累計180万部!からかいメイドと呪われた少年のプラトニックすぎるラブコメ『死神坊ちゃんと黒メイド』TVアニメ最終章放送中

『死神坊ちゃんと黒メイド』(イノウエ/小学館)

※本記事は若干のネタバレを含むことをご了承の上お読みください。

“好き同士なのにお互い指一本触れられない”プラトニックすぎる恋を描いたマンガ『死神坊ちゃんと黒メイド』(イノウエ/小学館)のTVアニメ3期がこの2024年4月からスタートした。

 本作は、「触れたもの全てを死なせてしまう」という呪いをかけられた貴族の少年と、彼に仕えるメイドの少女の切ない恋をコメディタッチで描いた作品。2017年から2022年にかけて連載され、全16巻の累計発行部数は180万部を突破している。2021年にスタートしたTVアニメはこの第3期でいよいよ完結に向かって走り出したところだ。メインキャストの花江夏樹さん、真野あゆみさん、水瀬いのりさんらの楽しい掛け合いもこれで見納め。寂しくなっているファンも多いのではないだろうか。

■お互いに触れられない!死神体質の少年とキュートなメイドのプラトニック・ラブコメ

 物語は、主人公の貴族の少年“坊ちゃん”ことヴィクターが、森の中の別邸でメイドと執事と3人で暮らしているところから始まる。なぜ彼がそんな生活を強いられているのか。それは幼少期に“魔女”に呪いをかけられ、触れたものの命を奪ってしまう“死神体質”になっているからだ。

 彼と暮らすメイドのアリスは坊ちゃんをからかい、誘惑し続ける大胆なキャラクターで、文字通り危険すぎる距離感で仕事中もプライベートでも彼に迫る。

 アリスは呪いを恐れずに坊ちゃんに接近する。彼女の“触れ合わないふれあい”が、家族からも疎まれた孤独な彼の灰色の日常を彩っていた。お互いにまんざらでもない仲良しなふたり。このラブコメ要素は読んでいてほほえましく、楽しい。

 だが、この坊ちゃんは、呪いとアリスに翻弄されるうちに人間的にも成長していく。自虐的だった彼は、呪いに対して真剣に立ち向かうことを決め、さらにアリスへの恋を自覚する。手すら繋げなかった彼女に触れたいと思うようになる。

 誰からも愛されず、誰かを愛することもできなかった死神体質の少年が、自分の運命を切り開いていく様が描かれていく。

■魔女との対決の先にある坊ちゃんとアリスの未来

 紆余曲折を経て、坊ちゃんには多くの仲間ができる。皆の目的は共通していた。それは魔女のシャーデーである。彼女こそ坊ちゃんに死神体質を付与した張本人であり、ほかにもアリスの母親・シャロンが眠り続ける呪いや、人を不老不死にする呪いをかけるなど、凶暴で迷惑な魔女であった。仲間たちは魔法で過去に戻り、坊ちゃんに呪いをかける前の彼女を倒そうとしていた。

 ただ、坊ちゃんの考えは違っていた。彼はシャーデーと和解し、友達になって呪いを解いてもらおうとする「誰も死なない平和的解決」を目指していた。

 物語は、原作コミックス11巻からラストスパートが始まる。魔法学校での修行や、目覚めたシャロンの登場などが描かれ、そこでシャロンの口からシャーデーの過去を聞く。やがて時が来て、坊ちゃんは仲間と共に魔女のいる過去へ向かう。

 坊ちゃんは自分にかけられた呪いを解き、アリスに触れ、これからもずっと一緒にいたいと考えている。自分を死神だと卑下し、悲嘆に暮れていた少年はもういない。彼の決意は揺るがない。しかし、触れ合えないという障壁がなくなったとき、坊ちゃんとアリスの間にはあるシリアスな問題が発生するのだ。

 最初から変わらず坊ちゃんをからかい続けてきたアリスは、間違いなく彼に好意をもっている。呪いで触れられない間も幸せそうだった。ただ、彼女はその問題に対して決断を迫られることになる。

 シリアスな設定ではあっても、笑える掛け合いが魅力のラブコメから、喜びと悲しみが交錯するラブストーリーに物語は展開する。はたして、ふたりの未来は明るいものになるのか。ぜひ16巻を完走して確かめてみてほしい。

文=古林恭

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