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アグネス・チャンさん 3人の子どもが米一流大学に入学した食育術 「孤食をさせないこと」がとても大事

子どもの食育について話してくれたアグネス・チャンさん【写真:河野優太】

子どもの食育について話してくれたアグネス・チャンさん【写真:河野優太】

 子育て中は、どんなものを食べさせたら頭が良くなるのか? どうしたら好き嫌いがなく育つのか? そんなことを考える親御さんもいるのではないだろうか。3月16日に「子供の一生を幸せにする24の食育術」(ぴあ株式会社刊)を出版した、歌手、エッセイスト、教育学博士として活躍されているアグネス・チャンさんは、3人の息子さんが米スタンフォード大学に入学したことでも知られる。3回目はアグネスさんの「食育術」や3人の子どもたちの反抗期について話を聞いた。

 ◇ ◇ ◇

食事は全ての基本 好き嫌いがあっても代わり になるものを食べれば問題なし

 3人の子どもを育て上げたアグネスさん。実は3人の食の好みや性格は違うというが、いわゆる「食育」においては、どのように3人と向き合ってきたのだろうか。

「食べ物で性格は変えられないと思いますが、集中力を付けるとか、風邪を引かない体を作るとか、そういったことはできるように思います。食事はすべての基本です。健康な体というのは子育てにおいてとても重要で、まず食事で健康な体を作る。そうすると健康な頭になり、健康な心も育つ、というのが持論です。その子の体質に合った食べ物を食べさせれば、体も頭も心も育ち、ピークの状態=『元気』な状態でいられるんです。そして元気な子は育てやすいんです」

 アグネスさんは子どもたちに「5色5味」と言われる、5つの食材の色(赤・黄・白・黒・青)と、5つの味(苦い・甘い・辛い・しょっぱい・酸っぱい)のさまざまなものを食べさせることを意識し、好き嫌いがない子に育てたという。ただ、好き嫌いはあっても問題はないそうだ。

「好き嫌いがある子に育っても別に問題はありません。嫌いなものがあったら、その代わりになるものを食べさせれば良いんです。例えばニンジンが嫌いな子には、同じ緑黄色野菜のカボチャとかピーマンなどを食べさせるようにしています」

 さらにアグネスさんは、子どもの体質を知ることも大切だと言う。

「子ども自身の体質を知り、その体質に合う食べ物や食べ方を学ぶ。それを食べさせる。結果として調子が良くなればそれを覚えさせる。そうすることで得た知識が、後に子どものためになるんです」

子どもとのコミュニケーションが大切だと話すアグネスさん【写真:河野優太】

子どもとのコミュニケーションが大切だと話すアグネスさん【写真:河野優太】

反抗期はホルモンが関係していることを親も子もしっかり学ぶ

 好き嫌いがなかったばかりか、3人のお子さんには「反抗期」もなかったという。

「食事というより、主にホルモンの問題のように思いますね。思春期は子どもから大人になるために、成長ホルモンや女性ホルモン、男性ホルモンがたくさん出てきます。そのため少し攻撃的になったり感情的になったりして、親に対抗するような心理が生まれることもあるかもしれません。これがいわゆる『反抗期』で、生物としての本能です。親離れというもの。対抗心を出した方が離れやすいからなんです」

 しかし、反抗期の本質をしっかりと理解できてない親も多いという実情もある。そのため、反抗期の本質=ホルモンのバランスが関係している可能性を、子どもたちにしっかり教えることも大切だと、アグネスさんは訴える。

「親に対してイライラする気持ちとか、怒りっぽくなったり、精神的に不安定になるのは、自分のせいではないんです。親のせいでもない、友達のせいでもない、社会のせいでもない。『ホルモンがそうさせているのかもしれないよ』、ということを理解させてあげることが大切なんです。私は子どもが9歳くらいになって、体の仕組みなどを教えました。『あと何年かするとホルモンが出てくるからね、そうするとイライラするからね、ママのせいじゃないよ』って。そして思春期になってちょっとイライラしてくると『ホルモンが出ているからだよ』って話すんです(笑)」

 さらにアグネスさんは、反抗期においては、親と子のコミュニケーションが重要だと話す。

「子ども自身も『何で怒ってるんだろう?』と怒っている理由が分からないし、親も『あの子、何があったんだろうか?』と理解できない。そしてお互いのコミュニケーションが不足していって溝が深くなり、その結果どう扱ったら良いか分からなくなるんです。だから親と子がしっかりとコミュケーションを取ることが大切です。思春期が終わればしっかりした男性に、女性になるんだよと。私の子どもたちに反抗期がなかったのは、もしかしたらホルモンについてしっかり話していたからかもしれません」

食卓の重要性について話してくれたアグネスさん【写真:河野優太】

食卓の重要性について話してくれたアグネスさん【写真:河野優太】

「食卓」は良いコミュニケーションの場 子どもの状態を確認できる場

 反抗期におけるコミュニケーションの重要性を教えてくれたアグネスさん。そのコミュニケーションの1つとしても、「食事」、そして「食育」は大きな役割を果たすという。まず、食育において「孤食をさせないこと」はとても大切だと話す。そのためにアグネスさんが重きを置いたという「食卓」作りの工夫を聞いた。

「食育では、『何を』食べるか、だけでなく『どうやって』食べるかも重要です。『どうやって』で大切なのは、孤食をさせないことです。みんなで食べる『食卓』というのはとても良いコミュニケーションの場なんです」

 アグネスさんによると、「食卓」は、子どもにとって社会に出ていくための1つの「訓練の場」にもなるという。

「まず、みんなでいろいろなことを話すと子どもの“聞く耳”が育てられます。そして『どう思う?』と聞くと、自分の意見を持ち考える力が付く。『自分の意見を発表する』ことでプレゼンテーションの練習もできる。しかも、一緒に食べることで『今日はあまりしゃべらないな、何か悩みがあるのかな』とか『今日はちょっと食欲がないな。病気なのかな』とか子どもの様子も確認できるのです。だから食卓はとても重要なんです」

「食卓」と同様に、実は一緒に「料理すること」も子どもの食育では重要な役割を果たすという。料理することはいろいろなことをプランニングできる「学び」であるため、アグネスさんは子どもが小さいうちから料理に参加させていた。

「私は2歳半とか3歳くらいから、料理を手伝わせたり、一緒に料理をしたりするのが良いと思います。まず興味を持たせるんですね。そのうちに買い物に連れていったりすると『この代金はいくらで、おつりはいくら』など算数が学べます。そして調理中は、『これは何グラム入れるとか、何分焼く』とか、分量や時間の計算もあります。もちろん失敗したりもしますが、次はもっとうまくやるよう注意しますから予習や復習にもなります。そして、おいしくできたものをみんなで食べると『もっとおいしくなるよね』ということも教えられます」

 温かく、丁寧に、そしてユーモアも交えながら、「食育」に関する話をしてくれたアグネスさん。「子どもに適した食べ物を学ぶ」「孤食をさせない」など、親が愛情を注ぎ、しっかり子どもと向き合うことが何より大切だということを教えてくれた。


◇アグネス・チャン
1955年香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。1989年米国スタンフォード大学教育学部(博士課程)に留学。1994年教育学博士号(Ph.D)取得。1998年日本ユニセフ協会大使に就任。2016年ユニセフ・アジア親善大使(地域大使)に就任。著書は「スタンフォード大に3人の息子を合格させた50の教育法」(朝日新聞出版)など多数。3月16日に「子供の一生を幸せにする24の食育術」(ぴあ株式会社)を出版。アグネス・チャンオフィシャルブログ「アグネスちゃんこ鍋」

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