60歳以降も、厚生年金に加入して働いたほうがいいのですか?

年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に回答します。今回は、60歳以降、厚生年金に加入して働くメリットについてです。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、60歳以降、厚生年金に加入して働くメリットについてです。

Q:60代以降も厚生年金に加入したほうがいいの?

「現在58歳の会社員女性です。60歳以降も働きたいと思っています。60代以降も厚生年金に加入して働くほうがいいのでしょうか? 今も厚生年金保険料が天引きされて、負担が大きいなと思っています。給与が今と比べて、かなり減った場合、厚生年金にわざわざ加入する意味はあるんでしょうか?」(東京都・一人暮らし)

A:厚生年金に長く加入すると将来受け取る年金が増えます

ご相談者のおっしゃる通り、60代以降も厚生年金に加入して働く場合、給与から厚生年金保険料が天引きされて手取りが減るという側面はありますが、加入することで「将来受け取る年金を増やせる」「受給資格期間の不足を補える」といったメリットもあります。

ここでは「将来受け取る年金を増やせる」根拠について詳しく説明します。

老齢厚生年金額の計算式は、原則として下記のようになっています(生年月日が昭和21年4月2日以降の場合)。

【1】平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数
【2】平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数

●老齢厚生年金額=【1】+【2】の合計額

※「平均標準報酬額」とは、平成15年4月以後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額となります。

60歳以降も働き続ける場合は【2】の計算式に影響があることになります。具体的には、「平均標準報酬額」と「平成15年4月以後の被保険者期間の月数」が変動すると、老齢厚生年金額に影響があることがわかります。

【2】の影響額は人それぞれ異なりますので、今までの「平均標準報酬額」と「平成15年4月以後の被保険者期間の月数」をねんきん定期便やねんきんネットなどで確認してみましょう。

これから働き続けた場合、計算式の金額にどのような影響があるのかも試算してみましょう。ねんきんネットでは受給見込額の試算をすることもできます。

厚生年金は加入期間が長くなるほど、【2】の計算式の月数が増えるので、将来受け取れる年金額が多くなるということがわかると思います。

ただし、60歳以降も会社員で働く場合、年金以外にも、健康保険料等の負担などもありますので、将来資金計画を立てながら、慎重に検討されるといいでしょう。

厚生年金への加入は、会社員として適用事業所で働く場合には、一定の要件のもとに強制的に加入しなければなりませんので、念のため申し添えます。

文:坂口 猛(ファイナンシャルプランナー)

税務大学校を卒業後、税理士事務所にて約7年間勤務。大手上場企業等で、財務・会計・税務に従事した後、独立。税金・相続・会計に強い実務派FPとして活躍中。相談業務や、執筆活動をおこなっている。
(文:坂口 猛(ファイナンシャルプランナー))

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