タフに見えて実は繊細で甘えん坊な姿にギャップ萌え! 性格の違う2匹の猫との可愛くも悩ましい日常を描いたエッセイ『うちの猫は仲が悪い』

 SNSや動画配信でペット動画を観るのが好きで、動物同士の可愛らしいやりとりに癒されることも多かったため、多頭飼いのペットはどの家庭も仲良く過ごしていると思ってました。しかし、全ての家庭のペット事情がそういう訳ではないということを『うちの猫は仲が悪い』(谷口 菜津子/KADOKAWA)を読んで気付かされます。

 作者である谷口先生が当時交際中だった、いまは夫婦関係である『ひらやすみ』作者・真造先生の愛猫フミと出会うエピソードから始まります。

 以前より真造先生から届くフミの写真を見てその可愛さに早く会いたいと心待ちにしていた谷口先生。

 けれど、実際に会った時の第一印象は「怖え!!!」。

 フミは真造先生が大好きで、それ以外の人物全員を嫌ってメンチを切り威嚇したり避けたりしていました。しかし谷口先生はフミの可愛らしさも知っていて仲良くなりたい一心で努力する姿が描かれています。その努力が実り、2年後には撫でても避けられず舐めてくれる程の信頼を得ています。

 努力の内容は、ご飯やおやつを適度な時に提供し、それ以外はやたら構わず邪魔にならない存在になることを心がけるというもの。この方法は人間関係を構築していく上でも大事なことだなぁと読んでいて感心しました。

 その後の谷口先生とフミのエピソードも描かれており、フミにとっても谷口先生との生活が日常になっていってる様子がうかがえます。

 しかし、谷口先生がようやくフミからの信頼を得た後、事件は起こるのです……。

 ある一家が道で拾った野良の子猫・ウニを引き取ることになった谷口先生と真造先生。しばらくフミと顔を合わせないようにしていたものの、2匹は遭遇してしまいウニを見たフミは大激怒!

 ここからタイトル通りの仲が悪いエピソードが始まっていくのでした……。
 フミが谷口先生と仲良くなるのに2年も要しているんですから、ウニと仲良くするのが大変なのは目に見えてわかりますよね。果たして2匹の仲はこれから深まっていくでしょうか……?

 なんといっても谷口先生が描くフミとウニがとにかく可愛い!! フワフワの感触が画面を通しても伝わり、読んでる間ずっと柔らかい毛玉に触れている様な心地よさと癒しを与えてくれます。

 警戒心や不快感を表す2匹を描く場面も多々あるのですが、そこからもどこか愛嬌を感じられるのは、谷口先生の目を通しての愛情が滲み出ているからでしょう。2匹の姿を状況的に女子高生に擬人化して描いた場面もまた可愛らしいです。

 猫2匹のエピソードだけではなく、後半になるにつれて谷口先生から見た真造先生の姿や彼について思う描写も増えていきます。

 真造先生の闘病中の様子や『ひらやすみ』が売れて忙しくなっていく彼と自分を比較してしまい劣等感に苛まれてしまう姿を包み隠さず描いており、ほんの少しヒリつく様なリアルな質感を感じ取れました。

 全体を通して明るく楽しいエッセイ漫画ではあるものの、こういったリアルな心理を読むとやはり動物同士、そして人間と動物、更に人間同士の関係というのは難しくて複雑だけど奥深さがあると改めて感じさせられます。

 もしこの作品がフィクションだったとしたら、最終回に2匹が最後仲良くなるまでの過程を描いてまとめられていたかもしれませんが、本作はエッセイであり、フミとウニ、真造先生そして谷口先生本人のありのままで自然な様子が描かれています。

 着飾ることのないのんびりした読後感を味わいたい方に是非読んでいただきたい1冊です。

文=ネゴト/ 花

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