であり、本来はそうした保険が必要なのです。近年の医療保険は、入院初日から給付の対象となるものが多いと思います。「初日からもらえた方が得!」という日本人の志向の結果の商品対応だと思いますが、この考え方には大いに疑問です。保険の基本的考え方は、「本当に困ったときに助けになる」であって、「損か得か」ではないはずなのです。

また、最近ですと高度先進医療専門の保険も発売されました。通常の考え方では用意できない金額や、長期間の医療にどう対処できるかを考えて医療保険を検討すべきと思います。
○損害保険で注意すべきこと

生命保険と対をなす、もう一つの保険の大きな柱である損害保険も簡単に触れておきましょう。主な保険の種類は以下の通りです。

もしもマイホームを取得し、住宅ローンを借り入れれば火災保険は強制加入となります。ローンを返済し終わった際は、忘れずに火災保険を継続しましょう。火災保険にはいくつかのタイプがあり、補償範囲が異なりますので、住まいに見合ったものを選択ください。

地震保険はどうでしょうか。近年は加入率が上昇しているようですが、それでもまだ100%ではありません。日本は今、この瞬間に大きな地震が来てもおかしくない国です。地震によって発生した火災には火災保険は適用されないため、検討の余地はあると思います。

自動車保険はマイカーを持っていれば、自動車損害賠償責任保険のほか、任意保険もほぼ加入しているのではないでしょうか。しかし、最近自転車事故による損害賠償額が数億円になるケースもあるようです。

私は毎日自転車に乗りますが、見ていると交通ルールはほとんど守られていません。一時停止無視、右側走行など毎日危険がいっぱいです。加えて、大きな交通量の多い道路は歩道を通行せざるを得ませんが、歩道にはスマホ歩きの歩行者があふれています。どんなにスピードを落としても、スマホ歩きの歩行者は突然予想外の動きをして、衝突を避けるのに神経を使います。家族が誰もが利用する自転車の事故は人ごとではありません。自転車事故の対策も重要だと認識しておきましょう。

○■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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