平均寿命と健康寿命の差は約10年! 80代まで制限されることなく日常生活を送る秘訣
初秋は季節の変わり目で、気温の変化によって自律神経が乱れて体調を崩しやすくなることがあります。免疫力や抵抗力が低下するため、風邪を引きやすい時期です。病気にかからずに健康を維持するためには、自分の力で病を治し、癒す力である「自然治癒力」が大きく影響します。自然治癒力を強くして、健やかで心豊かに長生きするための方法を、医学博士の飯沼一茂氏が紹介します。
※本記事は、飯沼一茂:著『免疫アップの最強セットリスト -自分で選ぶ健康寿命の延ばし方-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
長寿を追求するだけではなくなった現代日本
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいいます。一般的な言葉でいえば「健康な状態で過ごすことができる年数」を指します。寿命全体を考えたときに、体や精神が健康であり、日常の活動を自由に楽しむことができる期間ということです。
健康寿命を意識することは、長寿を追求するだけでなく、その長い人生を健康で満ち足りたものにするために重要な要素です。健康寿命を延ばすことは、個人の幸福感と生活の質を向上させ、社会全体にもポジティブな影響を与えることができます。
厚生労働省によると、2019年における我が国の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳であり、健康寿命とはそれぞれ約9年、約12年の差があります。(男性の健康寿命は72.68歳、女性の健康寿命は75.38歳)
国民一人ひとりが健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、社会保障制度を持続可能なものとするためには、平均寿命を上回る健康寿命の延伸を実現することが必要です。ちなみに平均寿命とは「0歳における平均余命」のことです。
ヒトを健康にする「自然治癒力」を支える3つの柱
どんなに医学が進歩しようとも、絶対に変わらない原則があります。それは、自然治癒力こそが、ヒトを健康にする最高のパワーだということです。自然治癒力とは「自分の力で病を癒やし、治す自然の力」のことです。
自然治癒力を支える3つの柱とは、1.神経・自律神経系、2.ホルモン系、そして3.免
疫系です。3つのシステム(系)は、それぞれバランスを取りながら、互いに連携しながら自然治癒力に影響を与えているのです。
神経・自律神経系は、全身にはりめぐらされた「情報ネットワーク」のようなもので
す。高性能のセンサーで情報をキャッチし、通信網を通じて脳などの情報処理中枢に伝達します。
特に自律神経系は、24時間無休、「完全自動処理」で生きるために必要な判断をおこなっています。
ホルモン系は、自律神経系とは違う手段で全身を制御しています。さまざまな器官で
ホルモンを作り、血管を通じて全身に送ります。そのホルモンには「こうしてほしい」というメッセージが込められていて、受け取った器官はそれに応じます。
免疫系については、後に詳しく取り上げますが、身を守るために、想像を絶する高等
なシステムを作り上げています。
いずれのシステムもキーになるのはバランスです。自律神経は交感神経と副交感神経のバランス、ホルモンは体中のホルモンバランス、そして、免疫は攻撃をする免疫と制御する免疫のバランス、あるいは自然免疫と獲得免疫のバランスです。
自然治癒力の三本柱である神経・自律神経系、ホルモン系、免疫系は、ストレスや生活習慣の乱れなど、さまざまな理由により崩れることがあります。すると健康問題を引き起こす可能性が上がるのです。
例えば、「体の冷え」は自然治癒力のバランスが崩れた結果として現れることがあります。すると、体が冷えることで、血流が悪化し、免疫力が低下するため、感染症やアレルギー症状などが引き起こされることがあります。
また、慢性炎症も、自然治癒力のバランスが崩れた結果として引き起こされることがあります。炎症が長期間続くことで、体の免疫システムが過剰反応し、健康な組織や細胞を攻撃することがあるのです。これは、自己免疫疾患や炎症性疾患などの病気を引き起こす原因になります。
免疫の「6大機能」で感染症から体を守る
では、自然治癒力のなかでも、特に焦点を当てたい免疫について、詳しく説明していきます。免疫は体内で感染症や異物から体を守るための重要な生理学的機能を担っています。
免疫の主な役割と機能には、以下のようなものがあります。
〈1〉感染症への防御
免疫システムは、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫などの、病原体から体を守る役割を果たします。これらの病原体が侵入すると、免疫応答が起こり、感染を制御しようとします。
〈2〉異物排除
免疫システムは、異物や毒素を体内から排除する役割も担います。例えば、切り傷や擦り傷から感染しないように、傷口を清潔に保ち、異物を排除しようとします。
〈3〉自己対非自己の識別
自己(自分自身)とは、あなたの体内に本来存在している細胞や組織です。例えば、肌・筋肉・臓器などが自己です。免疫システムは自己を保護し、これらの細胞や組織に攻撃を仕掛けません。
一方、非自己(他人や異物)とは、あなたの体内には通常存在しないもので、感染症の原因となる細菌・ウイルス・真菌などの病原体や、移植された他人の組織などが含まれます。免疫システムは非自己を識別し、異物や病原体を攻撃して排除しようとします。これによって体を感染症や疾患から守ります。
免疫システムは、自分自身の細胞と非自己の細胞や異物を識別することができます。これにより、自己免疫疾患を防ぎ、体内の健康な細胞を攻撃しないようになっています。
正しく機能することで健康を維持しているのですが、時折、免疫システムが誤って自己を攻撃する、自己免疫疾患が発生することがあります。これは自己と非自己の識別がうまくいかない状態で、免疫システムが誤って自己の組織を攻撃してしまう病気です。例として、リウマチ性関節炎や全身性エリテマトーデス(SLE)などがあります。
〈4〉免疫記憶
免疫システムは、過去に遭遇した病原体に対する記憶(免疫記憶)を保持します。これにより、同じ病原体が再び侵入した場合、より迅速かつ効率的な免疫応答がおこなわれ、感染を効果的に制御できます。これがワクチンの基本原理のひとつです。
〈5〉炎症の調節
免疫システムは、炎症を引き起こすことで感染症や損傷に対抗します。炎症は免疫細胞を感染現場に誘引し、病原体を排除し、損傷した組織の修復を促します。しかし、過度な炎症は疾患や組織の損傷を引き起こすことがあり、免疫システムは適切に調節する必要があります。
〈6〉免疫システムの制御
過剰な免疫が働かないように制御する機能で、免疫のバランスを維持するために重要です。この制御する機能が低下すると、過剰な免疫応答や過剰な炎症が誘発され、免疫バランスが崩壊してしまいます。
このように免疫システムは非常に複雑で多様な機能を持っており、体内の健康を維持するために欠かせない役割を果たしているのです。
09/15 12:00
WANI BOOKS NewsCrunch