シェルター回も完璧なつじつま合わせ!『北斗の拳 ドラマ撮影伝』の鋭すぎるツッコミ

アドリブだらけの現場で生み出される『北斗の拳』名シーンたち

次々に原作マンガの矛盾を突いていく『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』4巻(コアミックス)

次々に原作マンガの矛盾を突いていく『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』4巻(コアミックス)

 2021年からWebマンガサービス「ゼノン編集部」で連載中のマンガ『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』は、原作『北斗の拳』のファンを中心に大きな話題となっています。

 同作は「マンガ『北斗の拳』の内容すべてが1983年から制作された実写のドラマだったら」という想定で、昭和のドラマ撮影現場を舞台にした物語です。CGがまったく使われていない現場で、特撮スタッフや監督、俳優陣が知恵や体当たり演技、無茶ぶりの果てに『北斗の拳』を撮影していく様は、原作ファンならクスっと笑ってしまうでしょう。そして、原作のツッコミどころをしっかりドラマ撮影ならではのエピソードに落とし込んでいるのも、面白い点です。

 例えば、コミックス1巻の第6話「ケンVSハートを撮れ!!」で吹き出してしまいました。この話ではタイトルの通り、ケンシロウが巨漢の敵キャラ、ハートとの戦いを撮影するエピソードが描かれています。

 ハートを演じる柳乃海虎雄は、元力士で稽古でしごかれた際の痛みに対して恐怖心を抱いており、ケンシロウとの戦いの撮影がうまく進められずにいました。しかし、秘孔を突かれた後に血しぶきをあげて爆発する演出のために作られた、「ハートにそっくりな人形」を柳乃海が自ら着込むことで、人形の厚みから痛みを感じなくなり、無事に撮影が進みます。

 この展開だけでも面白いのに、最後に柳乃海がハートの人形を着込んだまま爆発させられる姿は、まるで『天才・たけしの元気が出るテレビ?』を見ているようなハチャメチャぶりです。その場のノリで爆発させられることになった柳乃海が「ひでえ」と言いかけるも、爆発と重なって「ひでぶ」と叫んでしまうシーンは何度見ても笑ってしまいます。

 また、コミックス4巻に掲載されている第40話「衝撃のシェルター回!!」では、原作でも議論されている「避難シェルターはどうにかすれば、トキふくめ全員入れたのでは?」という問題にメスを入れました。

 原作では核戦争が起きた直後、ケンシロウ、ユリア、トキの3人が避難シェルターに入ろうとするも、なかは子供が大勢入っており、保護者らしき女性に「どうつめてもふたりまでです」と言われ、トキが咄嗟にケンシロウとユリアをシェルターに押し込み、外から扉を閉めるシーンが有名です。

 このシーンで、原作の読者は昔から「大人が子供を何人か抱っこすれば入れるだろ」と大いにツッコんだものでした。

 同作では避難シェルターが子供でいっぱいになった理由として、幼稚園の子供たちが園長先生とともに特撮ヒーローを見学しに来るものの、間違えて『北斗の拳』の撮影現場に来てしまったというトラブルが描かれます。

 さらに2~3人エキストラとして子供に出演依頼をしたところ、全員が出演したいと、勝手にシェルターに入って出てこなくなりました。子供を抱っこしようにも、ケンシロウもユリアも子供に拒否されたため、問題のシーンが出来上がったというわけです。

 ちなみに第45話「広がる反応、止まらぬ人気!!」では、ドラマのオンエアを見た人たちが「抱っこしろよ!!!」と原作ファンのようにツッコんでいます。

 さらに、最新5巻に掲載されている第47話「ラオウ島田、クランクイン!!」では、ケンシロウとラオウが伝承候補者時代にトラを相手に対照的な対応を見せたシーンの撮影で、本物のトラを連れてくるハチャメチャエピソードが描かれます。さらに第51話「端役の世紀末的情熱!!」では、ザコキャラのなかでも存在感抜群だった「でかいババァ」の誕生秘話も語られるなど、原作ファンも大喜びの内容が次々に描かれていました。

 その他、シンがパンツ一丁になっていた理由や、役者の暴走の果てにジャギのヘルメット設定が生まれる経緯、ラオウの愛馬の黒王号がデカすぎる理由など、笑いつつ納得できる撮影エピソードが描かれており、SNS上では「発想の勝利というしかない最高のスピンオフ」「原作のツッコミどころにはきっちりツッコミ入れつつ、細かく軌道修正してるの原作愛が良く伝わる」「新作アニメとドラマ伝の実写ドラマの2本を1時間枠でやってほしい」など、賞賛や映像化を希望する声も多くあがっていました。

 数ある『北斗の拳』のスピンオフマンガのなかでも、『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』ほど物語の矛盾に鋭くツッコんでくれる作品は貴重です。読んだらまた原作本編も読みたくなる秀逸なスピンオフとして、ぜひ完結まで「撮影」しきってほしいところです。

(LUIS FIELD)

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