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脱税減らすため「1万円札を廃止せよ」ロゴフ教授の主張…本当にやったらどうなる?

写真はイメージです

「日本は1万円札を廃止せよ」。米ハーバード大のケネス・ロゴフ教授による、こんな刺激的なタイトルの論考が、日本経済新聞(8月1日付)に掲載された。

ロゴフ教授は、高額紙幣の廃止によって、脱税やマネーロンダリングなどの犯罪が減少し、電子決済の普及にもつながるという。

ロゴフ教授によると、日本の通貨流通量は、GDP比で約20%と世界的に見て高水準であるという。さらに、現金流通量のうち、1万円札が90%にものぼることから、「高額紙幣の多くが非合法な経済活動で使われているのではないか」と指摘している。

ロゴフ教授が指摘するように、高額紙幣を廃止して、現金取引を電子決済などに置き換えれば、脱税は減少することにつながるのか。柴田篤税理士に聞いた。

●インドは高額紙幣の廃止で大混乱に

バブル経済真っ只中、1980年代後半に「マルサの女」という映画がヒットしました。私は日比谷の映画館で見たのですが、リクルート事件で騒がれた政治家も見にきていました。「政治家も、泣く子も黙るマルサが怖いんだな」と思いました。売上除外、架空取引で高額紙幣をいろいろなところに隠しているのを、マルサの女が見つけて行く痛快な物語でした。確かに親が隠していた高額紙幣を、子どもが無申告のままそのまま相続しているケースもあるようです。

2016年11月、インドは急に500ルピーと1,000ルピーの高額紙幣の廃止を発表し、大混乱に陥りました。汚職やテロ資金、脱税の撲滅を狙ったようですが、思ったような効果は上がらなかったようです。お金が一国内流通で完結せず、事前に情報をキャッチし、他通貨に変換され国境を越えて流れていくケースもあったようで、当局の追及も限界があったようです。

また各国中央銀行は紙幣の流通量を増やして経済を刺激しています。高額紙幣が表舞台から消えると金融政策の効果が半減する可能性があります。同時に最近はデジタル通貨決済が増えてきており、同じく金融政策の効果を減じますので、英国、オランダのみならず日本政府もデジタル通貨に法的な裏付けを与え、金融政策の効力を堅持しようと、研究を開始しました(2017年9月8日、日本経済新聞)。

ロゴフ教授の言われるように高額紙幣を廃止して、現金取引を法定デジタル通貨決済などに置き換えれば、一国内の脱税は減少するかもしれませんが、クロスボーダー取引で法定デジタル通貨の流通が国境を越えると、新たな問題が起きてきます。

偽札以上に、法定デジタル通貨の偽造は巧妙で、なかなか難しい問題を含んでいます。私は法定デジタル通貨が金の裏付けを得て、金本位デジタル法定通貨にならないと、世界経済は混乱するのではないか、と思っています。

【取材協力税理士】

柴田 篤 (しばた・あつし)税理士

貿易通商・物流を中心とする国際税務会計事務所。貿易、国際税務会計・国内税務、国際投資国際法務、IT IoTの4部門からなり、システムエンジニアを3名抱える。

事務所名   :TradeTax国際税務会計事務所(東京・大阪・バンコク・欧米提携事務所)

事務所URL:http://www.japan-jil.com/

(弁護士ドットコムニュース)