「能登半島地震」“インプ稼ぎ”悪質デマに注意、NHKアナウンサー“強い口調”で伝えることの重要性…専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。2024年1月3日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「令和6年能登半島地震に関する動き」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
(※この日はパーソナリティの吉田に代わり、TOKYO FMアナウンサーの手島千尋が代演パーソナリティを担当しました)


手島千尋、塚越健司さん、ユージ



◆トヨタ、能登半島地震で被災地の「通れた道マップ」公開

2024年1月1日(月・祝)に発生した「令和6年能登半島地震」を受け、トヨタ自動車は救援車両などの通行を支援する「通れた道マップ」を公開しました。

手島:塚越さん、この「通れた道マップ」とは、どのようなサービスなのでしょうか?

塚越:「通れた道マップ」(※)は、被災地域で車両が通行できる道を示す地図です。通行止めになってしまっている道などが、現在通れるかどうかを示しています。

(※)「通れた道マップ」とは……? トヨタ社のテレマティクスサービス「T-Connect」搭載車両から収集した情報などをもとに、被災地域で車両が通行できる道を示す地図。過去24時間の道路の通行実績を集計し、災害時に被災地の避難や救援のための移動を支援するもの。

塚越:公開時にはアクセスが集中して使いづらい状況になっていたそうなので、被災地の人や支援に関わる人がアクセスするほうがいいかなと思います。情報が必要な方は、Webで「通れた道」「通れた道マップ」で検索してみてください。

あとは、一般の方がX(旧Twitter)などで「道が塞がれた」などといった災害に関する写真をアップするときがありますよね。そういうときにGoogleマップなどと照らし合わせて位置などを特定し、情報をアップデートしてくださる支援者など、お家でパソコンを使って支援してくださる方々もいらっしゃいます。

◆地震発生から相次ぐSNSでのデマ投稿

塚越:一方で、非常に大切なことだからこそ、デマや画像生成AIによる偽情報などは非常に迷惑です。デマの場合は、悪質なものは逮捕されることがあります。

例えばXでは、自身の投稿のインプレッション(※)に応じて、広告収益が分配されるプログラムがあります。

※インプレッション(imp)……Webのコンテンツ、広告、SNSの投稿などが表示された回数のこと

そのため、今回の地震では、Xの分配金ほしさの“インプレッション稼ぎ”のために、関係のない人の住所を使って「(この場所に閉じ込められているので)助けてください!」などのような投稿をする人がいました。

こうした投稿の被害に遭った人は、無関係な自宅の住所をさらされたうえ、なかには警察から連絡を受けた方もいるそうです。非常に迷惑なのでやめてください。

実際、2016年の熊本地震の際には、「動物園からライオンが逃げた」と嘘の投稿をした人が逮捕されたこともありました。そういうデマやフェイク情報を投稿しないのはもちろんのこと、そのような投稿を目にしても、「良かれと思って」とリポストする前に、(投稿者のプロフィールや過去の投稿などをさかのぼって確認したり)それが正しい情報かどうか注意深く確認して、一呼吸おいてから判断してください。

ちなみに、Yahoo!「災害マップ」では、今回の被災地周辺についてユーザーから投稿された情報などをマッピングしています。ぜひ参考にしてください。

◆「支援物資を送りたい…」被災地の人に迷惑にならない方法は?

手島:岸田文雄首相は1月2日(火)、各省庁に対して、被災地からの要請を待たずに「プッシュ型の支援」をおこなうよう指示しました。塚越さん、この動きはどのようにご覧になりましたか?

塚越:岸田首相は要望を待たずして、食料、ガソリン、毛布などの必要物資を送る「プッシュ型の支援」を実施したということで、いいことなのかなと思います。他方、物資の支援については、とりわけ民間の支援の場合は、被災地とのすれ違いが起こる可能性があるので、すれ違いを起こさない必要があります。

東日本大震災で被災した防災士の佐藤一男さんは、岩手県・陸前高田市の小学校の体育館の避難所で2ヵ月間の避難生活を送った経験をもとに、アドバイスなどをWebに綴っています。それによると、支援はありがたいのですが、いくつか注意が必要とのことです。

そのなかからいくつか挙げますと、「支援物資は1つの箱にいろいろ詰め込まない」。そして、「箱には四方に中身について書いておく」ということです。避難所は狭いので整理整頓する必要があり、1つの箱に1種類のものを詰める必要があるということなんですよね。

ユージ:なるほど!

塚越:あと、千羽鶴は、今は必要ないかなということですね。状況によっては喜ぶ人はいるのですが、(支援物資には)優先順位があるので、今は必要ではありません。

あとは、いらなくなったおもちゃなども、場合によっては現地で焼却処分することにもなります。気持ちは大事ですが、「何を送ればいいのかな?」というときには、一呼吸おいて考えていただければなと思います。

ユージ:避難所はスペースも限られていることですし、かえって、負担になる可能性もありますよね。

◆NHKアナウンス“強い言葉”で伝えることの大切さ

ユージ:「令和6年能登半島地震」に関するSNSの反応、どのようにご覧になっていますか?

塚越:(1月1日の地震発生直後のニュースで)NHKのアナウンサーの方が非常に強い口調で「逃げてください!」とアナウンスしたことが印象に残っている方もいらっしゃると思います。このアナウンスに批判の声も上がりましたが、これは実は非常に重要なことなんです。

NHKは東日本大震災の教訓で、さまざまなアナウンスの方法を訓練しています。特に今回は元日でお酒を飲んで気持ちが緩んでいる方もいたと思います。そういうときに、人は「正常性バイアス」といって、「まあ大丈夫だろう」と思ってしまいます。そこに「異常事態だ!」と伝えるためには、“非日常”な声でアナウンスする必要があるので、あのような強い口調のアナウンスになったんです。ある種、わざと不快な声を出しているということで、Jアラートのサイレン音と同じです。そういったことを理解してほしいということです。

ユージ:テレビを流し見している方たちの耳にも届く言葉や音を考えると、敬語も使わず、大声で「逃げて!」と伝えるほうが届くということですよね。

塚越:そうです。そういう伝え方が必要なんですよね。

◆「ヘリの音が救助を邪魔する」は正しくない!?

塚越:あともう1つは、SNSなどで「ヘリの音がうるさい(から、救助を求めている人の声がかき消されてしまう)」といった投稿がありましたが、これも正確ではありません。

NHKの情報によると、報道のヘリは、救助用ヘリよりも高い所を飛んでいます。カメラの性能も良く、(報道のヘリと救助のヘリは)無線などで情報をやり取りしており、救助を要請する人が見つかれば各所にすぐに連絡・通報するなど、さまざまな連携をとっています。

「報道のヘリが救助の際に邪魔になる」という批判もあったりしますが、今はかなり改善されていますし、(救助隊などとの)連携もとっているということですので、そういった点も覚えていただけるとありがたいかなと思います。

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1月3日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年1月11日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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