異能力×学園ファンタジー漫画『群青のストレンジャー』。見た目は人間…中身は狼、天使、人ならざる“亜人”の正体とは

『群青のストレンジャー』(関口太郎/少年画報社)

 異能力×学園ファンタジー漫画『群青のストレンジャー』(関口太郎/少年画報社)のコミックス第1巻が発売された。

 本作は人智を超えた存在でありながら、人間社会に潜んでマイノリティとして生きていくことを定められた存在“亜人”を描く物語だ。

■人ならざる者“亜人”の異能力バトルが魅力の学園ファンタジー

 亜人とは特殊能力をもつ種族で、一般的な動物や、吸血鬼や天使や悪魔といった伝説の魔物や生物のような属性に分かれている。彼らは「ストレンジャー」訳して“理解されない者”と自分たちを称している。彼らは迫害を恐れ、自身の能力をコントロールし、亜人の中でルールを定めて密やかに生きていたのだ。

 全寮制高校「私立出水学園」は、そんな亜人の子どもたちが集まる場所だ。そこに主人公・沖島周が入学してきたところから物語は始まる。

 周は、亜人の父を含む両親を事故で失った孤独な少年。あるとき犬属性の亜人としての能力が“発現”し、人ならざるパワーに目覚めていた。彼は学園で亜人の能力を理解し、そのコントロールの術を身につけていく。ストーリーの序盤は、周と亜人のクラスメイトとの交流が描かれる。

 亜人は、普通の人間の身体能力や感覚をパワーアップしたような物理的な能力に加えて、魔法のような異能力を身につけている。そのひとつが「イメージの共有」。思ったことを言葉に変換せず、情報を劣化なく伝える力であり、そこにない物質を出現させてみせることや、相手に痛みや精神的ダメージを与えることができ、自分のイメージの世界に引き込むこともできる。なお、彼らが人間から異形へ変身できるのは、この能力を発動させたときに自身の容姿のイメージが漏れ出ているからだ。

 超人的なパワーでの物理的な攻撃よりも、このイメージをぶつけあう戦い「イメージバトル」が本作の大きな魅力だ。

 ただ、彼ら亜人たちの異能力バトルが繰り広げられるのは、学校内だけではない。

■運命と向き合い戦う覚悟を決め、覚醒する主人公

 あるとき、周は学園内で自分の死んだはずの父親を目にする。ただそれは、謎の女亜人が彼を外へ連れ出すためのイメージであった。彼女は「私たちと一緒に来い」と誘うが、自分の親にかかわりがあると聞き周は逆上、一戦を交えた。

 父親に勧められていた亜人専用の学校に何となく入った周は、最初は流されていた。しかし亜人について学び、“ガチのバトル”を経験することで、何を為すべきかを自覚する。ついに運命を受け入れ、戦う覚悟を決めるのだ。1巻の途中での、周の主人公ムーブな成長と覚醒には注目だ。謎の女亜人との会敵から物語は一変、世界の解像度も上がり展開がテンポアップしていくので、置いていかれないよう心してほしい。

 なお迫力あるバトルシーンのポイントは、設定と作画クオリティの高さだ。その画力で美麗に描かれるキャラクターたち、なかでも天使属性のヒロイン・水原愛由未(みずはら あゆみ)が月並みな言い方だが、非常にかわいい。そのツンデレな性格も相まって魅力的だ。

 亜人を主人公にした学園ファンタジーは、多くの不穏な謎をはらみつつ新たな展開をみせていく。亜人は事故程度で死ぬはずがない、周の父は本当に死んでいるのか。彼を誘う学外の謎の亜人たちは何者なのか。彼らはなぜ周を連れていこうとしているのか。学園側も一目置いている周の能力とは?

 ストレンジャーたちの物語は始まったばかり。これからの展開に期待大だ。

文=古林恭

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