【漫画】「食いもの」から愛の告白 ウサギの熱烈なアプローチに「言葉が刺さる」『けがわとなかみ』【作者インタビュー】

一途なウサギの言葉が心に沁みる

ウサギからの愛の告白に戸惑うキツネ (C)類家 海/新潮社

ウサギからの愛の告白に戸惑うキツネ (C)類家 海/新潮社

 ある冬の日、キツネは森の中でウサギを見つけました。食べてやろう、と近づくと、「食いもの」であるはずのウサギから告白されます。唐突な告白にキツネが困惑するなか、ウサギは、なお「好きです」と愛を伝えてきて…。種族を超えた愛の物語にじんわり心が温まる作品です。

 類家 海さん(@hebitozou0821)によるマンガ『けがわとなかみ』の単行本第1巻が2024年3月8日に発売されました。

 当時の投稿には、12万を超えるいいねが付いており、読者からは「心が潤いました」「純粋な好意ってこういうことなのか」「綺麗で儚い物語が素敵」などの声があがっています。

 類家さんは、幼少期から絵を描くのが好きでしたが、色付けや、1枚絵では言いたいことが全部伝えられないと気付き、本格的にマンガを描くようになったそうです。

 過去の取材で、類家さんは本作について「本当は描くつもりはありませんでした。」と語っています。しかし、大学の先生に背中を押されたことで、自分の意見を好きなマンガで表現することに挑戦しようと思ったのがきっかけで『けがわとなかみ』が生み出されました。

 個性を与えすぎず何の変哲もない、キツネとウサギのなかの1匹として描かれていることで、多くの読者の心に刺さり、「救われた」という声もあがっています。

 今回は、作品の詳細について『けがわとなかみ』の編集担当者さんにお話を聞きました。

ーー「くらげバンチ」で連載が始まったきっかけを教えて下さい。

 類家海さんが2022年12月にX(旧:Twitter)で「自分を食べようとするきつねに恋したうさぎの話」というタイトルで投稿した作品を拝見してオファーしました。読んだときの衝撃はいまだに忘れられません。絶対この方に描いて欲しい!と思いました。

 投稿作品は1話で完結していましたが、より関係性がしっかり見られる連載をご執筆いただけないかとご依頼しました。ぜひ、連載版の1話もご覧になってください。

2024年3月8日に発売された『けがわとなかみ』第1巻 著:類家 海(新潮社)

ーー『けがわとなかみ』の見どころを教えて下さい。

「食うもの」と「食われるもの」という関係性でありながら、共に生きようとしているところです。

 1話では、うさぎさんが熱狂的にきつねさんを追いかけ、きつねさんは戸惑いながら逃げるばかりですが、2匹でいろいろな困難を乗り越えていく過程で関係性が変化し、お互いがお互い「じゃないと」という気持ちになっていきます。その関係性のグラデーションや、きつねさんの考え方が変わっていく様子などを楽しんでいただけると思います。

 動物がたくさん出てくる作品ではありますが、それぞれが考えていることや悩みなど、思わず「分かる!」というものばかりです。連載開始時の著者コメントで類家さんが「描いた当時の自分に必要だった言葉を並べた」と書かれていましたが、まさにうさぎさんの言葉に救われることが多く、読んでいて自然と自己肯定感を上げてもらえているなと思うことが多いです。

 また、緻密で素敵な背景も見てほしいです! 1枚として同じ背景は出てこないですし、お花がたくさん集まっているシーンも1本1本丁寧に描かれています。

ーータイトル『けがわとなかみ』にはどんな意味が込められているのでしょうか?

 タイトルは、類家さんがXにポストした作品の時点で『けがわとなかみ』でした。この作品の本質を表しているタイトルだと感じたので、連載版でもそのままいかせてもらいました。どんな意味が込められているかは、類家さんが今後発表されるかもしれません。

(マグミクス編集部)

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