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医学的に「正しい入浴法」とは? お風呂で疲労回復するためのコツ

疲労回復のためにお風呂に入ることも、多くの方の習慣になっているでしょう。温泉療法専門医が効果的な入浴のコツをお伝えします

なぜお風呂で疲労回復ができるのか?

疲労回復の強力なツールは「お風呂」です。最近は、若い世代を中心にシャワーだけ、という人も増えているようですが、それでも7~8割の人は毎日お風呂に入っているという報告もあります。それだけ日本人に根付いた生活習慣と言えるでしょう。

イメージしてみてください。バスタブにたっぷり張った温かいお湯にどっぷりとつかる、そしてお風呂上がりのさっぱりとした爽快感、誰もが幸せを感じる瞬間です。このように気持ちの面でも癒されますが、体に及ぼす作用も様々あります。医学ではその効果を下記の5つに分けて考えています。

□温熱作用
□静水圧作用
□浮力作用
□粘性、抵抗性作用
□清浄作用

ここでは、特に温熱作用がどのように疲労回復につながるのかを見ていきましょう。

温められることで血管が拡がる

温かいお湯につかると、皮膚表面付近の温度が上昇します。お湯に触れているのは皮膚だけですが、皮膚にも多くの血流があり、そこから熱が伝わって血液が温められます。こうして温められた血液はとどまることなく、あっという間に全身を駆け巡ります。これが温熱作用の効果です。

研究の条件、個人差によって違いはありますが、40℃前後のお湯に10~15分ほどつかることで、体温は約1℃上がります。この場合、皮膚表面の温度だけでなく「深部体温」と言われる体の中心部分の温度も上昇します。

お風呂で血行が良くなるといった話は、既に聞いたことがあるでしょう。例えば、足湯につかった足などでも、皮膚が赤くなり、ほてりが見られます。これはお湯の温熱によって血液循環が良くなっている状態です。

「血液の循環が良くなる」ってどういうこと?

血液の循環が良くなるということは、医学的にはどういう状態を指すのでしょうか? そのしくみは、少し複雑な作用によって起こっていることが分かってきました。

お風呂の温熱は神経を刺激し、血管内皮細胞という血管の内側にある細胞から一酸化窒素(NO)を産生させます。この一酸化窒素には血管を強力に拡張させる作用があり、血管が拡がることで多くの血液が流れます。そして結果的に、心臓から全身に送り出される血液量も増えることになるのです。以上のような作用から、温熱によって血管は拡がり、血液循環が非常に良くなります。

ここで本日のテーマである疲労に話が戻りますが、そもそも疲労はなぜ起こるのでしょうか? その定義は難しく、1つの事柄だけで説明できるものではないでしょう。

しかし、全身の細胞はその活動のために酸素と栄養分が必要だということは確かです。また細胞が活動をし終えると、二酸化炭素と老廃物が残ります。疲労回復には全身に酸素と栄養分が必要で、また逆に、不要となった二酸化炭素や老廃物を排出することが重要です。このような理由を考えると、この疲労回復に重要なのは血液循環であることがお分かりいただけると思います。

血液は動脈で豊富な酸素と栄養分を運び、末梢で不要となった二酸化炭素や老廃物を静脈血として運び去ります。血液循環を増やすということはそれだけ疲労回復につながる、ということです。

温熱作用を利用して、お風呂で疲労回復をするコツ

それでは、実際にはどのように入浴することが疲労回復に繋がるのでしょうか。

まず、一番大切なことは「湯船につかる」ことです。最近はシャワーだけで済ませてしまう人が多くなっているようですが、それでは体温が十分に上がらないことが分かっています。つまり、シャワーではお風呂の温熱作用による疲労回復効果は得られないということです。

湯船に入る時のポイントは3点です。1つ目はお湯の温度、2つ目はお湯につかる時間、3つ目はお湯の水位です。

疲労回復を目的とした場合、十分な体温の上昇を意識します。具体的に言うと約1℃の体温上昇を目指します。この体温上昇を達成するためには、1つの目安として温度は40℃、湯につかる時間は15分間、水位はお湯に肩までつかる全身浴です。体温が1℃上がると顔や額が汗ばんでくるので、これを目安としてもかまいません。

さらに、入浴後は素早くタオルで体を拭き、体が温まっているうちに毛布などにくるまって横になり、安静を保つことがポイントです。このことで体温が高い状態が保たれ、より温熱作用による疲労回復効果を享受することができます。この時、少し部屋を薄暗くして静寂を保つとリラックス効果もあります。このお風呂上りに毛布にくるまって安静にする時間は、なんとも言えない心地よさがありますので、ぜひ試してみてください。

ただし、心臓や呼吸器に病気のある人は入浴そのものが負担になることがあるので、主治医に確認するとよいでしょう。

お風呂を上手に使って、これまで以上に効果を実感できる疲労回復を目指してみてください。(文:早坂 信哉)