『ウルトラマンレオ』シリーズ史上初のOP曲変更の謎 子は泣き、親は困った!

OPの衝撃が大きかった第1話「何かの予言が当たるとき」

主題歌はもちろん、BGM、効果音などを収録した3枚組CDボックス「ウルトラマンレオ 45th ANNIVERSARY MUSIC COLLECTION」(日本コロムビア) (C)円谷プロ

主題歌はもちろん、BGM、効果音などを収録した3枚組CDボックス「ウルトラマンレオ 45th ANNIVERSARY MUSIC COLLECTION」(日本コロムビア) (C)円谷プロ

 1974年4月にスタートした『ウルトラマンレオ』が、2024年で50周年を迎えました。『レオ』はウルトラマンシリーズで初めて「OP曲を途中で変更した」という事実をご存じでしょうか? 昭和シリーズの『ウルトラマン』から『ウルトラマンタロウ』まで、OPはひとつの作品に1曲だけで、途中での変更はありませんでした。なぜ『レオ』だけ、番組の顔ともいえるOPを変えたのでしょう?

 とにかく第1話のOPはショッキングでした。画面にサブタイトル「セブンが死ぬ時!東京は沈没する!」が出ます。まず「セブンが死ぬ!?」というワードに驚かされ、と同時に、タイトルと同名の主題歌「ウルトラマンレオ」の低音から始まるイントロが流れます。しかも歌詞は「♪突然あらしがまきおこり~」、そして「♪何かの予言があたる時、何かが終わりを告げる時」と不安にあおられ、大波が都会のビル群を破壊する映像が流れます。初回のインパクトは絶大でした。

 それから約3か月が経過した、第14話で変化があります。突然OP曲が変わったのです。曲は「戦え! ウルトラマンレオ」。「♪レオー! ウルトラマン!」「へいわをこわすてきは このてでたたきふせる」といった王道ヒーローの歌詞です。あくまで一説ですが、元々はこの曲がOPだった、ともいわれています。

OP変更によって、子は泣き、親は困った?

真夏竜、ヒデタ樹が歌う5曲を収録したCD「ウルトラマンレオ」(日本コロムビア) (C)円谷プロ

真夏竜、ヒデタ樹が歌う5曲を収録したCD「ウルトラマンレオ」(日本コロムビア) (C)円谷プロ

 子供たちに定着した歌を変更するのは、勇気がいることです。その理由は明らかにされていませんが、放送開始後の「視聴率の伸び悩み」が背景にあったのではないかと考えられます。

 第1話から分かるように1974年当時は、五島勉氏の著書『ノストラダムスの大予言』、小松左京氏の小説で映画化もされた『日本沈没』などの人気で、人類滅亡、天変地異といったオカルトがブームでした。それに合わせてOP曲は、最初に決まっていた「戦え!ウルトラマンレオ」から「ウルトラマンレオ」に変更し、なおかつ「♪何かの予言が当たるとき」という不吉なワードが入った2番の歌詞を用いました。

 初回の番組視聴率は17.6%と上々。しかしこれを最高に下降し、第9話で12%に落ちます。当時、シリーズとしては低い数字でした。要因はいくつか考えられます。

『レオ』は、前作『タロウ』の明るい雰囲気から一転してハードでした。MAC隊長の「モロボシ・ダン」は、レオこと主人公「おゝとり(おおとり)ゲン」をスパルタで鍛えますが、当時流行っていた「スポ根」のイメージを超えて「しごき」のようで、「ゲンがかわいそう」、「ダン隊長が怖い」と子供たちにいわれてしまいました。番組は、このダンとゲンの師弟ドラマに焦点を当てたのですが、ハード過ぎたのかもしれません。

 レオは拳法を駆使して敵を倒しました。これも当時流行っていた「ブルース・リー」のカンフーを取り入れた要素でした。レオには「レオキック」という必殺技がありましたが、仮面ライダーの「ライダーキック」とかぶって新鮮味がなく、子供たちのごっこ遊びの盛り上がりにも欠けました。やはり定番の光線技は必要だったように思います。

 このように、『レオ』は流行をふんだんに取り入れ、ニュータイプのウルトラ戦士として挑んだのですが、子供たちにうまくハマらなかったため、早急に視聴率を上げるテコ入れ策を講じることになります。ただ、撮影を終えた内容の変更は難しいので、まず番組冒頭からイメージを変えるために、明るい曲調の「戦え!ウルトラマンレオ!」に変更したのではないでしょうか。

●子供たちにとっての大問題!

 当時の思い出と、子供の事情を振り返ってみます。OP曲が変わった後、子供たちの間で意外な問題が浮上しました。「レコード問題」です。最初のOP「ウルトラマンレオ」のEPレコードを購入すると、(※いろいろなタイプがありましたが)挿入歌の「MACのマーチ」や「星空のバラード」が収録されていたとしても、当然「戦え!ウルトラマンレオ」は挿入されていません。子供は新しいものを欲しがりますから、「戦え!――」のレコードを買ってくれと親にせがみます。親は大変だったでしょう。

 一方、筆者は遅れて「戦え!――」のEPレコードを買ってもらいました。しかもそれには「ウルトラマンレオ」も収録されているのです。「両方あってラッキー!」と喜びました。しかし、針を乗せてみると思わぬトラップが……「あれ? TVと違う」。TVの「ウルトラマンレオ」はおおとりゲン役の真夏竜さんが歌っていて、私はあの歌声が好きだったのですが、レコードはボニー・ジャックスさんが歌うバージョンでした。それどころか、「戦え!――」も、ヒデタ樹さんが歌うTV版ではなく、同じくボニージャックスさんが歌ったもので、カップリングの曲も全部そうでした。TVと音源が違うので、友達から「なんか変」と言われてしまいました。似た体験をした人は、そこそこいたと思います。

 もちろんTV音源の、ヒデタ樹さん版「戦え!――」レコードも発売されていました。しかし、当時は特撮ヒーローのレコードを各レコード会社が独自で作り、また別のヒーローの曲と抱き合わせた商品もあるなど多様で、そのなかには音源がTVと違うタイプもあったりしたのです。ちなみに「戦え!ウルトラマンレオ」は子門真人さんバージョンのレコードもありました。私は、TV音源と異なっても味わい深くてよく聴いたものですが……。

●視聴率はあまり変わらず……

 話を視聴率に戻すと、OP曲を変えた効力はいかほどか分かりませんが、結局、視聴率は思ったほど伸びませんでした。ニューヒーローの弟「アストラ」との兄弟共演や、新キャラ「ウルトラマンキング」なども作り、光線技もくり出しましたが、日本を襲ったオイルショックというリアルな強敵の影響で、制作費が削減されます。出演者が徐々に減り、敵の着ぐるみのクオリティーも低くなるなどしてチープ感が漂ったこともあったでしょう。『レオ』は紆余曲折ありながら全51回で終了します。ただし、後年になってマニアから『レオ』の作品性が「大人向け・玄人向けだった」という声が聞かれ、リバイバル的な人気を得ているようです。

※記事タイトル、本文を一部修正しました(4月30日17時42分)

(玉城夏)

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