保護犬譲渡会のはずが…違和感を描いた実体験漫画に6万人驚愕 「猫でも似た話が」

漫画のワンシーン【画像提供:安達さと(@Sato_adachi)さん】

漫画のワンシーン【画像提供:安達さと(@Sato_adachi)さん】

 テレビ番組やニュースの影響もあり、保護された動物と里親希望者が対面する「譲渡会」が年々盛んになっています。動物の命が一つでも多く救われるための大切な機会ですが、参加者が運営方法に疑問を抱いてしまうものもあるようです。参加したものの、違和感を覚えずにはいられなかった保護犬の譲渡会。その様子を描いた漫画がツイッター上で6万件超の“いいね”を集める大反響を呼んでいます。作者の安達さと(@Sato_adachi)さんにお話を伺いました。

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違和感だらけの保護犬譲渡会 一時はお迎えを考えるも…

 江戸最大の遊郭・吉原を舞台にした漫画「あおのたつき」(コアミックス刊)の著作で知られる漫画家の安達さん。愛犬家でもあり、一緒に暮らす元保護犬「とと」ちゃんのかわいい動画や写真などをツイッターアカウントで日々公開しています。

 そんな安達さんの漫画作品で先日大きな反響を呼んだのは、家族で参加した保護犬の譲渡会に関するエピソードです。

 ある日、安達さん一家はある保護犬の譲渡会に足を運びました。安達さんは参加にあたって「衝動的にお迎えすることがないように……」と冷静さの維持に努めましたが、ある犬と運命の出会いを果たします。

 一般的な譲渡会では、譲渡希望後に面談や書類審査などがあり、それをクリアするとトライアルとして一時的な同居期間が設けられます。そこで相性に問題がなければ、譲渡前にかかった医療費を支払って正式な譲渡が成立するという流れが多いようです。

 それがこの譲渡会では、スタッフさんの説明内容など、主催団体の運営態度に違和感を覚える場面がありました。また、審査の申し込みにあたって伝えられた諸費用には寄付金などが必須。また、任意の指定フード定期購入などが審査に加味されるというシステムでした。

 安達さんは先住犬のととちゃんを保健所から引き取っていたため、その時の丁寧な説明とも比較。そこで不明点をブリーダーに尋ねたいと思いましたが、肝心の連絡先が非開示になっていました。そうして、団体の運営態度に対する違和感だけでなく、不透明性にも疑問を感じていたところ、団体から1本の“確認”電話が。その内容に安達さんが出した答えとは……?

 この作品と関連するコラムが全4回の投稿で公開されると、合計で6万件超の“いいね”を集めました。リプライ(返信)には「そんな譲渡会や団体が存在するとは驚きです」「第2のペットショップ化している団体もいるんですよね」「譲渡会のすべてが悪徳ではないです。マイナスイメージが先行しませんように」「猫ちゃんでも似た話を目にしました」など、さまざまな反応が。

 また、「大事なことを分かりやすく伝えてくださりありがとうございます」といった安達さんの情報発信に感謝するコメントも寄せられています。

 関連するコラムでは、ダックスブリーダーのMさんに聞いた譲渡会の疑問を紹介しています。それによると、安達さんが体験したケースは令和元年6月19日に交付された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」(改正動物愛護管理法)が関係していると考えられるそう。この法律は令和2年6月1日から3段階で施行されるもので、今年の6月1日に施行されるマイクロチップの装着義務などに関する部分が最後になります。

 さらに、安達さんはアイエス動物病院・院長東一平先生(@JqNsQ9wkKg5xwFm)の「昨今の譲渡事業への問題提起」、ハナ動物病院・太田快作院長の「本当の殺処分を減らしていくために」、ドッグトレーナー・有動敦胡さん(@atsukoudo)の「保護犬について」といったコラムも作品内で紹介。さまざまな角度から動物の命や譲渡事業について考えられる内容になっています。

「肝心の動物に目が向けられていないと感じてしまいました」

 作者の安達さんに、譲渡会の会場の雰囲気や参加して抱いたイベントへの感想など、詳しいお話を伺いました。

Q. 譲渡会の会場はどのような雰囲気でしたか?
「予約制でしたが、参加の枠が空いていたので飛び入りでも見学できました。それがいざ参加してみると、会場にいたのは私たちだけでした。また、会場にいた犬はみんな純血種で雑種犬がいませんでした。会場は清潔で、犬は1匹ずつケージに入れられていました。ただ、直接会えるのはそこにいた子たちだけです。また、ブリーダーの情報は非公開になっていたので、他の犬がどんな環境にいるのかは分かりません」

Q. 譲渡会で運命を感じたという犬の様子はいかがでしたか?
「他の元気そうな犬と違ってケージの隅に寝そべって動かなかったのですが、私が立ち去ろうとした時に起き上がってケージ越しにアピールしてきたんです。そこで『行かないで』と言われているようで保護欲が湧いてしまい、お迎えのつもりはなかったのに気の迷いが生じてしまいました」

Q. 今回の譲渡会にはどのような感想を抱きましたか?
「保護犬の譲渡活動を収益化することはボランティアさんに頼らない良い取り組みだと思いましたが、肝心の動物に目が向けられていないと感じてしまいました。私が運命を感じた犬も幸せになる権利はあるけれど、活動そのものに賛同できない団体へ寄付はできません。

 寄付金をもらっているのに保護されている犬は避妊や去勢がされておらず、きちんと犬に還元されているのか疑問を抱きました。ただ、繁殖引退犬と家庭をつなげる活動自体は良い取り組みだと思います」

Q. ととちゃんをお迎えした経緯について教えてください。
「犬を飼うなら保護犬をお迎えしたいと里親サイトをずっと眺めていたところ、あるサイトでととちゃんの姿が目に留まりました。当時は作家としての活動が不安定で引き取ることができず、連載が決まり貯金もある程度用意できた1年後にお迎えを決めました。

 最初にととちゃんと出会ったのは生後2か月のタイミングで、この時に噛むクセや他の犬との社会性にも問題があることが分かりました。トライアルなしで保健所から引き取ったのですが、今振り返るとかなり無謀だったと思います。それでも我が家は夫婦ともに時間の融通が効くこと、在宅でずっと一緒にいられること、良いトレーナーさんを見つけられたことでそうした問題を乗り越えられました」

Q. ととちゃんとの生活ではどういったことを大切にしていますか?
「ととちゃんは噛みグセのある子でした。ただこれは、攻撃衝動を抑えられない時に自分を守ろうとすることが理由だと分かったので、ととちゃんが怖いと思う機会を減らそうと家族で工夫しました。特に夜は警戒心が高まっていましたから、時間帯によってはととちゃんに近寄らないようにしたんです。そうした工夫を家族で徹底したことで、今は一緒に問題なく暮らせています」

Q. これから保護犬をお迎えしようと思っている方へお伝えしたいことを教えてください。
「トライアルは、人間が好きなだけかわいがって“気に入らなければ返品できるお試し期間”ではなく、潜在的な心の問題を抱えているかもしれない犬の家庭や、先住犬との相性など、犬のためのものだと思っています」

Q. 心に残った読者の感想があれば教えてください。
「『私たちは保護犬が欲しいのではない、保護犬がいない未来が欲しい』という言葉にたくさん共感していただけました。『保護犬がいい、保護犬が欲しい』と人間が望むことが優先されると、保護犬が供給され続ける事態になってしまわないかと危惧してしまいます。保護犬はなくなるべきものという前提条件を、動物に関わる人間みんなで共有できたらと思います」

Hint-Pot編集部

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